第六十七話 洞窟の最深部にて3
声を頼りに探し出したヒサメの姿は、見た目は無傷のようだけど、体力や気力の消耗があるみたいで立っていられなくなってしまったようだった。
「ヒサメ!どうしたの!?何処か苦しいところとかある!?」
「心配かけてゴメンねエニカ姉様⋯此処はボクには少し暑くてね⋯」
「暑い?」
私の体感では、さっきまで触れていた砂のようにほんのり暖かさは感じているけど、暑くて堪らないという感じは無かった。
『ヒサメは魔力属性上、氷や冷気を操るため、ある程度解消されたとは言え、炎属性の魔力が充満したこの場所との相性が良くなかったのでしょう。
配慮が足らずに申し訳ありませんヒサメ。魔力属性の相性や耐性に思い至るべきでした』
「それはいいよ⋯ボクだって炎属性の魔力が多くある場所だと調子が悪くなることが分かったしね⋯
今までは森の中の泉や川で過ごしていて、魔力属性によって相性の良し悪しがあるとか、耐性があるかなんて考えたことなんて無いから、こんな風になるなんて思わなくて驚いたよ⋯」
ぐったりとした様子のヒサメの姿は、始めて出会った時と四ドブスに遭遇した時の姿を思い起こさせた。
「ヒサメ⋯きつかったね。すぐに気付いてあげられなくて本当にごめんね⋯
コロ、この洞窟は調べたり確認しないといけないところはまだある?無いようなら、もう洞窟から出た方が良いんじゃないかと思うんだけど⋯」
『いいえ、御座いませんエニカ様。
ヒサメをこのまま消耗させてしまう方がこの先、森を進むのに支障が出る可能性がありますので、ソイルを呼び戻し洞窟の出入り口まで戻る方がよろしいかと思います』
「分かったよ。そしたら私がソイルを呼んでくるからコロとヒサメは此処で待っててくれる?」
「エニカ様!周囲に私達以外の魔物の反応はありませんが、お一人でソイルを探しに行くのは危険です!
私がついて参ります!」
「そうだよエニカ姉様⋯コロ君を連れてった方がいいよ⋯ボクなら一人で通路の方に出ていけるから大丈夫だよ⋯」
二人の心配してくれる気持ちは本当にありがたい。
だけど私一人だけの行動となると、二人とも(此処にいないソイルもだけど)誰かと行動することを頑として譲らないことは、この短期間の付き合いでもよく分かった。
だけど、今はヒサメのこともあって時間が惜しいから折衷案として出してみることにした。
「二人とも心配してくれてありがとう。
ちゃんと二人が見える位置からソイルを呼ぶから安心して、ね?」
『⋯承知致しました、エニカ様。
しかし!せめてその砂山から先の陰になる場所には行かぬようお気をつけて下さい!』
「ゴメンよエニカ姉様⋯ボクが不甲斐ないばかりにエニカ姉様のそばに居られなくて⋯」
「不甲斐ないことは全くないよヒサメ。
いつも頼ってばかりだから、こんな時ぐらい私を頼って欲しいよ。
コロもヒサメのことをよろしくね。近くだからすぐに戻ってくるよ」
「エニカ姉様⋯!うう⋯⋯」
『無理をなさらないで下さい、ヒサメ。
エニカ様に貴女のことを任された以上は、状況状態の悪化は見逃しませんし、させませんからね』
「分かってるよコロ君⋯エニカ姉様にこれ以上心配を掛けたくもないからね⋯」
⋯⋯少し二人の話し声が聞こえたけど、一応待っててくれるみたいだ。
でも早くしないと特にヒサメが無理をしそうだから、すぐにソイルを呼ぶことにした。
――――――
「ソイルー!いるー!?」
「ピギャッ!」
「良かった、すぐ近くにいた⋯あれ?」
砂山をぐるりと見渡してみて、見える範囲にソイルがいなかったから呼んでみれば、ソイルはすぐに応えて駆け寄ってきた。けれど⋯
「ソイル、ちょっと大きくなった?」
「ピギャァ!」
ソイルの大きさが洞窟の奥につく前はモルモットサイズだったのが、今は一回り大きくなってウサギぐらいのサイズになって戻ってきたのだ。
サイズが大きくなったことで移動速度が速くなったみたいで、あっと言う間に側に来てくれた。
「ソイル、砂を食べてる最中に急に呼び出してゴメンね。
この洞窟に溜まっていた炎属性の魔力とヒサメの魔力の相性が合わなくてヒサメが具合悪くなってるから、もう此処から出ようと思ってるんだ。
もう出入り口の方まで戻っても大丈夫?」
「ピギャピギャ!」
ソイルは首を縦に振ってくれた。
話を分かってくれるのは本当にありがたいけど、砂はもう食べなくていいんだろうか?
「ありがとうソイル。砂はどうする?
あんまり多くは持っていけないけど、持っていけるだけ持って帰ろうか?」
「ピギャギャッ!」
首を横に振るソイル。
続いてお腹がいっぱいっていうジェスチャーを見せたから、砂はもう必要ないみたいだ。
「分かったよ。それじゃ行こうか。コロとヒサメも待ってるからね」
「ピギャッ!」
ソイルと一緒に歩き出そうとした時だった。視界の端に焦げ茶色の影が見えた。
気になって視線を向けた先には⋯
「あの箱は何だろう⋯」
見た目は古めかしい木箱がポツンと置かれていた。
もしかしてあのデザインは⋯宝箱?




