第六十五話 洞窟の最深部にて
コロからダンジョン・ミラージュに関する話を聞いた後、みんなから促されて休ませてもらい、あっと言う間に朝になって目覚めた。
雨は上がり、森が朝日に照らされていく爽やかな光景が洞窟から見える。
コロたちからも私が眠った後、特に何事も無かったって聞いた時は心からホッとしたよ。
みんなに夜中の見張りをしてもらったお礼を言って、身支度や朝食を済ませた後、いよいよ問題の洞窟最深部を目指すこととなった。
洞窟の最深部を目指すには、岩盤の崩落か何かで道が遮られてしまっているため、塞がっている部分を一部壊す必要があった。
ちなみに全部を壊さないのは、地質自体が脆い可能性が高く全て壊すとその洞窟自体崩落しそうなため、ヒサメが監視していた崩れた部分を支えながら徐々に壊そうという話になったからだ。
『ソイル、お願いします』
「ギィ!」
人型になったソイルが、両腕を岩のように硬く変化させて、崩れた部分を掘り抜くように殴りつけていった。
崩れた部分が広がる度に、崩落しないようにこまやかに土魔法や石魔法で補強も上手にしてくれている。
流石器用なソイルだ。
ちなみに、ソイルが両腕を硬い岩のように変化させることが出来たのは、ダンジョン・ミラージュから持ち帰ったオークの石鎚のお陰である。
コロからのアドバイスで、事前にソイルに石鎚を食べてもらうことでソイル自身の強化を図ってから、掘削作業に取り組んでもらっている。
少しして、最初は隙間から覗くのがやっとぐらいな穴が、ソイルのお陰で人一人が通れる程の穴へと拡がった。
「ソイルありがとうね、お陰で安心して通りやすくなったよ」
「ギィィ⋯」
私より目線の高くなったソイルの頭を少し背伸びして撫でれば、照れたように目を細めるソイル。
大きくなっても可愛いところがあるよねぇ。
『昨晩からエニカ様のご寵愛を独り占めし過ぎではありませんか⋯?ソイル、今エニカ様から撫でられた部分を削らせて下さい今すぐに。』
「むしろ頭ごと欲しいよソイル君。ボクの頭と付け替えさせて欲しいよ。そしたらエニカ姉様にもっと愛されると思うんだよね」
「ギィィッ!?」
昨晩からコロとヒサメの荒み方が凄まじ過ぎるよ!!?二人して笑顔なのが更に怖い!!!
ソイルの作ってくれた道を潜り抜ける前に、今この場で起こっている修羅場を潜り抜けることに専念することにした。
――――――
『エニカ様、如何なる場所であってもコロめがお守り致しますのでご安心下さいませ!』
「昨日は前衛だったからエニカ姉様を見ながら守れなかったことが少し残念だったけど、今日はエニカ姉様の全てを後ろから余すことなく見守れるから安心してほしいな、エニカ姉様!」
「本当によろしく頼むね、コロ、ヒサメ」
『はい!お任せ下さいエニカ様!』
「了解!エニカ姉様!」
「ピギャァ⋯」
あの後、渾身の力を込めてコロとヒサメを褒めて労い、最終的にいい子いい子したらあっと言う間に機嫌を持ち直してくれた。
側で私たちの様子を見ていたソイルが、特にコロとヒサメを仕方のないものを見るような目で見ていた気がするけど、あまり深く考えないようにしようと思う。
今日の順番は道が狭いため、モルモットフォルムで小回りが利くようになったソイルが前衛、真ん中私と肩に乗せたコロ、後衛をヒサメの編成で進むことになった。
穴を潜り抜ければ、洞窟の暗闇は更に濃くなったけど、もう少し先に見える謎の光は変わらず淡く輝き続けていた。
謎の光までの道のりはコロの光魔法で足元を照らしながら進んでいく。
三人が交代で見張っていた謎の光は一晩中発光していたらしく、光の強さは今も弱まることなく変わらないままだということを聞いた。
⋯もし魔物の目がずっと光ってただとか、光でおびき寄せるタイプの魔物だったりしたらどうしよう⋯
そう思っている内に謎の光の正体が確認できる距離までみんなで来ていた。
そこで目の当たりにしたのは⋯
「石⋯?」
柔らかい光を内包しながら輝く、透明な石の結晶であった。
鉱石の形にデザインされたランプのようで見た目は綺麗だ。
「ピギャァァ⋯」
「昨日からずっとボクたちから見えていた光の原因はこれだったんだね」
『こちらは灯火水晶ですね。火山帯のような炎属性の魔力が豊富な場所で発見しやすい鉱石ですが、火の気が多くないような場所で見かけるのは珍しいですよ。
⋯死角になっていたので気付けませんでしたが、道がまだ続いているようですね。しかも、奥に行くほど灯火水晶の数も増えています。
魔力溜まりと関係しているかもしれませんので、引き続き慎重に様子を見ながら確認してみましょう』
コロの言葉通り、辺りを見渡せば最初に発見した結晶以外の灯火水晶をあちこちで見かけた。
数が多くなってきた灯火水晶のお陰で、コロの光魔法を使わなくても周囲や足場を見ながら歩けるようになった頃、突き当たりとなる場所へ無事に到着することが出来た。
「わぁ⋯!何ここ⋯!?」
思わず声が出てしまったそこは、幾つもの灯火水晶のクラスターによって空間全てが柔らかい金色に照らされた広い空間があり、その大半は大量の砂で埋め尽くされていた。
『ああ、此処は間違いなく魔力溜まりとなった場所のようですね』
え?一目見ただけで分かるのコロ?神秘的な雰囲気がある場所だとは思うけど⋯




