第五十六話 川近くの野営地にて5
『ご無事でしたかエニカ様〜〜〜!!!少々の面倒事はありましたがコロ、無事に帰還致しました⋯えっ?』
「コロ無事で良かったよ〜〜〜!!!こんなでっかいカラスに食べられてビックリしたよねどこか苦しいところや痛いところはない???」
『エ、エニカ様にこのようにご心配頂けるなんて⋯!!それだけで感無量で御座います〜〜〜!!!』
「⋯やっぱり意地でも戻ってきたね、コロ君」
「ピギャァ」
コロの声が聞こえた後、ヒサメに改めて壁の内側に行っても大丈夫かどうかを確認してもらうようお願いした。
ジャイアントクロウが動かないことなどを確認してから、ソイルに土壁を一部崩してもらって土壁の内側に入れば、子牛サイズの大きなカラスのような魔物と、その魔物の上に乗っかっているコロを見つけた。
コロは所々汚れ(おそらくカラスの血や肉片)が付いていたけど、それ以外は変わらないようだった。
「ちょっと汚れているみたいだから洗っちゃうね」
『エニカ様手ずから洗って頂くなんてそんな⋯是非お願い致します!!』
「水しか出せなくて悪いけど⋯今から洗い流すよ」
『はいっ!!!あ、あ、エニカ様のお手ずから洗って頂けるだけでなく、エニカ様の魔力がふんだんに含まれた水魔法で洗って頂けるとは大変贅沢ですぅ⋯』
「コ、コロ君がめちゃくちゃ羨ましすぎるよ!」
「ピギャァ!」
『何を言うのですか二人とも!どちらもエニカ様の尊い体液を摂取しておきながら羨ましがるのではありません!!
ソイルに至っては何度も文字通り全身浴びているではありませんか!?』
「そうだった!!ソイル君こそズルいよ!!」
「ピギャァッ!?」
(話の内容は置いといて)小さい子や可愛い子がわちゃわちゃしている光景って何だかんだで癒されるよねぇ⋯
すぐ側に頭が焼けて、用心の為にって氷柱を眉間にぶっ刺されたカラスの死体が無ければもっと癒されたよねきっと。
そう現実逃避をしながら水洗いしたコロを乾いた布で拭いて上げた。
――――――
『やっと話の本題に戻れますね!』
コロを綺麗にした後、『この魔物は食用に出来て味も美味ですよ!』というコロの助言を元に、カラスの血を抜いて内臓を取り除いて川に浸して、とみんなで行って一息ついた頃に本来の目的を思い出した。
「そういえば本当だったら、コロ君に空から街までの距離を測って貰って到着期間の目安を決めることになって無かったっけ?」
ヒサメがコロを空へと打ち上げた目的と理由を分かりやすく振り返ってくれた。
『ええ、途中多少の邪魔は入りましたが、結果的に街までの距離の確認は勿論、エニカ様へ献上する食肉を手に入れたり、エニカ様の水魔法を心ゆくまでご堪能出来ましたので良しとしましょう。
打ち上げて頂きありがとう御座いました、ソイル』
「ピギャッ!」
コロからの言葉に、ちょっとホッとした様子で返事をするソイル。
一時はどうなるかと思ったけどみんな無事で良かったよ。
特にジャイアントクロウに食べられちゃうぐらい、コロを高く飛ばしちゃったソイルが。
『さて、現在地から街までの距離ですが約20キロほど先に街が見えました。
しかし、この辺りはエターナレンでも最東端に当たる区域で、隣街に向かうための街道しか舗装されておらず森林や山林はほぼ手つかずの状態となっております。
それ故、必要に応じ天候の変化や魔物の対処など、不測の事態が起こることも考えると、今日から約五日間程の日程で街へ辿り着くのが理想かと思われます。
それ以上の日程がかかると、現時点のお食事面や疲労のご状況からエニカ様のお心やお身体に障ることを危惧しております』
「確かに。早めに街へ辿り着ければそれに越したことは無いってことだよね」
『エニカ様の心身のご状況に合わせることが最優先ですが、その方がよろしいかと思います。
魔力があれば比較的容易く回復が出来る我々と違い、エニカ様はお食事、休養、衛生、お住まい、娯楽など、心身の調子を整え健やかにお過ごしして頂くために必要なものは多岐に渡ります。
それらを一刻も早く調達し献上するのが我らの役目の一つなのです!』
「そうだね!エニカ姉様に関わる全ての事柄は何を差し置いても大事なことだね!」
「ピギャァ!!」
「あのー⋯みんなが無理をしない程度で大丈夫だからね?みんなの気持ちは凄くありがたいし、みんなの助けがあるから生きていられることは分かってるつもりだよ。
でもそれでみんなが無理をしたり、無茶をしたりして傷ついたり⋯居なくなったりすることは絶対して欲しくないと思ってるからさ」
『エ、エニカ様⋯!承知致しましたぁぁぁ!!』
「ピッ、ピギャァ⋯!ピギャァァァ!!」
「エニカ姉様⋯!エニカ姉様を置いて居なくならないって約束するよっ!!」
「わっ!!?みんなちょっと危ない⋯!」
雪崩込むようにぎゅうぎゅうに集まってきたみんなを、抱き止めきれず倒れ込む。
『ももも申し訳ありませんエニカ様!!どうぞ心ゆくまで折檻を⋯』
「ピギャ!?ピギャァ⋯」
「ゴ、ゴメンよエニカ姉様!エニカ姉様が望むのならどんなお仕置きでも受けるよ⋯!」
きちんとお辞儀をして謝ったソイルを除いて、二人は反省の仕方が明後日の方向だけど、心底申し訳なさそうな様子はみんな同じのようだ。
「みんなちゃんと謝ってくれたから折檻もお仕置きもしないよ。
でもそろそろ川にカラスのお肉を取りに行こうと思ってるから手伝ってもらっていいかな?」
『はい!』
「ピギャ!」
「うん!」
それぞれ顔を見合わせてから、みんな笑顔で答えてくれた。ほんと、みんなに助けられてるよね⋯
私の方こそ、足を引っ張らないようにしないといけないな。
内心ちょっと意気込みながら、みんなと川へ向かうことにした。




