第五十二話 川近くの野営地にて
『おはようございます!エニカ様!本日も良いお日和になりそうですよ!』
「ピギャアッ!」
「エニカ姉様!お⋯おはようございます⋯?で挨拶はあってるかな?」
「ふぁ⋯コロ、ソイル、ヒサメ。みんなおはよう。
昨日も夜通し見守りをしてくれたんだよね?本当にありがとうね」
『エニカ様のお役に立てて光栄です!』
「ピギャピギャッ!」
「エニカ姉様のあどけない寝顔と起き抜けの可愛い顔だけでもご褒美なのに挨拶とお礼もだなんて生きてて良かった⋯!」
朝日が昇り始めた頃、外が段々と明るくなったタイミングで目が覚めるようになった。
起きてすぐにみんなへの挨拶と見守りをしてくれたお礼は欠かさないようにしている。
それにしてもみんな魔力を使わず、使っても時々魔力を補給出来れば寝食が基本必要無いって言うけど、一晩中寝ずに見守りをしてくれた上で疲れたようにも見えないって本当に凄いよねぇ⋯
『エニカ様!先にお顔を洗われますか?それでしたら私がお手伝いを⋯』
「お手伝いは大丈夫だよコロ。水属性の魔力を使う練習をしたいからね」
『そ、そんな⋯!?使われるのですか⋯?私以外の水属性の魔力を⋯!?
あああ大変複雑です!!エニカ様の向上心が高くあられるのは喜ばしいことなのに私の手から離れていってしまうのは寂しくて堪りません〜〜〜!!!』
「コロに頼ることはまだまだ数え切れないぐらいあるんだから、今ここで力を使い切られたら困っちゃうよ」
『エニカ様っ⋯!?私としたことが目先のお世話に囚われ他の物事を失念しておりました⋯!!これからも誠心誠意全力を込めてご奉仕致します!!!』
「程々にね〜」
「流石エニカ姉様だね。あのコロ君を朝から上手に宥めるなんてさ」
「ピギャッ!」
やっぱり仲間が増えたら賑やかさが違うね。
眠気で頭が覚醒しきれていないからだろうか、今なんか的外れなことを考えていたような⋯?
まあいいや。それより早く顔を洗わないとね。近くに川はあるけどそれは最終手段かな。
ヒサメが仲間になる前はコロの水魔法節約のために川を探していたし、昨日もお湯を沸かすからと思って少し汲んできてたけど、ヒサメと契約して私も水属性の魔力が増やせたのなら、使いすぎない程度に自分の魔力で水を出して練習しようかな。
川の水は見た感じは綺麗そうだけど、飲水は勿論、身体を洗ったり洗濯したりするのに、生水のままで使うのはやっぱり抵抗がある。
その点、魔法で出した水は魔力の質が並ぐらいあれば飲み水に出来るぐらいの水質だってコロから教えてもらっていた。
本当は川の水を毎回火で沸かして冷ましてから使えば良いんだろうけど⋯手間と時間がかかるから、必要に迫られてからその手段を取ろうと思うよ。
それに雨が降ったりしたら川の水が使えなくなるだろうしね。
そんなことを考えながら、水を掬うように両手を合わせ、合わせた手の中に水がなみなみと入っている想像をした。
「水よ出ろ!⋯わっ!出たっ!?」
透き通った綺麗な水で満たされるイメージをしてみたけど、そのイメージの通りに手の中に水が現れて驚いたよ。
地属性の魔力を使う練習をしていて、その時に自分の想像通りに土や石、砂とかを動かせた時も感動したけど、魔力があれば何もないところから自分の想像したものが出てくるのも、正にファンタジーの世界!って感じで感動するよ。
早速出てきた水で顔を洗ってみた。水がサッパリしていて気持ちいいっ!
コロにお願いしてた時は、魔力量の消費や消費した分、時間を開けてから使うように気に掛けてたから、私の分の水魔法が使えるようになるのは本当に大きい。
欲を言えばお肌が気になる年齢だからぬるま湯で洗いたいけど、水属性の魔力だけでは温度調節までは難しそうだから、今はやっぱり水を出す練習に集中しよう。
「エニカ姉様の可愛らしい顔から滴る雫⋯なんて綺麗なんだろう⋯」
『何を仰るのですかヒサメ。エニカ様が触れたもの、それ即ち至宝と同義。如何なるものでも尊く美麗でありますよ⋯って、ソイル!
貴方何をさりげなくエニカ様の足元に向かおうとされているのですかっ!?あわよくばエニカ様が落とされた雫を浴びるおつもりでしょう!?』
「何それズルいよソイル君!ボクだってエニカ姉様の雫を全身で浴びたいと思ってるのに!!」
「ピギャ?ピギャギャ?」
『今明らかに惚けましたねソイル!させませんよ!!エニカ様の至宝の雫を浴びるのはこの私です!!!』
段々とキャーキャーワーワーと騒ぎ始めたみんな。
うーん⋯うんっ!見てるだけならそのままにしとこうと思ったけど、喧嘩しそうだからいい加減ちょっと注意しよう。
みんなの残念がる声を聞き流しながら、すぐに顔を拭き上げた。
それにしても、朝起きてからそんなに経ってないのに体力精神力を使った感があるのは不思議だね⋯




