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第四十八話 泉のほとりにて4

 ウンディーネちゃんは静かに話し始めた。

「ボクは⋯姉様と初めて出会った時に、運命の人に、家族になってくれる人に出会えたと思ったんだ⋯」

 家族になってくれる⋯だから姉様と呼んだのかな⋯ 

 そう疑問に思いながら、ウンディーネちゃんの話に続けて耳を傾ける

「ボロボロになって死にかけていたボクのために、そばに来て、涙を流してくれて、心配してくれる人なんて今までいなかったから⋯

 だからボク、姉様に敵だと思われたくなくて魔核を見せたし、少しでも心を許してほしくてボク自身のことを話したりして⋯

 だから、従魔契約をしたって聞いてたスライム君とゴーレム君が羨ましくて仕方なかった。

 ボクのことを貶さず褒めてくれた後に、姉様が二人を褒めている姿を見て、ボクも仲間に、家族になりたいって心の底から思って従魔契約を願い出たんだ。

 だけど、スライム君⋯君がボクの姉様への想いを、狂気の恋愛体質だなんだって決めつけて姉様に忠告しようとするから⋯カッとなっちゃって⋯」

『その件に関しては⋯私も貴女自身のことを知ろうとせず、偏見の目で見てしまった上に、不躾な言葉をかけてしまい、大変申し訳ありませんでした』

 コロが頭を下げて謝る。

 これでお互いに(わだかま)りが少しでも無くなるといいな⋯

「⋯⋯そのことは正直、今思い出しても腹が立つけど、ボクが感情的になったせいで姉様を危険な目に合わせてしまったから、今回は特別に水に流すよ。

 でも二度目はないと思ってくれ」

『⋯⋯善処します』

 その返答、「答えはいいえです」ってタイプで無いことを本当に祈ってるよコロ!

 ウンディーネちゃんは一瞬、コロをジロリと睨んだけど、すぐに目を伏せてしまった。

「あの時⋯ボクは姉様を傷つけてしまうなら、仲間や家族どころか、従魔としても迎え入れてもらえないと思って姉様たちから離れたんだ。

 ⋯その時は姉さん達から蔑まれたり、遊び道具代わりにされることより、凄く辛くて、悲しかったよ」

「ウンディーネちゃん⋯」

「その後のことは実はよく覚えてないんだ⋯気付いた時には姉さん達に見つかってしまっていてね⋯

 もう今度こそ立ち上がれないんだろうな、と思った時に姉様、貴女はまたボクの所へ来てくれたね」

 伏し目がちだったウンディーネちゃんの瞳が、嬉しそうに私の瞳とかち合う。

「姉様がボクのためにまた涙を流してくれた姿を見て⋯それだけでもこれ以上ないかと思うぐらい、幸せだったんだ。

 このまま溶け消えてしまってもかまわないと思うぐらいに。

 ⋯その後すぐに、スライム君や姉さん達のことがあったから、それどころではなくなってしまったけれどね。




 だけどその時から思ったんだ。姉様と離れたくないって。」

 今まで嬉しそうにキラキラしていた瞳が一転、不安げに揺れ始めた。

「姉さん達のことがあったから、もし姉様から今度こそ拒絶されたらって思うと凄く不安だった。

 けど、姉様が、ううん、姉様だけじゃない。スライム君やゴーレム君からもお礼を言われて、姉様が二人を褒めている所を見て、ボクも、ボクも、その中にいたいって⋯いいなって⋯でも⋯凍らせたらどうしようって思って⋯!」

 ウンディーネちゃんの言葉と共に、涙がボロボロ落ちてきた。

 ウンディーネちゃんから零れ落ちる涙は、地面に落ちれば霜となって白く染めていく。

「ウンディーネちゃん」

 出来るだけ優しく、ウンディーネちゃんに声を掛ける。

「感情的になることは誰だってあるから、無理に我慢しなくていいよ。無理する方がきついからね。

 でもその時は必ず私でも、コロでも、ソイルでもいいから教えて。

 怒りたいことや辛いこと、悲しいことがあって一人で抱えきれない時、仲間や家族がいれば一緒に寄り添うことは出来ると思うからさ。

 凍らせることが心配なら、コロとソイルなら自衛が出来るし、私も自衛が出来るように頑張るから、ね?」

 ウンディーネちゃんの涙を拭ってあげられないかと、ポケットからハンカチ代わりにしている布を取り出そうとした。

『エニカ様、その布ではエニカ様のお手が(かじか)んでしまいます。私を代わりに。』

 コロが咄嗟に滑るように手の中に入り込んで、ハンカチに変身した。

「ピギャッ!」

 ソイルが声を上げれば、私たちを厚めの土を盛り上がらせて上に穴の開いたドーム状に取り囲んだ。

 ウンディーネちゃんが冷気を出しても周りに大きな影響が出ないように、ウンディーネちゃんの心配が少しでも減るように、ソイルなりに考えてくれたみたい。

「姉様、スライム君、ゴーレム君⋯」

 ウンディーネちゃんの目は驚いたように見開かれているけど、涙は止まったみたいだ。

 コロもウンディーネちゃんの様子に気付いて元の姿に戻ってる。

 涙の止まった頬に優しく触れてあげる。ひんやりして気持ちいい。


「ウンディーネちゃん、貴女の心配することはきっと大丈夫だと思う。一緒に考えていけると思う。

 だから、私の仲間⋯家族になってくれませんか?」

「⋯⋯うんっ!!」


 答えてくれたウンディーネちゃんの表情は、今まで見た中で一番明るく、綺麗な笑顔だった。

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