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第四十二話 森の中にて7

「コ、コロどうしちゃったの!?見たことないぐらいシワシワになってるよ!!?」

『いいえお気になさらず⋯

 エニカ様にそのウンディーネとの会話は気を付けて頂くよう、しっかり申し伝えることが出来なかった私の不手際を悔いているだけなのです⋯』

「えっ!?何でそこまでコロが落ち込んで⋯」

「姉様はボクの願いに応える意思があるみたいだよ。そこにいるゴーレム⋯君だよね?彼だって姉様に同意をしていた。

 君は異論があるのかい?スライム君」 

『ええ。はっきり言って大いにありますね』

 コ、コローーー!!!?ウンディーネちゃんの何に不満というか問題があるの!!!?

「コ、コロ?ウンディーネちゃんが従魔契約をしてくれることに、何でそんなに微妙そうな反応なの?」

『それはウンディーネ⋯だけに限った話ではありませんが、彼女の今までのエニカ様に対する言動と水から生まれた妖精であることが関係しております。

 オンディーヌの時にも少々お話を致しましたが、水の妖精は基本男性型女性型問わず美しい容姿と、その容姿に見合った性別意識に強く拘りやすいという特徴があります。

 ですがもう一つ、特徴となる特性があります。

 それは恋に落ちやすく、一度(ひとたび)恋に落ちれば己か愛した相手の命尽きるまで追い掛け続け、恋に生き情に狂い愛に死ぬことを躊躇わない、狂気の恋愛気質に陥りやすいことです!!!』

「ボクのどこか狂気の恋愛体質なんだっ⋯!?」

 ウンディーネちゃんまだ出会って間もないけど、コロの言葉はまあまあ説得力があると思うよ⋯!! 

「姉様の前で適当なことばかり言うんじゃないよスライム君⋯!!」

 コロを睨みつけるウンディーネちゃんの表情は凄まじく恐ろしかった。

 び、美少女の怒り顔って本当に怖っ!!?背筋が凍りつきそうな程怖いってまさにこのこと⋯⋯

 いや、本当に寒くなってきたような⋯⋯?

「ボクが⋯ボクが姉様から誰彼構わず恋だ愛だのを捧げて追い掛け回す尻軽に思われたらどうするんだボクが愛を忠誠を生涯をボクの持ち得る全てを捧げたいのは姉様だけなんだ姉様とボクを引き裂こうとするものなんて全て許さないよ許さない許さない⋯⋯」

 ブツブツ呟くウンディーネちゃんの周囲が段々と白く凍りついて、冷気が漂い始めてきた。

「周りが凍ってきた⋯!?どうしよう⋯!?」

『エニカ様、ご覧下さい。水精型の魔物は恋をした場合、好いた相手への執着心や独占欲が強くなりやすく、対象となった者以外の全てを排除しようとすることがあります。

 ⋯⋯エニカ様とは同性であるため、強い憧憬や敬愛の念を抱いたのかと思っておりましたが、どうやらそれだけでは無いようですね』

「私、あの子にその⋯恋愛的に好かれているってこと?でも会ったばかりなのに何であれだけ好いてくれているのかが分からないよ⋯  

 私はただ、倒れていたあの子の顔を拭こうとしただけで、結局拭いてあげられてないのに⋯」

『⋯⋯相手にとっては意識すらしていない、些細な行動であっても、受けた当人にとっては絶望からの救いとなることや、命や生涯を捧げても足りない程の恩義となること、一生を通して唯一無二の心の拠り所となることがあるのですよ。

 あのウンディーネにとって、エニカ様が死に際を寄り添われ、己のために涙を流し、その意思や存在を肯定したことは、同性であっても恋をするには十分過ぎる程の理由となったのではないかと思われます』

「コロ⋯⋯」

『しかし、あの様子では私やソイルを排除対象として見なしているようですね⋯

 ソイル、万が一に備えて準備をして下さい!』

「⋯ピギャッ!」

 その時私は見た。ソイルの瞳が赤く染まったのを。


「⋯⋯お願い待って!!!」

『エニカ様っ!!?何を⋯!!?』

「ピギャァッ!!?」

「えっ⋯⋯!?」


 もしものことが起きてしまえば、ウンディーネちゃんは石化することになってしまう。

 そう思った瞬間、身体が勝手に動いていて気付いたらウンディーネちゃんを抱きしめていた。

「うっ⋯!!つめたっ⋯!!」

 抱きしめたウンディーネちゃんの身体はとても冷たくて、私の身体も凍りついてしまいそう⋯⋯

「ダメだっ!!!離れてっ!!!」

「きゃっ!!?」

『エニカ様!!!お怪我は御座いませんか!!?』

「ピギャッ!!!」

 ウンディーネちゃんが咄嗟に私を突き飛ばした。

 ウンディーネちゃんの咄嗟の判断と行動のお陰で、私は凍りついたり、凍傷を負うことは無く、身体が少し冷えたぐらいで済んだ。

「ね、姉様をボク⋯ボク⋯⋯ごめんなさい!!」

「あ、待って⋯⋯!!」

『なりませんエニカ様!!!これ以上の後追いはさらにあのウンディーネも苦しめますよ!!!』

「っ!!」

 コロの言葉に呼び止めるのを止めて、ウンディーネちゃんが走り去っていく後ろ姿を黙って見ているしか無かった。

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