表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/162

第四十話 森の中にて5

「貴女に色々聞く前に、私たちのことを話さないとだったね」

 私は彼女にコロとソイルが仲間で従魔契約をしていること、私たちは旅をしている最中で今は街に向かって森を抜けようとしていること、その途中で女の子が倒れているのを見かけて寄ったら目覚めて今に至ることを簡単に説明した。

「姉様はその子たちと従魔契約をしていて、今は旅の途中でボクを見つけてくれたんだね⋯」

『今貴女が仰った通りです。

 こちらの事情をエニカ様自ら話されたのですから、次は貴女が話す番では?』

「コロ!」

「⋯そうだね。姉様に命を救われているのだから、ボクのことも話すべきだよね。

 ボクはこんな見た目と言葉遣いだけどウンディーネなんだ。この先の泉で生まれたよ」

「ウンディーネ⋯」

 ウンディーネというと元の世界では綺麗な女性の姿をした水の妖精だったよね?

 こんな見た目だけどって一体どういう意味なんだろう?それに言葉遣いも何か関係するの?

 見た感じは想像した通りの綺麗な水をイメージさせるような美少女そのものだし、言葉遣いについては僕っ娘でも全然気にならないけど⋯

『お待ちなさい。貴女はウンディーネなのですか?

 見た目は私の知るウンディーネと違うようですが、貴女の使用出来る魔法も教えて下さい』

「え?見た目が違う?」

「⋯⋯君は本来のウンディーネを知っているんだね。ボクは⋯」

 女の子⋯ウンディーネちゃんは両手で宙を包むような動作をすると、その手の中に魔法を発動させた。

「氷⋯?」

 ウンディーネちゃんの両手の中には、綺麗な氷の結晶がキラキラと形作られて浮かんでいた。

「そうだよ、姉様。ボクは氷魔法を使うウンディーネなんだよ。

 ⋯⋯正確には氷魔法しか使えないんだけどね」

 そう言ったウンディーネちゃんはどこか自嘲めいた表情を浮かべていた。

『氷魔法しか使えないウンディーネ⋯そのような存在は初めて聞きますね。

 しかしそれならば貴女の容姿にも納得がいきます』

「ねぇコロ。ウンディーネってどんな姿をしてるの?

 この子の姿だって私の想像するウンディーネそのものって感じがするんだけど⋯」

「えっ⋯!?」

 私の言葉にウンディーネちゃんが何故かびっくりしたような反応を見せた。どうしたんだろう?

『本来ウンディーネは水の魔力から生まれる妖精であるため、全身が水で出来た美しい人間種の女性に近い姿をしていることが多いのです。

 ウンディーネによっては擬態が出来る者もおりますが、あくまで魔力で変化した一時的な姿ですので一定時間しか擬態の姿は持ちませんし、心身や魔力が弱っている状態ですと擬態自体が出来なくなります。

 彼女の場合、ボロボロの姿で倒れていた時点で容姿の変化が見られなかったことから、擬態ではないとは思っておりましたが⋯

 恐らく、氷魔法が水と風の魔力の両方を備えている場合に使用出来ることから、発現時に水の魔力のみではなく、何らかの要因で水と風の魔力が合わさったことで今の彼女の容姿になったのではないかと推測致しました』

 ソイルの時もだけど、コロの魔物の知識と推測って本当に凄いな⋯

「君の推測は多分合っていると思うよ、スライムくん。その証拠にボクは生まれてこの方、ずっとこの見た目と魔法のまま、生きてきたんだ。




 なり損ないのウンディーネだ、って姉さん達に蔑まれながらね」

「えっ⋯?」

 衝撃を受ける私に微笑みかけながら、彼女は語り始めた。

「ボクの生まれた泉では魔力を含んだ湧き水と共にウンディーネが生まれやすいんだ。

 だけどある年の冬、滅多にないぐらい冷え込んだ日にボクは生まれたそうなんだけど、姉さん達と容姿も使える魔法も違っているし、言葉遣いもウンディーネらしくないからって、姉さん達からは「濁りきった水のような醜い容姿だ」「オンディーヌにもなれない出来損ない」って言われたり、目障りだからって攻撃されたりして育ってきたんだ。

 いつもなら姉さん達から隠れて過ごしてたんだけど、今日はたまたまボクが気付かない内に姉さん達に気付かれたみたいで、死角から攻撃を受けちゃってね⋯情けないけど逃げてきてそのまま動けなくなってたんだ」

 ウンディーネちゃんの過去や傷だらけになっていた経緯は私の想像よりも辛いものであった。

「そんなことって⋯オンディーヌも何なの⋯?」

『オンディーヌとは元は一部の地域で呼ばれていたウンディーネの別の呼び名でしたが、いつの間にかウンディーネ側が面白がって男性型のウンディーネをオンディーヌと呼ぶようになったことが始まりと伝えられています。

 確かに彼女の言動はウンディーネとしては珍しいものだと私も思っておりました。

 ウンディーネは男性型として発現しなければ、女性としての姿形や立ち居振る舞いに強く拘る魔物だという認識がありましたので。

 ⋯それで貴女は本来なら居場所である筈の水辺から離れて、この木の下にいた訳ですね』

 私の一人言のような呟きに丁寧にコロが答えてくれた。

 コロなりにウンディーネちゃんを気遣ってか、言葉を選んでいるように感じた。

 けれどコロの解説を聞いて、ウンディーネちゃん以外のウンディーネに対して段々と腹が立ってきた。

 ウンディーネちゃんめちゃくちゃ綺麗で美人さんじゃん!!僕っ娘だってよく似合ってると思うのに!!

 使える魔法だって氷魔法なんてキラキラして綺麗だったし、冷蔵庫や冷凍庫、冷房としても大活躍しそうな良い魔法だと思う!!

 容姿も魔法も言動もちょっと違うぐらいで傷付く言葉を言ったり生死に関わる攻撃をしたりするなんて、他のウンディーネはウンディーネでご大層な容姿をお持ちかも知れないけど中身ヘドロ以下の性格ドブスで間違いないよ⋯あっ」

 いつの間にどこまで熱弁してしまったんだろう。

 恐る恐るみんなを見てみれば、ポカーンとした様子で私を見るコロとソイルと、

「ね、姉様ぐらいだよ⋯生まれてからこんなにボクを快く思ってくれたのはさ⋯」

 顔を真っ赤にしながら、こっちが泣きそうな言葉を呟くウンディーネちゃんがいた。

 ⋯⋯私も顔から火が出そう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ