第三十六話 森の中にて
洞窟を出発して早三日。
この三日間、コロとソイルの助けをめちゃくちゃ借りながら中々に濃厚な時間を過ごしてきた訳だけど⋯
「も、もう行き倒れそう⋯⋯」
『エ、エニカ様ぁぁぁぁぁ!!!!?』
「ピギャァァァ!!!!?」
ずっと支えてくれたコロとソイルには本当に申し訳ないけれど、正直心身ともに限界を迎えそうだった。
弱音を吐くのが速すぎないかって?
考えても見てほしい。今までぬくぬくと現代社会の便利なインフラやら数え切れない程の企業努力の恩恵を生まれた頃からどっぷり受けてきてたのに、突然知識も経験もないのに過酷な大自然に放り出されて強制サバイバルに突入してみなさいよ。
コロとソイルとマスターさんが用意してくれた品々がなければ、初日の時点で死んでたよ間違いなく。
最近なんかは限界社畜のOLとして生活していたから、運動習慣やら食生活の管理なんか出来ていないに等しい。
その中で、普段歩く機会なんてない山道(?)を日中は日が暮れる前まで歩いて足は常にパンパン。全身筋肉痛が今のデフォルトだ。
食事は当然自給自足。火を起こすところから始めないとで火や石は幸いコロとソイルにお願いできるけど、石の配置や枝組みがきちんと出来ないと火は中々つかなくて、火力もその時によってまちまち。
食材はマスターさんが用意してくれた分で今のところは何とか食いつなぐことが出来ている。
でも、もって一週間程の量らしいから、道中で食べられる野草や果物をコロが見つけた時に採るようにしている。味は今は求めない。食べられるだけ幸せだと思ってるからね。
魔物を狩るのは私が慣れてないから、生物型の魔物が集まりやすい水辺を見つけた時に狩りの練習をすることになっている。正直今から怖気づいているけど。
水はコロにお願いしているけど、コロの魔力量の関係で一度に水魔法で出してもらえる量は限られているから、常に使う水の量を考えて行動。
顔や身体は布で拭けるけど本当は髪とか洗いたい。
洗濯もしたいけど今コロが出せる水の量は、私の分の飲料水や調理、洗い物に使う分、洗顔や清拭で布を湿らせる分を都度出してもらうのが精一杯だ。
それだけでも十分コロに出してもらっているし、洗濯をしても乾かす場所が限られるから、そこは水辺に辿り着いてから考えようと思ってるけど、水辺はまだ探している最中。
トイレは⋯言わずもがな。
寝る時はコロとソイルに必ず見張りをしてもらって眠ることが出来ている。
二人に見守ってもらっていることと、慣れない旅で疲れが溜まっているのがあってか、すぐ寝られて朝まで起きないことがちょっと救いかな。何かあった時に動けなさそうと言われたらそれまでだけど。
ただでさえ慣れないサバイバルに必死な中、やっぱり心身共に限界が来そうな場面と言えば⋯
『ここで行き倒れてはなりませんエニカ様!
魔物が襲ってきますよ!』
「ピギャッ!」
「だよね頑張るからちょっと待って」
いつどこで魔物に襲われるか分からない不安があることと、実際に襲われることだ。これが断トツにキツい。
歩いている最中に魔物、ご飯を食べようとして魔物、休憩しようとして魔物、と用心していても突然現れて襲ってこようとする魔物が本当に怖いし、出くわした時の疲労感が心身共に凄い。
今のところはコロとソイルが咄嗟に対応してくれるけど、私自身も対応が出来るようにならないといつ死んでもおかしくないと思ってる。
それはコロとソイルも感じていて、朝の出発前や休憩中、夕食後に二人と一緒にちょっとだけ魔法の練習をし始めている。
今はソイルと従魔契約をして量を増やせた地属性の魔力を使って土や石、砂とかを動かして練習をしているところだ。
でも、私が魔力を使い慣れていないことと、魔力を使い過ぎると疲れやすくなること、旅を始めたばかりで一気に詰め込み過ぎになることを心配して、本当に少ししか練習をしていない。
いざ魔力が使えるようになっても体力が残ってなければ、逃げたり応戦したりすることが出来なくなるってコロの言い分も最もなんだけどね⋯
『せめてあの大きな木の根元までは頑張りましょうエニカ様!そこで少し休憩を取りましょう!』
「ピギャピギャッ!」
二人も私の状態を察してか、こまめに休憩を勧めてくれる。
コロは私の肩に乗って、ソイルは杖の先の袋にぶら下がって移動している状態だから、私に合わせてくれてるのだと思う。
「ちょっと休憩させてもらえると本当に助かるよ⋯って、あそこ、何かない?」
『あの木の辺りでしょうか?』
「いや、それよりもう少し奥のところ⋯え?人?」
二人の言葉に甘えて休憩場所となった木まで向かおうとした矢先、その木より少し奥の方の木の下で横たわる人のような姿が見えた。
こんなところに人?それよりもしかして行き倒れてるんじゃ⋯そもそもい、生きてる⋯?




