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第三十二話 再び始まりの洞窟にて10

 コロと手分けして柩の中を空っぽにして、いよいよマスターさんを地面から柩へと寝かせる番となった。

 初めはマスターさんのご遺体を清めたり、整えたりするのにも限度があるから、せめて布で包もうかと思ったけど、コロから『マスターがご用意したものはなるべくならば全てエニカ様がお使い下さい。今後のエニカ様のために使われ役立つことがマスターたっての願いでありますから。』との意見から、直接柩の中に納めることになった。

 手袋を嵌めてマスターさんを汚さないように移動させる準備は出来たし、一番大事な役目を担うことになるのは分かっているけど、ご遺体に触れたりさらに移動させるとなったら、正直緊張するし抵抗が無いわけじゃない。

 だけど、転移者であるとは言え見ず知らずの他人である私や誰かのために、ここまでしてくれたマスターさんへせめてもの感謝や追悼の意味を込めて出来ることをしたい。

 少しだけ、お身体を失礼しますマスターさん!

 手を合わせてから遺骨に触れようとした時だった。

『お待ち下さい、エニカ様。微力ながら失礼致します』

 コロの声が聞こえたかと思うと、コロが右手にピトリとくっついて虹色に輝いた。

「これは、白い手袋⋯?」

 次の瞬間には真っ白でシンプルなデザインの手袋へとコロが変身していた。

『この姿ならば、共にマスターを寝かせることが出来るのではないかと思いまして変身致しました。

 エニカ様の左手を包むことが出来ないのが大変悔やまれますが。』

「⋯コロ、ありがとう。一緒にマスターさんを寝かせようね」

 コロに包まれた右手は、優しくマスターさんの遺骨に触れることが出来た。


――――――


「ふぅ⋯何とか綺麗に納めることが出来て良かったぁ⋯」

 しばらくして、最後のお骨を納め終え柩の蓋を閉めた。

『お疲れ様です、エニカ様。

 そして、マスターのために本当にありがとうございました。感謝してもしきれません』

「大袈裟だよコロは。

 コロが一緒にお骨を納めてくれたからマスターさんを寝せることが出来たんだよ」

『いいえ!エニカ様以外の転移者であれば、もしかしたらマスターは死体であることを気味悪がられ、そのまま放置され、この洞窟にかけられた防御魔法が自然に解けてしまった時に魔物に荒らされたのではないかと思うと怖気(おぞけ)が走ります!

 初めてお会いした時から今もマスターへの敬意を持って接して下さるエニカ様の手で、山地(やまつち)の神の下へお身体を眠らせることが出来たのはこれ以上ない幸いなことであります!』

「そこまで言ってもらえると逆にこっちがありがたいよ。

 そういえばコロがちょこちょこ言ってる始まりの女神?とかやまつち?の神って、この世界の信仰みたいなことなの?」

『仰る通りです!エターナレンには『始まりの女神』を始めとする山地の神など十三の神への信仰があります。

 エターナレンに生まれてから死に逝く魂は皆、始まりの女神から魂が生まれ出で、そして最期の眠りにつく時は女神の御許(みもと)へと魂が還ると言い伝えられております。

 始まりの女神の御許へ、という言葉は故人へ向けた死後の安寧を祈る言葉にもなりますね』

「へぇ⋯そんな信仰や言葉がエターナレンにあるんだね」

 故人への祈りの言葉かぁ⋯マスターさんにエターナレンでの言葉を贈ることが合っているかは正直分からない。もしかしたら元の世界で信仰している宗教があったかもしれないからね。

 でもそれを知る(すべ)はないから、せめてどうか安らかに眠れるように心を込めて祈りたいと思う。

 改めて柩へ手を合わせていたら、隣でコロも目を瞑って黙祷を捧げていた。

 ひとまずはマスターさんを納棺出来たのはちょっとホッとしたけど、明日のためにも色々準備を整えないとだね。


――――――


「ソイル、見守りしてくれて本当にありがとうね。何も無かった?」

「ピギャァ!」

 明日の準備に取り掛かる前にソイルの様子を見に行くことにした。

 ソイルは土壁の上に立って(立つって表現が合ってるかはちょっと分かんないけど)見張りをしてくれていて、わざわざ作ってくれた段差を登って外の様子を見てみたけど、外の景色もちょっと高いところからの視点で見たこと以外、ソイルの返事の通り大きな変わりは見当たらなかった。

 ソイルも変わらずニコニコしている。

 ソイルは笑顔で元気にお返事してくれるから可愛いんだよね。

『ハッ⋯!?エニカ様が私よりソイルを可愛いと思った気配がする⋯!妬ましいっ⋯!』

「コロ落ち着いてね。気のせいだからそれ。コロも可愛いしソイルも可愛いから。」

『エ、エニカ様〜!』

「ピギャァ〜!」

 元々近くにいたコロと、土魔法を使って壁から降りてきたソイルが足元に集まってくれた。

 足元にちっこいのがわちゃわちゃ寄ってきてくれるのって可愛いよねぇ。癒されるよ。

『これがエニカ様の素足であれば尚良しですね〜!』

「ピギャ?」

 前言撤回。約一名可愛くないことを言い始めたのがいる。

「コロ」

『申し訳ありませんエニカ様!

 つい欲求が、いえ欲望が、願望が言葉に出てエニカ様を不快にしてしまい大変失礼致しました!!!』

「分かった。次からは気をつけてね」

『はい!』

「? ピギャッ!」

 私とコロのやり取りによく分からないながら、またも良いお返事をしてくれたソイル。 

 ⋯あんまりソイルの教育上に悪そうなら、コロにも発言に気をつけてもらうようきちんと話しとかないだよね。

 リーダーって気質では決してないけど、必要なことは相手にきちんと話せるようにはならないとなぁ。

 そう思いながら再び洞窟の奥に戻って準備に取り掛かることにした。

 その後、明日の準備や夕飯などは比較的順調に何とかなったけど、寝る前のトイレで一悶着あるとは思わなかった⋯

 寝る直前までドタバタしながら、恐らく私の人生でトップクラスに濃い一日は終わった。

 眠りに落ちる直前、両親を亡くしてから初めて、夢を見ることもなく深く、深く眠ることが出来た。

出発前に幕間話を入れる予定です。

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