第三十一話 再び始まりの洞窟にて9
『ソイルには休んでもらうとして、私たちは早速現状や今後についての話し合いをしましょうか』
コロの提案で、出入り口前だけどその場で話し合うことが決まった。
ちなみに出入り口前で話し合うことになったのは、万が一魔物が来た場合にソイル作の防壁がきちんと機能するかどうかを確認した方がいいから、とこれまたコロからのアドバイスを受けてだった。
時々外の様子を確認しつつ、コロと相談したり、少しずつ回復してきたソイルに話しかけながら決まったのは以下の内容となった。
・洞窟全体にかけてあった防御魔法だけでなく、ランタンの灯りとして大活躍していた火魔法も早ければ翌日には解ける可能性がある。完全に解けてしまえば私の気配が辿りやすくなってしまい、魔物に襲われる可能性が高くなる。
・リスクを承知でしばらくこの洞窟を拠点にする案も出たけど、近くに生活用水となるような水辺がなく、食用になるような植物も少ないため、移動しながら一旦街を目指して生活用品などを揃えられるようにする。必要品を今日中にまとめて、明日私が朝ご飯を食べてから出発の予定。
・金銭はマスターさんが用意している宝石や金貨は少々あるが、道中で薬草や鉱石の採取をしたり、魔物を獲ったりして換金できるようにする。
・食事は果物や木の実の採取となるべくなら魔物の捌き方を覚えて食べられるようにする(ハードル高いな⋯)。
・従魔契約は出来るだけ中位魔クラスでソイルのようなタイプが理想。生物型はその魔物自体のご飯も必要になるし、魔力が高くて言葉を理解できないタイプは制御が難しいため。
大体これらの内容を日が暮れる前までに決めることが出来た。
『それでは以上の内容の他、何かご意見などはありますか?』
「ピギャギャ」
今後の生活に必要な取り決めを一緒にまとめてくれたコロが最後に確認で尋ねてくれた。
だいぶ回復してきたソイルは特に意見はないのか首を横に振っていた。
自然と二人の視線が私に集まる。私には二つ、二人に相談したいことがあった。
早いうちには必ずやりたいと思っていたことだ。相談するなら今がベストタイミングだろう。
反対されないとは信じたいけど、話してみないことには分からないからね。
意を決して二人に相談してみることにした。
「私からね、二人にお願いしたいことがあるけどいいかな?」
――――――
『本当によろしいのですか?エニカ様』
「うん。少し落ち着いたら必ずしてあげたいって思っていたことだから、出来ることなら今からでもやりたいんだ」
『⋯本当にありがとうございます。マスターを冥闇の柩に納棺して頂けるなんて⋯』
私がお願いしたことの一つは、「コロと一緒にマスターさんの遺骨を納棺すること」だった。
それは洞窟の中で暮らすと決めた時から考えていたことで、少し落ち着いたらきちんと弔ってあげたいと思っていた。
けれど、想像より早くに洞窟から旅立つことになったから、旅の準備前にコロとマスターさんの遺骨を柩に納めて、旅立つ前に柩を埋めることを提案したのだ。
もう一つのお願いは、「ソイルにマスターさんの眠る柩を埋めてもらうこと」で、あの土魔法の威力を実際目で見てソイルなら魔物も掘り起こさない地中深くに柩を埋めることが出来るんじゃないかと思って、二人に頼んでみることにした。
コロもソイルも拒否なく同意してくれたから本当にありがたいと思った。
マスターさんの遺骨のことはずっと気にかかっていたから、二人からの協力が得られることは純粋に嬉しいよ。
日が暮れるとさらに洞窟内が暗くなりそうだと思い、今は私とコロの二人で静かに眠るマスターさんの前にいる。
外の見張りを回復したばかりのソイルにお願いすることになったのは気が引けたけど、コロの『ソイル、出来ますね?』という問いかけに対するソイルの気合が入った「ピギャッ!!」を聞いたら、任せない訳にはいかなくなってしまった。
心配が無い訳ではない。むしろ直接戦う場面とか見てないからめっちゃ心配してる。
だけど、ロックベアーを石化させて倒したり、土魔法を巧みに操る姿を見たら、見た目は小さくても過酷な自然界(特にここ異世界だから尚更過酷そう)を生きてきたからか、ところどころで実力の高さを感じるし、ソイルの「任せてほしい」という意気込みを信じることも大事だよねきっと、と自分に言い聞かせて納得することにした。
勿論ソイルの声が聞こえたり、様子がおかしいと思ったら中断してでもすぐに向かうつもりでいる。
ちょっと無茶をし過ぎて限界までしちゃうところがソイルにあるのは、さっきのバリケード作りで分かったからね。
信頼することは大事だけど、過信との境目には気を付けないといけないとは思うし。
「そしたら最初はマスターさんを寝かしやすくするために柩の中を空にしようか。手伝ってもらっていい?コロ」
『承知致しました。仰せのままに、エニカ様』
一人で見張りをさせてしまっているソイルもだけど、マスターさんをいつまでも冷たい地面の上に寝かせる訳にはいかないから、心を決めて取り掛かることにした。




