第二十八話 再び始まりの洞窟にて6
「コロ、その子と話してる途中で悪いんだけど話しかけていいかな?」
『エニカ様!丁度お声掛けをさせて頂こうと思っておりました!いかがなさいましたか?』
「ピギャ?」
コロが声を掛ける前に私から声を掛ければ、切りよく話が終わるタイミングだったようだ。
コロとゴーレムくんの二人ともが顔を上げて私の方を向いてくれた。
今が考えていたことを話すタイミングだろう。
「二人の気持ちは私によく伝わったよ。
でも、マッドゴーレムくんは従魔契約をするなら、ちょっとだけ私と話をしてから契約をしてもらいたいけど、いいかな?」
――――――
「まずはね、君の上で用を足しちゃって本当にごめんね」
「ピギャッ!?」
最初に知らなかったとは言え、この子の上でトイレしちゃったことを謝った。
これは事実を知ってから絶対しないといけないって決めてずっと思ってたんだ。
「次に、置いてけぼりにしようとしてごめんね」
「ピギャ⋯」
敵か味方か分からない状態であったから、あの時はあの選択しか選べなかったことは分かってる。
けど涙をボロボロ流して突っ伏しちゃうほど、悲しい思いをさせちゃったね。
「それなのに、
君はロックベアーに襲われそうになった私を助けてくれて、
魔眼で私が石化しないように背を向けてくれて、
コロと私の言葉でここまでついてきてくれて、
偶然だとしても私を主だと思ってくれて、
コロの圧迫面接にも耐えて一生懸命に答えようとしてくれて、
今も私たちと一緒にいたいと思ってくれて、本当にありがとう!」
「ピッ、ピギャァッ⋯!」
この子と出会ってからの時間はまだほんの少し。
きっと魔眼の制御のことで私の魔力を必要としているのもあるとは思う。
それでもゴーレムくんはこの短い出会いの中で私たちに力を貸してくれただけでなく、今だって私たちの元へ信じて来てくれた。
だから私はゴーレムくんへ深いごめんねと、沢山のありがとうを伝えてから仲間になりたいと思ったんだ。
「コロと話していた時に君の想いはしっかり聞いていたよ。
だけど最後に確認ね。従魔契約って私か君が死ぬまで続くし、解除することになったら地属性の魔力が大きく減ったり質が落ちたりしちゃうんだ。回復もしないみたい。
それでも君は従魔契約を私と結んでくれる?」
「ピギャッ!!」
ゴーレムくんは大きく頷いてくれた。これ以上の確認はきっと必要ないだろう。
これ以上はきっと、この子の気持ちを疑うことになってしまうだろうからね。
「分かった。そしたら、契約する時はちょっとだけでも触れさせてもらった方がいいんだけれど、君に触れても良い?」
「!? ピキャピギャァ!!」
ゴーレムくんは本当に嬉しそうな声を上げながら、一生懸命私の下に来ようとしてくれた。
今度は私から君のそばに行くよ。
ゴーレムくんの真ん前まで来てからしゃがみ込んで、右手で優しく触れてみた。
「ピギャ、ピギャァ⋯」
触れた手に身体を預けてくれるゴーレムくんの感触は、泥というより腐葉土のように柔らかく優しく手に馴染んだ。
この子に掛ける言葉は決まっている。あとは伝えるだけ。
「私の仲間になってくれませんか?」
ゴーレムくんは一瞬だけキョトンとして。
「ピギャア!!」
大粒の涙を一つ零してから、満面の笑みで答えてくれた。
ゴーレムくんが答えた瞬間、私から赤い光が、ゴーレムくんから茶色の光が立ち上った。
コロの時のように二つの光は頭上で相生結びのような綺麗な円を描くと、私の首とゴーレムくんの体を囲むように巻き付いて、あっという間に消えてしまった。
赤い光が出た瞬間、急激な疲れを感じたから契約は成功したんじゃないかと思うけど⋯この疲労感は慣れる感じがしないなぁ。
『お疲れ様ですエニカ様!マッドゴーレムとの従魔契約は無事に終わりましたよ!』
今まで私とゴーレムくんの従魔契約を静かに見守ってくれてたコロが、ポンポン跳ねながら私のそばに来た。その頭には望魔鏡が乗っている。
『こちらが証拠になりますがお疲れでしょうから、後からご確認なさりますか?』
「ありがとうねコロ。せっかくだから今見てみようかな」
『承知致しました!まずはエニカ様を写した結果がこちらです!』
ランタンの灯りを近付けながら望魔鏡を見てみれば、レンズ内は新しく茶色の宝石に向かって伸びているのが見えた。
「これって地属性の魔力が増えたってことだよね?」
『仰る通りです!これでエニカ様は魔属性だけでなく、地属性の魔力を行使できるようになりますよ!
マッドゴーレムの結果もご確認なさりますか?』
「うん。確認してみようかな」
『承知致しました!早速エニカ様からのご命令ですよマッドゴーレム!貴方の魔力を望魔鏡に写させて下さい!』
「ピギャッ!」
コロの言葉にいいお返事をしたゴーレムくんを見て、ふと思った。
そういえばこの子の名前を聞いてみないとだった、と。




