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第二十七話 再び始まりの洞窟にて5

「コロちょっといい?」

 ゴーレムくんの様子がどうにも気になるから、小声でコロを呼んで伝えることにした。

『いかがなさいましたか?エニカ様』

「あの子、石化の魔眼のことになると元気が無くなったり、何かを気にしている様子があるんだよね。私も気になっててさ⋯

 まず石化の魔眼自体が何か教えてもらいたいんだけどいい?」

『ふむ、なるほど⋯それでしたら私もちょうど『石化の魔眼』についてご説明したり、従魔契約を行う前に彼とは色々話をしたいと思っておりましたので、もしエニカ様さえよろしければ彼と一対一で少し話をさせて頂くことは出来ますか?

 その間、エニカ様には大変申し訳ありませんが、私がお声をかけるまで彼との話し合いをお見守り頂けませんでしょうか?』

 本当に申し訳なさそうな表情で頼まれているけど、つまり今からゴーレムくんと話すことは私に口を出してもらいたくないってことか⋯

 ゴーレムくんに対して、コロはちょっとドライな態度を取ってるから心配なんだけど、私の目の前でやり取りはしてくれるみたいだし、ここは様子を見てみることにしよう。

「分かったよコロ。だけど言い争いとかになるようだったら止めさせてもらうからね」

『承知致しました。そのようなことに決してならぬようエニカ様に誓います』

「そこまで言うんだったら⋯私はここで見てるからあの子と話してきて大丈夫だよ」

『ご配慮ありがとうございます。では失礼致します』

 コロは一礼してからゴーレムくんの方へ向かって行った。


――――――


『マッドゴーレム。貴方に話があるのですが少々よろしいですか?』

「ピギャ?」

 コロは俯いていたゴーレムくんに近付いて声を掛けるとゴーレムくんは顔を上げて頷いた。

 そういえばあの子の名前ってあるのかな?

 コロの種族呼びに反応しているから「自分はマッドゴーレムだ」っていう自覚があるのかもしれない。

 ⋯でもよくよく考えたら「マッドゴーレム」って呼ばれ方を自分の名前って思ってる可能性もあるか。

 そんなことを考えながら二人の様子を見守っていた。

『貴方、『石化の魔眼』持ちでいらっしゃいますよね?ロックベアー相手に石化させたことと、瞳の色の変化をお見かけしましたので魔眼持ちではないかと思いましたよ』

「ピ、ピギュ⋯」

 コロ直球で聞くね。

 ゴーレムくんもちょっと困ったように目をキョロキョロさせてからコクリと小さく頷いた。

『魔眼持ちは生まれ持っての体質ではありますが本来であれば余程魔力の質が高くなければ制御が難しいもの。それを貴方はタイミングを見計らって発動することが出来た。

 それは何故だか貴方は分かりますか?』

「⋯⋯⋯」

 え?あの魔法って生まれつきのものなんだ。だけど制御が難しいって⋯

 あの子はロックベアーだけに魔法を使っていたように見えたけど、その後は目の色が赤く変わったままだったのを焦っていたし、目をなるべく見せないようにしていたよね。

 魔眼のコントロールが出来るのは一時的なものだって、本当はその時からちゃんと分かっていたのかも。

 なら何であの時は丁度いいタイミングで魔眼を使えたんだろう?

『マッドゴーレム。貴方は理解しているのでしょう?

 エニカ様の聖水という魔力に満ちた体液を取り込んだことで一時的に魔力の質が高まり、魔眼の制御が出来たことを。そして時間が経てば経つ程、また魔力の質は低下し体質も戻ってしまうことを。

 エニカ様の体液を取り込み続ければ自動的に発動してしまう魔眼の力に振り回されることはないことを、ですね』

「⋯⋯⋯⋯」

 ゴーレムくんはずっと黙り込んでいたけど、コロの言っていることが答えであることは見て取れた。

『よろしい。私の推測は間違ってはいないようですね⋯そのご様子から石化の魔眼でいか程、貴方が振り回され苦しんできたのかは想像に及びません。

 しかし、これだけは貴方にお伝えさせて下さい。




 魔眼に関していかなる過去があろうとも、エニカ様に従魔として終生お仕えしたいとのお気持ちがあるのでしたら、ロックベアーからエニカ様をお守りした時と同じくエニカ様のために死ぬまで石化の魔眼をガンガン使い倒して下さい!!!異論は認めませんよ!!!!!』

「ピギャア!!?」

 ちょっとコロさぁぁぁぁん!!?想像以上のスパルタ発言だよ!!!?ゴーレムくんショック受けてるじゃん!!!!?

『偶発的とはいえエニカ様の聖水を身に受けた挙げ句、エニカ様を主として望むという大それた願いを叶えたくば、大地へと還るその時まで誠心誠意を持ってエニカ様へお仕えし、貴方の持つ命、身体、精神、魔力、知能、技能など持ち得るもの全てエニカ様に捧げるつもりでおりなさい!!!!!

 エニカ様の聖水を承るということはそういうことですよ!!!!!』

「ピッ、ピギャァ⋯!」

 そんなことないですよ!!!それは単なる排泄物にしか過ぎません!!!本当ならむしろこっちが誠心誠意謝らないといけない事案だから!!!!!!

 ゴーレムくんずっとショックを受けっぱなしになってるみたいだけど大丈夫!!?もう止めた方が⋯

『しかしエニカ様にその全てを捧げると言いましても、決して無謀なことをしてほしい訳ではありません。

 今後従魔としてエニカ様のお力になりたいと願うのであれば、叶うことならば貴方にはエニカ様の生涯を通して付き従う覚悟を持ち、それを貫き通してもらいたいと思っております。

 私に万が一のことがあれば、エニカ様をお一人にすることは絶対に無きようにしたいと考えておりますからね』

「ピギャァ⋯」

 コロ⋯まだ短い付き合いだけれど、そこまで考えてくれてるんだ⋯

『それに貴方はエニカ様には及びませんが、私にとっては既に大切な存在だと思っているのですよ。

 エニカ様の記念すべき初聖水を余すことなく身に受けられ回復を果たしたことで、エニカ様の初聖水記念は「貴方」という形で残ることになるのですから。

 貴方が従魔として立派に務めを果たせば果たす程、エニカ様の初聖水記念として残し続けられることは非常に悔しく妬ましいことでありますが私にさえ出来ない、貴方だけが授かった栄誉です。

 今一度聞きましょう。貴方はエニカ様の従魔になりたいと願いますか?』

「ピギャア!!!」

 ゴーレムくんは出会ってから一番、力強い声を上げながら頷いた。  

『貴方の気持ちは伝わりました。これから共にエニカ様の為に精進しましょう』

「ピギャァ⋯!!」

 穏やかな表情と声色で叱咤激励するコロに、どこか感動したように涙を浮かべ何度も頷くゴーレムくん。

 そんな二人の光景を見ながら私は思った。

 これ以上私の初トイレネタを引っ張らせないように話を切り上げるか!!!

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