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第二十話 洞窟の近辺にて2

『エニカ様、ご用心下さい。先程エニカ様がいらした茂みから微弱ですが魔物の気配がします。

 エニカ様の匂いを辿ってきた魔物が集まりだしているかもしれません。

 静かに離れることを優先しますが、エニカ様から茂みの距離が近いので逃走は魔物によって困難な可能性があります。

 戦闘の場合は私が攻撃致します。エニカ様は全力で洞窟に向かって走って下さい。私は頑丈に作られているので後から洞窟に向かえます。

 何事かありましても絶対に止まらないで下さい』

 小声だけど固い声で話すコロの様子に緊張が走る。

 魔物を探そうと思っていたけど、いざ近くにいることが分かると怖くて震えそうになる。

 茂みにいる何かの音は今も止まない。いつ私たちの方へ現れてもおかしくなかった。

 茂みや周囲を警戒しながらゆっくり移動しようとした時だった。

 パキリッ

 私が足元にある小枝を踏んで音を立ててしまった。

「あ⋯ごめ⋯」

『お静かに。あちらも気づいたようです。エニカ様、姿を視認次第、逃げる体勢を取るように』

 ガサッ ガサガサッ

 茂みから何かは音を立てながらゆっくりと現れた。

 見た目は公園で子どもが作った小さな砂山のような大きさの土の塊。だけど普通の土の塊には絶対にない、白目の部分が黒くなっている大きな目が一つついていた。

「あの魔物は⋯」

『あれはどうやらマッドゴーレムのようです。通常個体よりかなり小さいようですが油断は出来ません』

 警戒態勢のままの私たちを前に、土の塊は目の下を裂けた口のようにパカリと開きながら私たちがいる方へ向かおうとしていた。


「ピギャッ!」

 ズリ⋯⋯ズリ⋯⋯ズリ⋯⋯ズリ⋯⋯


「⋯⋯思ったよりゆっくり来るね」

『⋯⋯あの速度が限界なのでしょう』

 小さな土塊(つちくれ)の形をした魔物はピギャピギャ鳴きながら私たちの方へ向かおうとしているけど、その速度は大変に遅かった。

 なんならきっと亀よりも遅い。かたつむりレベルかも。

『エニカ様、逃げるなら今のうちです。あの様子だと下位魔かと思われますが従魔には向かないでしょう』

「かいま?」

『詳しいご説明は洞窟に戻ってから致しますが下位魔は簡単に申しますと、魔力や知能が高くない魔物の総称です。

 人語を理解する程の知能はなく、魔力はあっても並程度ですが凶暴性の高い場合が多いので、魔物によっては従魔契約を行うにはリスクが大きい割に利点が少ないことがあるのです』

「マッドゴーレムは従魔に向かないタイプの魔物ってこと?」

『ゴーレム自体、種類があり大まかに分けますと自然型と人工型がおります。

 私同様、魔導生物である人工型のゴーレムはともかく、大地の魔力から自然発生したゴーレムは大抵が知能が低く、発生した場所によって魔力の高低差が大きくなりやすいです。また、縄張りに入ってきたものを襲う習性があります。

 あの個体も私たちが縄張りに立ち入ってしまったために襲おうとしているのではないかと思われます』

「それなら逃げて別の魔物を探しに行った方が良さそうだね」

『ええ、下手に攻撃して刺激したり、魔力を消耗するよりかは、あの魔物の様子を見ながら距離を取っていく方が比較的安全かと思います。

 しかし、エニカ様の聖水の跡地も気掛かりなので、魔物を探す前にある程度茂みからあの魔物を引き離し次第、早急に清めるように致しましょう』

「⋯うん、分かったよ」

 必要なことっていうのは分かるんだけど、やっぱ清めた方がいいのか⋯

 でも私たちの命や安全には代えられないから我慢だよ我慢!

 とりあえず元の世界のテレビ番組で見たクマと出会った時の逃げ方を思い出しながら、小さな土の塊みたいな魔物と向き合いながら、ゆっくりと後退りすることにした。

「ピッ?ピギャッ!ピギャァ!!」

 魔物の方も段々と私たちと距離が離れていくことに気付いたのか、大きな鳴き声を上げながらさらに必死になって追いかけてこようとしていた。

 でも移動の速さは私の方が速く、距離は良い感じに開いてきたんだけど⋯

「ピギャァ!ピギャァァ!!ピッ⋯ピィィィ⋯!!」

「ねぇコロ。あのさ⋯」

『絆されてはいけませんよエニカ様。あのようにエニカ様の優しさや慈愛に付け込もうとする卑しいタイプの魔物かもしれません』

「う⋯そう言われたらそうかもしれないけど⋯」

 少し遠目でも分かるぐらい、魔物の大きな一つ目から大粒の涙がボロボロ出てきて泣きながら地面に突っ伏す姿みたら、良心が痛んできて見てるこっちがちょっと辛くなってきたよ⋯

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