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第十九話 洞窟の近辺にて

 結論から言おう。

 従魔契約に応じてくれる魔物を探す前に用を足すことに決めた。正直限界の方が近い。

 思えばこの世界に来てからしばらく薄い喪服姿で、日の差さない洞窟内に長い時間いれば、身体が冷えてトイレに行きたくなるのは仕方がない、というかどうしようもないことだった。

 でも、コロに言わないと⋯言わないとだよねぇ⋯

 本当に短い付き合いではあるけど、コロのちょっと変態くさ⋯変わった部分があることを少しは分かっているつもりだ。

 私がトイレに行くなんて行ったら、100%中、120%の確率でついてくるに決まってる。

 ついてくること自体はまだいいと思う。小さくマスターさんもいる洞窟内でする訳にもいかないし、外でするにも魔物が現れる可能性は低くないから、ついてきてもらえるのは逆にありがたいし心強い。

 でもあのコロだ。100%中、200%の確率で私のトイレに興奮を覚えるんじゃないかと勘繰ってしまう。

 そもそも初めて会った時から私に対して妙なことを言うことが度々あるんだよね⋯マスターさんが『迷い人』として転移してしまった人のためにコロが造られた経緯があるから、主となる人へ強い気持ちを(いだ)くようにとかプログラミングでもされてるんだろうか?

 コロの特殊な(へき)っぽい部分については、とりあえず今はあんまり深く考えないようにしよう。

 万が一、用を足す前に限界に達してしまった時には下着や服の替えだって多くはないし、洗い場も見つけてないから、決断するなら早いに越したことはない、

 そう思い、意を消して左肩にもっちりと乗っているコロに声を掛けた。


――――――


「コロ、お待たせ。見張りしてくれてありがとう」

『いいえ。エニカ様をお待ちしている間、聖都セイクレドを流れる小川のようなせせらぎをお聞き出来ましたので心が洗われるような気持ちで幸福な時間を過ごせました』

「そうなんだ、でもねコロ。人はトイレする時にじっくり音を聞かれたり、感想を言われるのはとても恥ずかしく感じることだから聞こえても何も言わずに聞き流すようにしてね」

『そんな⋯!?エニカ様から流れ出る聖水の音を聞き流すなど私には出来ません!しかし恥じらうエニカ様も大変麗しくいらっしゃいます⋯!』

「次同じことしたら問答無用でコロのことを「スライムさん」って呼ぶようにするね」

『不愉快な思いをさせてしまい大変申し訳ございませんでした。以後は最大限気をつけて参りたいと思いますので、どうか他人行儀な呼び方だけはお許し下さい』

「約束忘れないでね」

 あの後コロにトイレ中の見張りをお願いして、用心しながら茂みで無事に用を足すことが出来た。

 尊厳は何とか保たれたけれど、今回コロに釘を刺しといたとはいえ、毎回こんなやり取りをコロとするかもしれないと思うとちょっと気が重い。

 せっかくコロが見張りしてくれたことに難癖つけるのは良くないと分かっているけど、いやに澄んだ瞳で丁寧にトイレした時の感想を言われるのはまあまあ生理的に嫌だった⋯

 まぁそれは一旦置いとくとして、実際トイレしてみて思ったのが、どこから魔物が来るか分からない状態でコロだけに見張りを頼み続けるのは正直不安があるということだった。

 今回は幸運にも魔物に出くわすことなく無事に用を足せたけど、万が一のことがあれば私もコロも戦闘力がほぼないに等しいから、戦力になる子を早めに探した方が良さそうだと思った。

 ⋯コロはあんまり意識してないかもだけど、コロ一人だけだと今は良くても段々と負担がかかったり、無理をしそうなのも気になるしね。

 よしっ!気を取り直して従魔契約してくれる魔物を探そう!!

「コロ、とりあえずはこの辺りを見て⋯」

『お待ち下さいエニカ様!この場を離れる前に大切なことがあります!』

「え?大切なこと?」

 呼び止めるコロの声は真剣そのもので思わず息を呑む。何だろう⋯

『エニカ様が排尿した場所を教え⋯あ、あ、エニカ様!どうか最後までお話をお聞き下さい!

 本当に大事なことなのです!!無言で私を肩から下ろさないで下さい〜〜〜!!』


――――――


「なるほど⋯魔法とか魔導具で清めたりしてトイレした後の痕跡を消しとかないと、魔物によっては臭いを辿って襲ってくることがあるんだね」

『そうなのです。この辺りの森は豊かなため多種多様な種類の魔物がおります。念の為、痕跡を消してからこの場を離れた方が良いと判断致しました。

 私たちのいた洞窟からそう遠くない場所でもありますので、魔物が近寄る可能性は一つでも少なくした方がよろしいかと思われます』

「そっか、コロはそこまで考えてくれていたんだ⋯さっきは誤解してごめんね。

 てっきり私のトイレした場所で臭いを嗅いだり寝転がったりとかするんじゃないかと思っちゃってさ」

『⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯そのようなことは致しませんのでご安心下さい』

 だいぶ溜めてから言ったね。私が言わなければやる気があったの?その言葉信じていいんだよね?

 コロに対してちょっと疑心暗鬼になっていた時だった。

 ガサガサッ

 私が用を足した茂みから音がしたのは。

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