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第百三話 冒険者ギルドにて

 罪人奴隷の斡旋所で良い人材が見つからず、その帰り道で再びコロからの提案を受けて、冒険者ギルドへ足を運ぶことになった。

 今の時間は大体お昼頃。ギルドも日中は常に人が多くて賑わっている印象だけど、人によっては昼休憩をしたり、お昼ご飯を食べたりしているからか朝と比べればマシな感じがする。だけど⋯

(なんだろ⋯他の冒険者の視線がいつもより気になるような⋯)

(『⋯あのような不躾な目でエニカ様を見るとは不愉快でしかありませんね。目を潰したいです。いえ、潰します』)

「⋯エニカ姉様、気を付けて。周りの奴ら、ボク逹をジロジロ見てきて嫌な感じがするよ」

「⋯⋯⋯」

 コロ達も周囲の視線が私達に集まっていることを気付いていて、コロは物騒なことを霊属性の魔法を使って言い放ち、ヒサメも私に近づいて小声で忠告してくれた。

 ソイルは無言だけど、周囲を警戒しながらモルモットフォルムで歩いている。

 コロを落ち着かせるのと、周りの人の目を潰そうとしちゃダメとの気持ちを込めて左耳に触れながら、受付の方へ向かおうとした時、受付をしていたデュランタさんが私達に気付いた。

「あ、デュランタさん、こんにち⋯」

「エニカさん!お越しを心待ちにしておりました!

 例の盗賊団の話⋯お伺いしました。本当に大変でしたね。

 ですがお越しになって早々で申し訳ありませんが、今回の盗賊団討伐のことで大事なお話があります。

 私と共にマスター室までご同行して頂いてよろしいでしょうか?勿論、従魔の皆さんもご一緒に。」

「え?あ、はい」

(『いきなりエニカ様を呼びつけるとは無礼にも程がありますね処します』)

「ピギィィィ⋯!」

「⋯⋯⋯は?エニカ姉様をどうするつもりだい?あとその手を早く離すんだよ」

「あら困りましたわ。ギルドマスターからの指示なのですが⋯」

 受付のカウンターから高速で私達の前に来て、いつもの笑顔でいつの間にか私の手をギュッと握られながら、デュランタさんからのお願い(という名のほぼ強制連行)されることになったけれど、この時点で私に拒否権はないと悟った。

 ひとまずコロは殺意を、ソイルは威嚇を、ヒサメは冷気を出すのを止めさせないとだねこりゃ(現実逃避)。


――――――


 その後、みんなを落ち着かせてからデュランタさんについていき(その間何故かずっとデュランタさんから手を握られたままだった)、とある部屋の扉の前でデュランタさんがノックした。

「失礼致します、ギルドマスター。デュランタです。エニカさんをご案内致しました」

「入れ」

 中から低く落ち着いた男性の声が聞こえる。 ここがギルドマスターの部屋みたいだ。

「失礼致します」

「失礼致します⋯」

 被っていたフードを取り、デュランタさんに(なら)いながら部屋に入れば、そこには体格の良い褐色肌の男性が一人、重厚感のある質の良さそうなソファーに座っていた。

 見た目は五、六十代だけど渋く精悍な顔立ちで、頭の髪部分がデュランタさんのように葉っぱで出来てい

るのが特徴的な人だ。ちょっと厳つい感じで怖いな⋯

「ご苦労、デュランタ。だが、此度の件はお前さんにも話を聞いてもらいたいが構わないか?」

 え?デュランタさんにも話を聞いて貰うの?

 私としてはコロ達と一緒に、ギルドで出来た知り合いにも居てもらえるのは心強くはあるけど⋯

「承知致しました」

 デュランタさんは一つお辞儀をすると、ギルドマスター側のソファーの後ろ側へ向かい、座らずに綺麗な立ち姿のまま控えた。

 ⋯冒険者ギルドの職員さんであるデュランタさんが立っているなら、私も冒険者として所属しているからには立っていた方が良いかな⋯?

(『エニカ様、相手の立場が上の場合、相手から椅子に掛けるよう声がかかるまではその場で待機するようにお願い致します』)

 コロからの助言、本当にありがたい!

 けど、後でエターナレンのマナーについても教えて貰わないとだね。

 こういう時、本当に困るのをめちゃくちゃ実感したよ。

「⋯済まないな。突然呼び出したから驚いただろう。

 そこに掛けるといい。楽にして構わんぞ。ヒト型の従魔も掛けさせるといい」

「は、はい⋯!失礼致します⋯ヒサメ、隣においで。ソイルは⋯私の膝の上に来ようか」

 ギルドマスターに促されてソファーに座る。

 冒険者ギルドに登録して数日も経ってない内に、ギルドマスター⋯このギルド内のトップに会うことになって緊張しながら相手の言葉を待った。

「そう固くならんでも良いが⋯仕方がないか。

 挨拶が遅くなったな。ワシの名はリヴォーク。ファレスタの冒険者ギルドのギルドマスターを務める者だ。

 エニカ、お前さんのことはデュランタ達や此度の盗賊団討伐に助力した門番達から話を聞いている。

 まずは長年ファレスタの街を荒らしていた盗賊団「影の手」の討伐、ご苦労であった。ワシからも礼を言わせてほしい。ありがとう」

 そう言って、ギルドマスターは私達に頭を下げた。

「え、あ、あの、こちらこそありがとうございますっ⋯!

 ですが、実際討伐したのは私の従魔達やローボルさんとヒュースさん⋯門番さん達のお陰です。私自身は何も⋯」

「いや、謙遜はしなくていい。

 門番達が駆けつけた時にはお前さん達だけで盗賊団の半数以上を討伐したり、手傷を負わせていたことは聞いている。

 盗賊団「影の手」は希少な魔物や植物の乱獲や強盗、果ては目をつけた人種の誘拐をしては闇市での売買を繰り返す悪質な連中でな⋯

 しかも酷く用心深く少数精鋭で行動しておったから、冒険者逹に依頼を出しても一向に尻尾を掴ませないでいたから困っていたんだ」

「そうだったんですね⋯」

 ギルドマスターから頭を下げられて焦ってあたふたしながらも答えれば、ギルドマスターは気にすることなく話を続けた。

 けど、盗賊団の話で深い溜め息をついたところを見ると、「影の手」には本当に苦労させられていた様子が伺えた。

「偶然とは言え、お前さん達が盗賊団の討伐と生き残り共の逮捕に貢献してくれたことは本当にありがたく思っている。だが、今回お前さん達を呼んだのは礼のためだけではない。まずは先に謝罪をすべきであったな⋯」

 そう切り出したギルドマスターの話はこうだ。

 元々盗賊団「影の手」はこの近辺の街では指名手配されていて、各街の冒険者ギルドでは「影の手」の討伐をシルバーランクの依頼として受けた冒険者や冒険者チームがいた。

 けれど、成り行きとは言え登録したてのアイアンランクの冒険者である私達が討伐したことは、依頼を受けて調査や探索をしていたシルバーランクの冒険者達からすれば実績や評判などの点から面子が立たず、逆に活躍したことによって悪目立ちしてしまう可能性がある。

 そのため、表向きは門番としての実力や信頼があるローボルさんとヒュースさんが討伐したことになっているとのこと。

 また、本来であれば冒険者ギルドの決まり上、基本は自分のランクと同等か一つ上の依頼のみ受けられることを踏まえると、謝礼金は出るけれど冒険者として依頼達成の成果としての反映は出来ないという話であった。

 私からすればあんまり目立ちたくないと思ってるから、今回の件がローボルさん達の手柄になることも、成果として反映されないことも構わないのだけど⋯

「なんだいそれ。ギルドの決まりもだけど、シルバーランクの連中が自分達の実力不足を認めずにボク逹を目の敵にする可能性があるから、表には正式に公表しないってことなんだろう?

 その割には訳知り顔でボク達を見てきた連中も多いように思えたけどね。その方策、意味が無さそうだよ」

「ヒサメッ⋯!?」

 ギルドマスターの話を聞き終わったヒサメが思ったことをズバッと容赦なく言い放つ。

 その発言の危うさにジワッと冷や汗が流れ出た。

「いや、その従魔の言う通りだ。

 この街に来て数日も経たない、しかも冒険者として登録したばかりのお前さん達が、長年捕まえることさえ出来ずにいた盗賊団と対峙し討伐した事実は、関係者間ですぐに箝口令を敷いている。

 だが、倒れたエニカを狼獣人の門番が運んだところや、門番達からの報告で捕らえられた生き残りを搬送しているところを見掛けた奴らがいたらしくてな。 

 お前さん達が討伐したという推測まではいかずとも、関係がありそうだという噂が広まっているようだ。

 ⋯正当な評価をしてやれない上に、しばらくお前さん達の周囲がざわつくことになりそうなのが申し訳無くてな⋯」

 パッと見は厳つく怖そうな人だけど、登録して数日も経っていない低いランクの冒険者である私達に対して、事情をきちんと話した上でお礼や謝罪をしてくれることから誠実な人柄であることが伝わった。

「また、少々言いにくいことではあるが⋯エニカやそのヒト型の従魔⋯ヒサメであったな。膝の上に乗っているのはゴーレムだと思うが、お前さん達の見た目や組み合わせは登録した当初から目立っている。

 特にエニカ。常にフードを被っているから多少マシだが、獣人種の中でもお前さんは特に人間種に限りなく近い見た目であるから、今回盗賊団と対峙したのもその珍しさから狙われたのでは無いかと考えている。

 ⋯しばらくは更に目立ってしまう可能性があるだろうな」

「あー⋯そう、かもしれません」

 ファレスタに初めてきた時のローボルさんのちょっと驚いていた様子とか、公衆浴場に行った時からなんとなく感じていたけど、コロの擬態があってもほぼ人間な容姿はこの世界では目立ちやすいことを改めて実感した。

 もしかしたら、しばらく冒険者として活動する時は良くも悪くも必要以上の注目を受けるかもしれない。

 今受けている依頼があるからそれは本当に困るな、と考えていた時だ。

「今回の一件でしばらくはお前さん達の依頼の受注や活動に支障が出る可能性がある。

 デュランタから受けている最中の依頼があると聞いておるから、しばらくは依頼の期限を多少延ばしたり、こちらで出来る配慮は行おうと思っているが⋯相談次第で可能な限り対応しよう」

「!? 本当ですか⋯!?」

 ギルドマスターの発言に思わず声を上擦らせて答えてしまった。

 もしかしたら冒険者を雇うことの相談がこのまま出来るかも⋯!

(『エニカ様、今が好機であります!

 もしよろしければギルドマスターに尋ねて貰いたいことがあります!』)

 今まで静かに話を聞いていたコロの声が頭に響く。   

 その内容に思わず驚いて声が出そうなったけど、こっそり深呼吸をしてなるべく気持ちを落ち着かせてから、ギルドマスターに話してみることにした。

「ご配慮頂き本当にありがとうございます、ギルドマスター。お言葉に甘えさせて頂いて一つご相談がございます。

 盗賊団の一件がありますので、しばらくは念のために依頼の最中などの身辺警護で冒険者を雇えないか考えておりますが⋯




 雇うのに今、このギルドに冒険者の罪人奴隷はおりますでしょうか?」


 私の相談に、ギルドマスターは眉間にしわを寄せ、デュランタさんは驚いたように目を見開かせた。

 このお二人の反応からして⋯正直コロの言ったことをそのまま言っちゃったことをちょっと後悔してる!!!

 これ、本当に言っていいことだったのかなコロさんっ!!!???

次回更新日は都合により4/26の予定です。→4/27の更新予定に変更となります(4/25改稿)。

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