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第百二話 路地裏にて

「うーん⋯⋯」

(『斡旋所では護衛に出来るような罪人奴隷が見つかりませんでしたねぇ⋯⋯』) 

 コロからの提案で外出やギルドの依頼を受ける時に護衛となってくれそうな人材探しのため、罪人奴隷の斡旋所に足を運んでみたけど⋯⋯結果はコロの言葉通り。

 中々良さそうな人材を見つけることが出来なかった。

 私達が罪人奴隷を雇う(購入って言い方はあんまりだよねと思って雇用って言い方にしてみた)にあたって、最低限決めている条件はと言うと、


・戦闘が出来る。

・性犯罪者ではない。

・斡旋所内で問題を起こしていない。


 の三点だ。

 護衛目的で雇うから戦闘が出来ることは第一の条件にしている。

 二つ目の性犯罪者ではない、っていうのは一つ目の条件を決めた直後、提案者のコロが即座に決めたものだ。

 コロ曰く、『エニカ様を一瞬でも不埒な目で見てくるだけでなく汚い手で触れようとする輩なぞに、エニカ様の護衛という大役を務めさせる訳には参りませんよっ!!!』と力強く言ってたのが印象的だった。

 実際対象とされるかどうかは別として、私としては安全面、精神衛生面など諸々のことを踏まえても勿論賛成だし、ソイルとヒサメも異論なく即頷いてくれたのは本当にありがたく嬉しかった。

 三つ目の斡旋所内で問題を起こしていない、という条件を考えたのは意外にもヒサメだった。

 ヒサメ曰く、「エニカ姉様の護衛ってことは正直不本意だけどしばらくボク逹と一緒に過ごすってことだろ?コロ君の話を聞いていたら、その斡旋所とやらに罪人奴隷が集められているみたいだから、集団で過ごす場所で問題起こすような奴を護衛にしても、また別の問題を起こすような気がするんだよね」とのこと。

 ヒサメの意見は最もだったから、そこも満場一致で最低限の条件の一つとして決まった。

 それ以降も幾つか意見は出たけど、最終的にはその三点を条件にして、相手を見て判断しようという結果に落ち着いた。

 色々条件を言い出したら切りが無い上に、高望みになって見つからなさそうだからね。

 斡旋所でその三つの条件を伝えると、条件に当てはまる罪人はそこそこいるにはいた。

 羊皮紙に書かれた罪人奴隷の情報を確認したり、職員さんからの勧めで何人か実際に会ってみたりもしたけれど⋯

 

(『この罪人奴隷は初犯ですが確か酒に酔い潰れ、全裸で街中を彷徨(さまよ)った挙げ句、よその家に不法侵入して捕まった経緯がある者でしたね駄目です。

 酒さえ飲ませなければ良いというものではありませんよ。万が一、飲酒して全裸でそこら辺をふらつかれたり、エニカ様に襲いかかることがあろうものなら酒を掛けて燃やすしかありません』)

「酒飲んで自滅しそうだね。それでエニカ姉様に迷惑かけるなら酒ごとコイツを凍らすしか止める方法は無さそうだよ」

「ピギャギャ」

(『「この罪人奴隷は賭け事による借金を踏み倒そうとした矢先に捕まった者ですね駄目です。

 借金の総額が比較的少額であったため、軽犯罪と見なされたようですが賭け事狂いは何を担保に賭けをしようとするか分かったものではありません。

 万が一、エニカ様を担保にしようものならば、身体をバラバラにして部分売りします』)

「借金を負ったってことは賭け事に弱いんだろう?なのに自分で背負った責任も取れないなんて情けなくないんだろうか」

「ピギャギャ」 


 と言った感じで、コロからの容赦無い酷評コメント、ヒサメからの辛口正論斬り、ソイルからの「コイツ無いわ」的態度を取り続けたことで会う罪人奴隷全員無しになった。

 うん、私としては正直ホッとしたけど、罪人奴隷って雇うってなったら想像以上にハードル高いね。

 特にコロのお眼鏡に叶うような罪人奴隷なんていないんじゃないかって思ったよ。

 担当してくれた職員さんは紹介した罪人奴隷を次々と断っていく私達に対して、嫌な表情一つすることなく終始丁寧な態度で接して貰った。

 むしろ帰り際に職員さんから、

「罪人奴隷は購入する主人側との相性があります(ゆえ)、この(たび)は相性の合う者が見つからなかったのは残念ではありますが致し方ありません。

 一度は様々な事情で罪人奴隷として身を落とすことになった彼らですが、購入先の主人との出会いは彼らが更生する道へと歩めるきっかけとなり得ます。

 良き主人との出会いによって、一人でも多くの罪人奴隷が主人の助けとなり己自身と犯した罪を見つめ直し、二度と同様の過ちを犯さず日の当たる場所へと戻れるよう我々は願っております。

 もしも彼らの助けが必要と思われました時、再びお越し下さい。いつでもお待ちしております」

 と言って貰えて、職員さんの対応に感動しつつ、「エターナレンにも更生とか社会復帰の考え方があるんだ⋯」って思った。

 その直後、職員さんが「まあ、どうしても罪人奴隷の態度が目に余ると感じられた時には、酷使したり使い潰して構いませんよ。主人側による罪人奴隷の処分も認められておりますので。」とさっきまでと百八十度違う台詞を言われた時には、「やっぱシビアだし怖いよエターナレン」って思い直すことになったのは余談だ。

 それはともかく、今は斡旋所を後にして周囲に人のいない路地に入って小休憩していた。

「これからどうするのかい?

 実際会ってみたけど罪人奴隷はどれもエニカ姉様には相応しくない奴らばかりだったから、罪人奴隷を買う案は正直言って賛成とは思えなくなってきているんだ」

「ピギャピギャッ」

 ヒサメの言葉にソイルもうんうんと頷く。

 コロや斡旋所の職員さんの話を通じて、罪人奴隷という制度があることを知ったのは勉強や参考になったけど、雇うことは再び抵抗感が出てきたのが正直なところだ。

『⋯想定の範囲内とは言え、エニカ様の護衛に適するような罪人奴隷を見つけることはやはり困難でしたね⋯皆さんを振り回して申し訳ありません⋯』

 イヤーマフ姿のままコロが小声で話したけど、その声は少し落ち込んでいるように聞こえた。

「ううん、そんなことは気にしてないよ。

 また別の方法を考えればいいし、むしろコロが色々思いついてくれるから本当に助かっているよ」

『エニカ様⋯!!』

「罪人奴隷を買うことはともかくとして、コロ君の言う戦闘が出来る人手は実際必要な訳だから、探して見つからなかったことを振り回されたとは思ってないけれど⋯

 あとは他の冒険者や傭兵を一時的に雇うぐらいしか思いつけないよ」

「ピギャァ⋯」

 ヒサメの言葉にソイルが少し困ったように頷く。

「確かに⋯魔石集めの期限も気になるし、その期限を過ぎちゃった方が大変だと思うから、残りの期間だけでも冒険者とか雇うようにする?お金はあるしさ。

 冒険者が冒険者を雇えるのかは分からないけど。」

 そう、実を言うと盗賊の討伐代として役場から謝礼金を貰うことが出来たのだ。

 頂いた謝礼金は金貨20枚。そのことは一昨日の時点でマーサさんとクリストフさんに伝言として役場の人達から話があり、今朝役場に受け取りに行った足で斡旋所に向かっていた。

 マーサさんから話を聞いた時にはめちゃくちゃびっくりしたし、今朝も現実感が無いあまり本当に貰っていいか三回ぐらい聞き直してしまったところ、役場の人達からはローボルさんとヒュースさんにも渡されているから正当な報酬になる、と温かい目で見られながら受け取ることになった。

『冒険者⋯もし運が良ければ⋯

 エニカ姉様、ソイル、ヒサメ。もしかしたら、冒険者ギルドに我々の探す人材が見つかるかもしれません!行ってみましょう!』

「え?」「ピギャ?」「ん?」

 え?ほんとどうしたのコロ?冒険者って冒険者を雇ってよさそうな感じ?

次回更新日は4/22の予定です。

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