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第九十八話 帰り道にて4

「ローボルさん⋯ヒュースさん⋯どうしてここに⋯?」

 目の前の光景に驚きのあまり、思わず疑問が口から漏れる。

「説明は後だ。念の為の確認だがお前達はこの連中に襲われて応戦していた、という状況で間違いはないか?」

「は⋯」

「そうだ!依頼の帰りにコイツらに襲われたんだ!!頼むからエニカ姉様だけでも助けて欲しい!!」

「ヒサメ⋯!?」

 返事しようとした矢先にヒサメが懇願するように叫んだ。

「依頼⋯ギルドに登録()みの冒険者と、主のために自分を差し置いて救助要請する会話可能な従魔⋯俺らが助けに入るには十分すぎる理由だな」

「無論だ。行くぞ」

「へいへいっと。ってことで、俺達が来たから安心してくれよな。嬢ちゃん達よぉ」

「何だ!?何が起こってやがる!!?レクレス!!答えろ!!!」

 急に目が見えないって騒ぎ始めていたから、突然現れたローボルさんとヒュースさんのことも見えてないのだろう。

 ローボルさんがあっという間に倒した男の名前っぽいのを呼びながら、リーダー格の男が吠える。

「チッ⋯!レクレスの奴使えねぇな!!

 もういい!!誰がいようと全員まとめて殺してやるよっ!!!ガドル!!!」 

「ぐぉ、ぐぉぉぉ⋯」

「ギィッ!?ギギィッ!!」

 リーダー格の男が命令する声に黒焦げになりかけた巨人が反応した瞬間、再びソイルが巨人の両足を流砂で絡め取った。

「ぐぉ⋯?ぐぉ、ぐぉぉぉ⋯!」

 今度は上手く巨人の足が流砂に嵌まり込んだみたいで、巨人は身動きが取れなくなっていた。

「ギッ!?⋯ピギャッ!!」

 ヒサメより余力はあったけど石化や大きな流砂を作り出す魔法を繰り返し使っていたからか、ウサギより一回り大きいサイズぐらいのモルモットフォルムにソイルは戻ってしまっていた。

「ありがとよ、ゴーレム。足止めの手間が省けたぜ。あとは俺に任せてくれ」

「ピギャッ⋯!」

 ソイルの前にヒュースさんがゆったりと出る。

 ヒュースさんの前には再び這い上がろうとして藻掻く巨人がいて、ヒュースさんは静かにその巨人を見下ろしていた。

「んー⋯コイツら指名手配されている盗賊共みてぇだなぁ⋯ここまでボロボロになっちまったら生かしとく方が難しいんだが⋯

 まぁ捕まっても待つのは刑場ぐれぇだろうし、気絶させた奴を一人捕まえてっし、ローボルの奴が首魁みてぇなのを生かしとくだろ多分。

 運が良けりゃコイツも生きて連れ帰ることぐれぇ出来るのを願って⋯フンッ!」

 色々考えながら一人言を呟いていたヒュースさんだったけど、最終的にローボルさんへの丸投げと運任せすることに決めたみたいだ。

 腰に下げていたロングソードを鞘に入ったまま手に持つと、そのまま巨人の頭目掛けて飛び降り、おもいきり振りかぶった。

「ぐぉぉ⋯ぐぉっ!?」

 ヒュースさんは魔法を使うことなく、鞘に入った剣を鈍器代わりにして巨人を一撃で仕留めた。

 巨人は気を失った(と言えるかどうかは不明)のか、だらんと落ちた両腕を流砂に沈めていた。

「ピギャッ!」

 巨人の動きが止まったことを見計らって、ソイルが流砂を止めた。

 そのお陰で巨人は流砂によって沈みきることなく、地面に拘束することが出来た。

「この巨人と気絶させた奴は俺に任せて後は頼んだぞ、ローボル」

「何が後は頼んだぞ、だ。巨人を倒したのならそのままヒュースが首魁を捕獲した方が早いだろうが。

 ⋯すまないが少々の間、守りが手薄になる。従魔と共にヒュースのところまで向かえるか?」

「はい!ヒサメ、一緒にソイルとヒューズさんがいるところへ行こう」

「うん⋯でもごめん⋯姉様を抱き上げることは⋯」

「私はみんなが傍にいるから大丈夫。

 今は腕を怪我してるんだからヒサメの身体の方を大事にしたいよ」

「⋯分かった」

 力加減をしてもらってもなお固く握られたヒサメの手を引いて、ソイルとヒューズさんのいる動かなくなった巨人のところ(⋯生きてるのかな)へ向かった。

「さて⋯後は視力を失った男一人か⋯早急に決着を付けるとしよう」

 そう呟くと、ローボルさんは今も喚き散らす男へ素早くかつ静かに近付き、そして⋯

「おい!ガドル!全員殺したのか!?声が聞こえねぇぞ!!先にくたばったんじゃねぇだろうな⋯ガッ!?」

「仲間は全員倒されているぞ。いつまでも見苦しく喚くな」

 ヒュースさん同様、剣を抜くことなく鞘に入ったまま峰打ちのように一撃で男を沈めた。

 あれだけ私達が苦戦した盗賊達をローボルさんとヒュースさんは魔法を使うことなく、あっという間に倒したのだった。


――――――


「今日はお二人とも非番で森での鍛錬の最中だったんですね」

 盗賊との戦闘後、気絶した盗賊の拘束や倒した盗賊の簡単な確認(生死や人数など)を全員で行ったり、ローボルさんとヒュースさんに全力で感謝を伝えたりして一段落した辺りで、お二人が森にいた理由を尋ねてみた。

「っつっても俺はローボルの奴に無理やり連れ出されただけだけどな。

 俺のカミさんがローボルを気に入っちまってるから、コイツが鍛錬っつって迎えに来ると貴重な休みでもカミさんが喜んで俺を突き出すんだよなぁ⋯」

「ハーバリーさんからは「ぐうたらな旦那を引き締めてくれるからありがたい」って好評だぞ」

「お前とカミさんは良いかもしれねぇが、たまの休みぐらいゆっくりさせてもらいたいもんだぜ」

「だがお前が付き合ってくれたことでエニカ達の救助に当たることが出来た。感謝するぞ、ヒュース」

「え⋯素直なローボルって何か怖ぇな⋯」

「何?今まで半日だった鍛錬を朝から日が暮れるまで行いたいだと?ヒュースの姿勢を俺も見習わなければな」

「言ってねぇ!俺は微塵もそんなことを言ってねぇからな!!記憶を捏造すんじゃねぇぞ!!」

「ふふっ⋯あ、ごめんなさい。つい笑っちゃって⋯」

 私が思わず声を出すと、二人とも何処か柔らかい表情になった。

「少しは落ち着いたみてぇだな。嬢ちゃん」

「無理もない。ファレスタへ訪れて間もないのに、盗賊討伐を成し得たのだからな」

「盗賊討伐⋯?」

 見た感じからして盗賊とか山賊とかの賊っぽいとは思ってたけど、本当にその通りだったんだ。

「ああ。この辺りの希少な魔物や薬草など乱獲して売り捌いたり、最悪人攫いをして奴隷商人等に売りつける盗賊集団がいることが分かっていたが、中々尻尾が掴めなくてな」

「指名手配されてっから街から賞金が出ると思うぞ」

「指名手配⋯そんな怖い人達と戦ったなんて⋯」

「だがエニカと従魔達が持ち堪えたことで、俺達も僅かだか討伐に助力することが出来た。よく、頑張ったな」

 少しぎこちなく、だけど優しい手つきでローボルさんが撫でてくれた。

「ローボルさん⋯」

「ねぇ、そろそろ街へ戻らないかい?

 コイツらもいつ目覚めるか分からないしさ。早く突き出してやりたいんだよね」

「ピギャッ」

 私とローボルさんの間にヒサメとソイルが割って入ってきた。

 特にヒサメはローボルさんとヒュースさんの前で話してから、基本人前では控えていた会話をお二人の前で話しても問題ないと判断したみたいだ。

(『⋯そうですね。いくら事情があり、門番が同行していたとしても門限には遅れない方がよろしいかと思います』)

 今まで静かだったコロからも助言が聞こえてきた。

 そうだね。盗賊のこともどうにかしないとだろうから戻ら、ない、と⋯

「ピギャッ!?」「エニカ姉様!?」

「エニカ!?」「嬢ちゃん!?」


(『エニカ様⋯!?』)


 みんなの声が遠くに聞こえるような錯覚を覚えながら、私の意識は徐々に白く霞んでいった。

次回更新日は4/10予定です。

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