第九十六話 帰り道にて2
百話突入致しました!これからもよろしくお願い致します!
「このアマっ⋯!!おい、とっととコイツらを捕まえろっ!!!多少傷物にしても構わん!!!」
「おうっ!!」
「大人しくしてりゃあ悪いようにしなかったのによ!!」
盗賊のリーダー格が苛立ったように声を上げると、他の盗賊たちも武器を構えて色めき立つ。
(『エニカ様、貴女という方は⋯戦闘の指示と周囲の警戒及び状況把握を私が担います!!エニカ様は魔法の行使をお願い致します!!』)
コロは短く溜め息をつくように言葉を漏らすと、次の瞬間にはサポート態勢へと切り替えてくれた。
「危ないことをしてほしくないけれど⋯エニカ姉様がやる気なら仕方ないねっ!!」
そう言いつつも目が爛々と光り、冷気を纏い始めたヒサメ。
「グルルル⋯ピギャッ!!」
ソイルは蹴られた瞬間からすぐに受け身を取って立ち直し、周囲を威嚇していた。
「ソイル⋯!」
(『敵の前で余所見は厳禁です!!ソイルとヒサメはそれぞれ任せて構いません!!今は目の前の賊に集中して下さい!!』)
すぐに立ち上がったソイルの姿を見てホッとしたのも束の間、コロの叱咤が飛ぶ。
「ごめん⋯でもお願い!みんな私に力を貸してほしい!!」
(『承知致しました!!』)
「任せてよ!!」
「ピギャアッ!!」
「威勢ばかり良いヤツらだな⋯これでも喰らいなっ!!」
五人いる盗賊の内、一人がテニスボール大の火の球を、もう一人が火の球と同じぐらいの大きさの岩を撃ってきた。
「エニカ姉様を厭らしい目で見るだけじゃ飽き足らず、魔法を向けてくるなんて⋯命が惜しくないみたいだね」
「ピギャァ⋯!」
飛んでくる火の球をヒサメの氷壁が、岩石をソイルの土壁が防ぐ。
「君こそこれを喰らえばいいよ!」
「この程度⋯ギッ!」
氷壁の頂上まで登ったヒサメが鋭い氷柱を幾つも作り出し、相手におもいきり投げつける。
初めは火の球で応戦していたけど、矢継ぎ早に氷柱を投げつけるヒサメの速度に追いつけず、投げつけた氷柱の一つが胸に刺さり、盗賊の一人は仰向けに倒れ込んだ。
「ピギャアッ!!」
「何だこれ!?抜けねぇ!?クソッ!!」
もう一人の盗賊はソイルが作り出した砂地獄に嵌まり込み、身動きが取れなくなっていた。
「チッ⋯ここで手が足りなくなっても面倒だ。引きずりあげろ」
「あいよっ!」
リーダー格の言葉に答えた小人の盗賊が地面に触れると、地面から大きな蔦が生えてきて砂地獄に嵌っていた盗賊を引きずり上げた。
「ピギャッ⋯!」
「ソイル君焦ったら駄目だ!一人一人確実に仕留めていこう!!」
「ピギャッ!!」
(『今、一人仕留め損ねたのは痛手ですが盗賊の内、地属性と命属性の使い手が判明しただけでも収穫です!問題は⋯』)
リーダー格の獣人と、戦闘が始まってから微動だにしない巨人が控えていることだ。
(『エニカ様、先程エニカ様が放った一手は相手が「エニカ様は反撃をしない」という油断があって成立したものです。
今は賊の方も慎重になってこちらの出方を見ている様子。私達も相手の出方を見て⋯』)
そうコロが言いかけた時だ。
「なぁガドル」
リーダー格の獣人が口を開いた。
「あの近人体、跳ねっ返りみてぇだから普通に金持ちに売っ払うより、お前との見せモンに使った方が面白そうだ。捕まえたら好きにしていいぞ」
「は?」
(『は?』)
「⋯分かった。オレ、の、好き、に、使う」
思いつきのふざけた提案と共に巨人は動き出した。
「コロ⋯」
(『はい、エニカ様。何なりとお申し付け下さい』)
「アイツら⋯全滅させよう」
(『エニカ様の仰せのままに。』)
この時の私とコロの怒りのボルテージは最高潮だったと思う。
――――――
(『エニカ様、勝負は一瞬です。
長期戦はエニカ様の心身と⋯厳しいことを申し上げますと能力、戦闘経験の数からして現実的ではないかと思われます。⋯覚悟はよろしいでしょうか』)
勿論、という意味を込めて右耳に触れる。
「この、ちっせぇ、女、めんこい、から、手足、もいで、遊び、道具、に、してやるか」
恐ろしいことを楽しげに宣いながら、巨人は片手に巨大な岩を形作っていた。
あれを私にぶつける気なのだと思うと恐ろしさが込み上げそうになる。だけど⋯
「くっ⋯!」
「流石の氷魔法も岩魔法の前じゃ形無しだなっ!!」
氷柱の攻撃を岩で塞がれてしまっているヒサメ。
「ピッ⋯ギャッ!」
「いつまで逃げられるかねぇ〜」
大きな蔦に襲われそうになりながらも逃げ続けるソイル。
二人とも何とか戦局を凌いでいる状態だ。
元々が私から盗賊に攻撃してしまったことで戦うことになってしまったから、これ以上戦いを長引かせたり、私が戦闘不能にならないようにしないといけないと思っている。
そのためにも敵への恐怖や不安を力に変えて、次の行動へと移すことにした。
(『今です!!岩魔法を完成させる直前が絶好の機会です!!掛けて下さい!!』)
「行くよ!!それっ!!!」
「んん〜?、なに、を、する気、ぶわっ!?」
コロの号令を合図に、とある液体に変化させた大きな水玉を巨人に投げつけた。
「この、程度じゃ、おれ、倒せねぇ⋯ん?」
全身がずぶ濡れた巨人に何を掛けたか気付かれたみたい。けれどそれはもう遅い。
「私は貴方の遊び道具なんてお断りだよ」
「何を、ギ、ギャアアアアアッ!!!」
私の言葉と同時に巨人が火達磨になった。
私が投げつけた水玉は正確に言うと水を油に変質させた油玉。
大量の油でずぶ濡れたところをコロの火魔法で火を付けたのだ。
巨人は巨岩を持つ余裕もなく、火を消そうと転げ回っている。
⋯とどめを刺すなら今がチャンスだろう。
「エニカ姉様!大丈夫かい!?」
「ピギャッ!」
「!? ヒサメ!!ソイル!!」
二人の声が聞こえて振り向けばヒサメとソイルの姿が見えた。
二人とも少しボロボロになって汚れていたけど、目立った怪我は無さそうなことにひとまず安心した。
二人の背後には凍りついた獣人と、石化した小人の盗賊がそれぞれ立っていた。
「その汚物⋯何とか生きているみたいだね。ボクがとどめを刺そうか?」
「ピギャピギャ!」
のたうち回る巨人を冷めた目で見るヒサメとソイルが声を掛けてくれた。
「二人とも気に掛けてくれてありがとう⋯でも決めた以上は私がやるよ」
(『エニカ様⋯』)
手が震えながらも巨人目掛けて手をかざした時だ。
(『!? エニカ様賊の首魁が見当たりません!!警戒を⋯』)
「おっと、それ以上動くなよ。この女を傷つけられたくなけりゃあな」
かざしていた右手首を男の強い力で握り込まれた。
次回更新日は4/4の予定です。




