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異世界旅行は命がけですがよろしいですか?―バウガルドの酒場冒険譚  作者: 永礼 経


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第43話 エピローグ―命を懸ける価値

 サービス開始以来、『バウガルドの酒場』は世の中に物議と旋風を巻き起こした。


 生きたまま異次元世界へと旅行ができ、そちらの経験は戻ってきたときにしっかりと自分の世界の体にフィードバックされる。

 

 言い方を変えれば、寿命が延びているのと同じようなことだ。


 この事実が知れ渡るまでは、ただの仮想現実体験アドヴェンチャーゲームのようにしか見られていなかったし、運営を担当している「ダイシイ」も広く告知してはいなかった。


 しかし、その体験者たちのSNS上での体験談が徐々に広まるにつれ、やはり大きな社会問題となっていったのだ。


「異次元の世界に転移してそこで死んだらどうするんだ?」

「それは事故で済まされるのか?」

「運営側の責任はどう考える?」

「そもそも旅行だとした場合、旅先で起こることはすべて自己責任ではないか」

「寿命が延びるなら、みんなそこに行くでしょう」

「寿命が延びているわけじゃない。向こうの世界の時間の進み方が遅いだけだ」

「健康上の問題はないのか?」

「医学的な検証によりますと、異世界に行って戻ってきた人の生体には何も問題は見られません」


などなど、挙げればきりがない。


 現実世界と異次元世界をつなげて転移ができるとして、そこに行って帰ってくることが法的にどういう分類になるのか、旅行業? それともサービス業? とにかく、何から何までこれまで人類が経験したことのない領域の話なのだ。


 国会でも早急に法整備を整えるべきとの声が上がる一方で、場所はどうあれ、「旅行業」には違いないのだから、その法をあてて解釈すれば足りるだろうなどと、理解が分かれており、未だ決定的な指針は示されていないままだ。


 しかしながら、「ダイシイ」のメンバーたちはこの問題をどうこうできる立場にはない。

 これについてはお偉い先生がたが考えてそのうち一定の解答を出してくれるだろう。

 今「ダイシイ」にできることは、より多くの情報を集積し、少しでも安全で快適な「旅行」を楽しんでもらうための情報提供を怠らないことだけだ。


 そういう意味でも、冒険者ダイバーたちのたくさんの活躍が必要となる。彼らが「バウガルド」をくまなく探索し、新しい危険個所や新種のモンスターなどの発見情報などをもたらしてくれることで、ハードな冒険を望む「探検家」から異世界観光を楽しむライトなユーザーまで、幅広く「バウガルド」の魅力を満喫できるようになるのだ。



 サービスの開始から約3年が経過した。

 現在は2035年9月だ。


 この3年間のバウガルドにおいての事故等についての情報を開示しておく。


 部位欠損報告6003件(但し、現実世界に戻った時には元に戻っている)。

 精神的疾患561件。

 訴訟提起3件(現在係争中)。

 死亡報告(無帰還者含む)11名。

 

 以上である。

 この数字をどうとらえるかについては、皆様の判断にゆだねるとしよう。



 「バウガルド」――そこは新しい夢を見ることができる場所、そしてそれは常に生命の危険と隣り合わせの世界なのだ。











******



作者あとがき(他サイトにて完結時に書き添えたもの)


 ここまでお読みくださり誠にありがとうございました。

 本作はもともと、短編コンテスト用に書き始めたもので、それに応募した際は、前半部分3エピソードまででした。応募締め切り後に少しずつ足して、結局6エピソードまで書き上げました。

 昨年11月に最終話を書いたのち、次のエピソードに進むか迷っていたのですが、残念ながらそれには及ばないだろうという決断に至りました。

 物語を始めた以上、どこかで終わらせないとなりません。

 読者様方のご支持を頂ける物語であれば続けるべきかとも思いますが、本作はそのクオリティにまでは到達できていないと思われます。

 現時点においては、一旦ここで区切りをつけて、「完結」という形を取り、一つの作品として完成させるべきだと考えました。

 

 バウガルドの世界はおそらくとても大きな広がりを持っていると作者自身は自負しております。

 いつかまたこの世界で活躍する冒険者を描いてみたいという想いを胸に秘めつつ、今は一旦、筆を折ろうと思います。


 ここまで応援してくださった読者様には本当に感謝いたしておりますが、なにとぞご理解のほどお願い申し上げます。


2023,1,6 永礼 経



 この物語を読み返すたびに込み上げてくる情熱と劣等感を胸に、私は今も物語を書きつづけています。


2023,3,13 永礼 経

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