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異世界旅行は命がけですがよろしいですか?―バウガルドの酒場冒険譚  作者: 永礼 経


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第37話 ジェノア、最果ての拠点

 最果てエリア北東の町ジェノア――。


 この街の周辺エリアは森と岩場のフィールドになっている。

 北を見やれば、北極の自然造形物、『北の槍岳(ノーススピア)』がそびえ立っているのが遠目でうっすらと見える。東を見やれば果てしない海岸線と海原が続いており、大陸がそこで終わっているのがわかる。

 まさしく最果て。


 北東方角の正面には左(つまり北方面)へつらなる稜線があり、右は海原が見えており、そこが北の山脈の裾野であることがわかる。


 このエリアはその北の山脈の裾野に広がる広大な森が一番の迷宮ダンジョンであった。その森の中に何が待っているのか。全く情報がない状況に等しい。そこは最近ようやく冒険者が立ち入り始めた「未踏破エリア」だったのだ。

 そのエリアが最近注目されているのはこの拠点町ジェノアが設営されたからだ。


 この街に拠点が設営されたのはまだ数か月前の話だった。北の山脈の裾野ということでこの街のあたりに温泉が湧き出る泉源が発見されたのをきっかけに、冒険者たちが休息所として使うようになり、それを当てにする行商が集まるようになり、そうしてついにはここへ定着する商人も現れ、武器防具等の装備屋、宿屋、情報収集拠点ともなる酒場、そして冒険者ギルドの出張所等、あっという間に町が形成されていった。

 この世界はゆっくりと動いていると言ったが、こういう拠点が設営されるスピードはとてつもなく速い。


 このエリアが注目されている理由は実はもう一つある。というより、それこそがこのエリア開拓の目的ともいえる。


 それは、アダマンタイト鉱石だ。


 ジェノアの先に広がる広大な森エリアのその先、北の山脈の裾野にいくつもの洞窟があり、そこで採集されるアダマンタイト鉱石が今かなりの注目を浴びている。


 この希少な鉱石はこれまでもバウガルドのあちこちで発掘されてはいるが、採取量がとても少ない激レア鉱物なのだ。この鉱脈が発見されればそれだけで探索する価値のあるエリアとなる。

 この鉱石を用いた武具は相当の高値で取引されるため、採集依頼のクエストが冒険者ギルドにも多数寄せられる。

 当然依頼主は商人ギルドに属する商人たちや、鍛冶組合、個人的に鉱物を手に入れたい蒐集しゅうしゅう家などだ。冒険者たちはそれを採集して持ち帰り、冒険者ギルドから報酬を得て、その高額報酬を元手に装備のアップグレードを図りたいと思っているのだろう。

 とはいえ、このエリアを探索できる冒険者たちはそれほど多くないのが実情だ。最果てエリアに出現するモンスターはフィールドモンスターですら、中級エリアのダンジョンボス級の強力さを持つ魔物だからだ。


 この世界の面白いところであるが、こういったモンスターが出現するエリアは、森や山、洞窟や、雪原、砂漠、沼地などの「出現エリア」という領域にしか現れない。

 人類が文明化したエリア、例えばジェノアのような「町」、「街道」、「休息所」、「広場」のような人が集まる場所にはモンスターが出現しない。すぐそばまで出現することはあるのだが、こういった人類の文明エリアには魔物は立ち入らないようなのだ。

 あくまでも、「立ち入らない」というだけで、その周囲を取り巻くということはあるらしい。

 《《たいていの場合》》、その「文明エリア」まで逃げ切れば、魔物は標的を追うのをやめてエリアの中へ戻ってゆく。

 ただし、気を付けなければならないのは、すべてがそうというわけではないという点だ。標的解除されなければ攻撃を受けることはあるのだ。

 魔物の中には強力な魔法や遠距離攻撃手段を持つものも多くいる。そういうものに標的にされた場合、出現エリアから脱出しただけでは安心できない。遠距離攻撃や魔法による追撃の可能性は十分に考えられるからだ。


 幅が狭い街道などであれば、標的解除されない限りずっと追撃を受けて命を落とす危険すらあるのだ。簡単に標的解除する魔物もいれば、数キロにわたって追い続ける魔物もいると言われている。


 そのため、行商人などは街道移動のお供として、冒険者を護衛に雇うことがあるというわけだ。


 前置きが長くなった。


 それで、ここジェノアの温泉宿に二人の乙女は拠点を移してきていた。

 もちろん一番の目当ては温泉ではない(エルフィーリエはそうかもしれないが)。アダマンタイト鉱石仕様の武器防具だ。

 その武器防具は今使っているものと比べれば「月とスッポン」だ。

 装備を固めればいよいよアダマンタイト級冒険者への道がひらかれると言っても過言ではない。

 最果てのエリアを踏破してゆくためにはこの装備が必要不可欠となる。


「ねえ、ケイコ、もう私さぁ、このままこの宿で籠ってるだけでいいわぁ~」

「は? なにいってんの、エル? これからアダマンタイト製武具に変えていかないといけないってのに。ここの宿代だって結構値が張るのよ?」

「あ~やっぱだめかぁ~。ここの温泉、とても気持ちいいのよね~。お肌もすべすべになるし。ほら、あんたのここもすべすべじゃない?」

 そういってエルフィーリエはケイコの太ももの内側をさするように触れる。


「ひゃぁっ! ちょ、こら、あ、は、や、めなさいって――!」

ケイコはあまりのくすぐったさにエルフィーリエを突き飛ばした。


「だ!? はあ! ぐぇ!」

エルフィーリエが数メートル吹っ飛んで転がる。といっても寝床の上だからダメージはない。

「――って、この、やったな~」


 そんなこんなで夜は更けていった。

 

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