俺は『恋』と出会いの物語に感謝する。あらすじ

作者：抹茶

下手くそかもしれませんが、許してください。m(_ _"m)

　この物語の始まりは、きっと２００９年１１月１４日土曜日、つまり俺の誕生日から始まったのだろう。

　「――竜一。はいこれ、誕生日プレゼント……」

　「わあ！ありがとう姉ちゃん。……中身は何だろう？」

　俺は、袋の中身を取り出してみた。そして、取り出した中身は――一冊の本だった。

　「姉ちゃん、この本はなんなの？」

　「この本はね、自分のお願いが叶うかどうかわかる本なんだ……」

　姉ちゃんはそう言うと、目をつぶって少し何かを願い出した(多分)。目を開くと同時に本も一緒に開く。そして――

　『それは、あなたの努力次第……』

　そのページには、それだけが書かれていた。

　「姉ちゃんは今、なんてお願いをしたの？」

　「ん？……ああ。私は、竜一がこれから先も元気で過ごしていられますように。ってお願いをしたんだよ」

　「そうなんだ。……でも、俺が元気で過ごしていく為に、姉ちゃんが努力することって、どんなことだろうね？」

　「さぁね？私にもわからないよ……」

　「だよね。あははは……」

　この時の俺たちには、この一文の意味なんてわかるはずもなかった。

　そして、時は流れて――――２０１０年３月１４日。今日は姉ちゃんの誕生日。なので俺と姉ちゃんはケーキ屋に誕生日ケーキを買いに向かっていた。

　「そういえば姉ちゃん、何のケーキにするの？」

　「そうだね……。やっぱり普通にいちごのホールケーキかな……」

　「そっかー。……あ、姉ちゃん。信号が『青』に変わったよ」

　「ああ、それじゃあ、行こ――っ！竜一ー?」

　その声と共に私は、竜一を突き飛ばした。

　その声と共に俺は、姉ちゃんに突き飛ばされた

　「何をするんだよ、姉ちゃん！急に押さないで――――え？」

　確かに信号は青だった。車が近づいてきている気配もなかった。

　「――姉ちゃん！」

　俺はすぐに、姉ちゃんのところへ走っていった。

　「あはは。努力ってこういうことだったのかな？竜一、ごめんね……」

　「ね、姉ちゃん？……ねえ、返事してよ、姉ちゃん。姉ちゃーん！……ううう、なあ、姉ちゃん。約束したじゃないか……。俺が強くなるの楽しみにしているって……。なのに、どうして――――」

　俺はその時、自分が持っていた本を思い出した。それは、俺が誕生日に姉ちゃんからもらった本だった――

　(姉ちゃんが戻ってきてくれますように……)

　俺はそう願って本を開いた。そして、そこに書かれていた一文に、俺は目を丸くした。

　『その願い、あなたの記憶と引き換えに叶う……』

　その一文を見て俺は、何も迷うことなく決断すると、突然本が光り出した。そして俺は―――姉ちゃんに関する記憶を失った。

◆<中略>

　あれから時は流れて今日、事故で姉さんを失ってしまってから１２年。そして今日は、俺たちの卒業式の日でもあった。

　「開式の辞。教頭先生お願いします」

　「はい。――只今より、令和４年度、第６６回卒業式を始めます」

　教頭先生の言葉で卒業式は始まる。俺は、卒業生代表としてみんなの前に立たなきゃいけなかった。

　(卒業生代表なのに、失敗したらどうしよう。怖い、怖い怖い怖い)

　これほど時間が止まってほしいと、心から願うことはもう二度とない。しかし、時間は残酷にも進んでいく。そして、俺の順番が回ってきた。

　「卒業生、答辞。卒業生代表、仲野竜一」

　(ああ、もう無理だ。逃げたい……)

　俺は緊張していた。確かに絶対失敗するとは限らない――が、絶対成功するとも限らなかった。だからこそ――

　『竜一、君なら大丈夫。絶対に成功できる、今までもちゃんとできたではないか……。それに、私がついている』

　(え、姉さん？今、確かに姉さんの声が――そうか、そうだった。姉さんはいつでも俺の味方だって言ってくれた。だから、俺は大丈夫)

　いつの間にか、俺の中にあった恐怖心は消えてしまった。理由なんてなんでも良かった。だって、最初から怖がる必要なんてなかったのだから。

　「はい！――――答辞。暖かい陽の光が降り注ぎ、桜の蕾も膨らみ始め、春の訪れを感じる今日、私たちは卒業の日を迎えることができ

ました。本日はお忙しい中、私たちのためにご臨席くださいました皆様、誠にありがとうございます。目を閉じれば、私たちが入学したことを昨日のように思い出せます――」

　俺の話が終わっていく。もっと話していたい。話したいことが他にもたくさんある。こんな紙では足りないくらいに――俺は言葉を止めた。理由は、涙で話せなくなったから。俺は失敗した、そう思っていた――が。

　「頑張って会長！」「あんたなら大丈夫！」「ゆっくりでいいからな！」など、俺のことを応援する声が聞こえてくる。俺はその声に助けられた。

　「――――。私立赤恋学園のますますのご発展を心より祈念して、答辞といたします。卒業生代表、仲野竜一」

　卒業式が終わり、俺は今日までのことを振り返る――――たくさんのことがあった。特にこっちに戻ってきてからは楽しいことばかりだった。

　「俺はこれから頑張っていけそうだよ。――――――姉さん」

◆

　――パタッ。

　「俺が小説家になるなんて、一体誰が予想できただろう。――ああ、そういえばあいつは信じていたらしい……」

　「ただいまー。竜一、私が帰ってきたぞ」

　玄関の方から声が聞こえ、俺は玄関に向かって部屋を出る。

　「――お帰り。すごく疲れた顔しているね」

　「そりゃあ疲れているよ、仕事だったんだから。……でも、今日は特別な日だから急いで帰ってきたの」

　きっと、走って帰ってきたのだろう。俺はそれだけですごく嬉しい気持ちになった。

　「そっか。……お仕事お疲れ様――琴音」

　「ありがとう、竜一。――そういえば今日、みんな来るって」

　今日が特別な日っていうのは――俺と琴音が結婚していて、今日が結婚記念日だったりするから。ついでに今年で３年目。

　俺と琴音が部屋に入って７分程が経った頃、部屋のインターホンが鳴り、みんなの顔が映し出されていた。俺はインターホン越しで返事をして玄関を開ける。

　「よう、久しぶり。呼ばれたから来たで」

　「ええっと、どなたでしたっけ？」

　「おいおい、嘘だろ。このやり取り何回目だよ」

　「多分１００回以上はやったと思うけど……」

　今、俺と話しているのは親友の山内和也。昔からの仲で、琴音と一緒の幼馴染。和也のほかにはめぐみに渚、遥と慧斗。そして――

　「やあ竜一、久しぶりだね。多分７年ぶりくらいかな？」

　「そうだね――――涼花姉さん」

　本の中の姉さんは死んでしまったけど、現実の姉さんはちゃんと生きている。そして俺と姉さんが再会したのは、大学の入学式が終わって家に戻った時でした。

　「おーい、竜一。大丈夫？」

　「ん？ああ、すまない。昔のことを思い出していたんだ……」

　「それならいいんだけれど……。それよりみんな中入って、外はまだ寒いと思うから」

　琴音はそう言って、みんなを中に入れる。今日は春にも関わらず、少し肌寒かった。

　今日俺は、みんなに何かを伝えたかった。でも何を――

　「竜一、本当におめでとう。それと、ありがとう……」

　「急にどうしたの？姉さんに感謝されるようなことはしていないと思うんだけど……」

　「ううん。君が知らない間に、私には感謝することがたくさんできた。だからこの気持ちは、素直に受け取ってほしい……」

　「わかった。――じゃあ俺からも、ありがとう姉さん、みんな。俺たちがここまでこられたのも、姉さんやみんなのおかげだ。本当に感謝している」

　みんなは笑顔で俺を見る。この時この瞬間俺は、心の底から幸福感で満たされていた。

　「竜一、嬉しそうだね。――竜一、今の生活は充実しているかい？」

　姉さんはそう聞いてきた。なので俺は――俺が今伝えられる、最高の言葉で答える。

　「――――ああ。俺の人生は今、最高に充実している。本の世界の竜一には申し訳ないけど――きっと、俺が考えられる中で最高のハッピーエンドに違いないよ」

　――始まりが存在するのならば、そこには必ず終わりも存在する。物語とは、そういうものである。楽しさを与えてくれてありがとう。喜びを与えてくれてありがとう。感動を与えてくれてありがとう。そして――――――この本の中で生きてくれてありがとう、もう１人の竜一。

読んでくれてありがとうございます。

本編はちゃんと出します。

本編も読んでくれれば幸いです。