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03 腹ペコガール、遭遇する

いやああああああっ!

助けてえええええっ!



夕暮れが山に差し掛かる薄暮時。

サバンナのような草原で、剣と盾を握ったガイコツ軍団と、同じく剣と盾を握ったG軍団が突如として争い始めたじゃないですか!


ガキン、バキンと、現代日本じゃ耳にすることの無い硬質的な音に、ガチャガチャ、ジジジと、これまた聞いたことの無い不快な音を立てて双方斬り合っております!


うーわ。

戦国系の映画とかで見たシーンだ。

争い合っているのはアレだけど、生々しいというか、激しさは映画とは段違いですわ。


えっと、これ本当に、私の夢??

夢にしては、本当にリアルなんですけど!


『ガガンッ!』


フエッ!?

すぐ横にガイコツさんが一人吹っ飛んできたー!?


『ギシィ!』


ひょえええええっ!

吹っ飛んできたガイコツさんに、馬乗りのようにGが覆いかぶさって、ガイコツさんの頭に、ギャー!


刺した刺した刺した!

剣を容赦なくぶっ刺したー!


ガイコツさん達は、頭蓋骨の中からさっき見た魔法陣のような黄緑の光が宿っていて、それが目の窪みから瞳のように見えていたんだけど……。


その光が、消えた。


ピクリとも動かなくなるガイコツさん。

覆いかぶさっていたGは、ゆらりと立ち上がり、今度は私を見る。


うーわ。

目の前で見れば見るほど、こいつGだ。

キショッ!


……普通の女子ならパニックで騒いでいただろう。

だけど、こう見えても私は料理人志願の端くれ。


G如きでキャーキャー騒ぐ生娘とは違うんだよ!


あ、生娘って処女だっけ?

じゃあ私も生娘か。


って違うー! そういう話じゃない!


重々しい剣を構える、巨大G。

盾から僅かに顔(顔?)を覗かせ、私を覗く。


やっばいなー。

勝ち目なんて有る訳ないじゃない。

だって、私は生粋の女子高生だよ?


握った刃物は、せいぜい柳刃包丁が一番刃渡りがあったくらいだ。

あとは……体育の授業で習った剣道?

今握っている剣は、竹刀くらい刃渡りがあるな。


よぉし、それなら……。



『ギッ!?』



Gが唖然としたように声を上げた。

ふふふ、そうだろ。意外だろ?


私は慣れない盾を投げ捨て、剣一本を両手で握りしめる。それを正眼に構え、真っ直ぐGを見据えた。


盾を捨てるのは、自殺行為なのかもしれない。

だけど、日本人とすれば盾を構えて片手で剣を振り回すよりも、断然こっちの方がしっくりくるはずだ。

少なくとも、私はそうだ。


良かったー、中学時代に剣道の授業があって。

しかも剣道部の大会の助っ人経験まであるアヤカさんですからねー。

Gなんかにゃ負けないよ!?


まあ、負けてもどうせ夢だからね。

でも、夢の世界でも勝負なら負けたくない。


私が運動部に入らない理由の一つとして、単純に負けず嫌いってのもあるのよ。


私はのめり込んじゃったら勝ち負けにこだわっちゃうタイプ。運動を楽しむっていう側面が無くなっちゃうかもしれない。


どうせ動くなら楽しく!

楽しく動いてお腹を空かせる!

そして! 美味しいゴハンを食べます。


……尤も、部活動なんかやっていたらバイトは出来ないし放課後の美味しいお店回りなんかも出来なくなっちゃうからねー。

やっぱ、これが部活動やらない最大の理由だ。



さてと。

あちこちで剣戟が聞こえ、ガチャガチャジージー音がするけど、それよりもまずは目の前のGだ。


静かに構え、真っ直ぐGを睨む。


私のこの身体はガイコツだけど、握る剣の重さもあまり感じないし、動きもスムーズっぽい。


これなら、普段通りに動けるかも。



『ギシィィィッ!!』


痺れを切らしたのか、舐めているのか。

Gが先に、私目掛けて突進してきた。


『ギッ!』


ドスン、と奴の剣が地面に突き刺さる。


……って、遅くない?

Gってもっとすばしっこい生き物じゃなかったかな?

しかも地面に突き刺さった剣を引っこ抜こうと、何かワチャワチャしている。

ちょっと可愛いかも。


って、私はG相手に何を考えとるんやー!

さっさとやったるでー!


せぇい、胴っ!


『ズビャッ』


私が横薙ぎにした剣が、見事、Gのガラ空きボディに食い込み、そのまま身体の半分くらいまで剣が突き刺さった……。


『ブシュッ』


うえええええっ!

気持ち悪いぃぃぃ!


Gの体液? 何か緑色っぽい汁が飛び出してきた!

って、Gってこんな汁を出したっけ!?

幾ら私がG抵抗が高いからって、こんな巨大Gをぶっ刺して撒き散らす緑汁見て、平気な訳ないじゃない!


……ああ、これ、絶対に夢に見るヤツだ。

って、今まさに夢の世界なのに、夢に見るとはこれ如何に?


なーんて考えていたら……。

弱々しく、Gが倒れた。


うわぁ、何かビクビクしている。

無理無理。本当に無理っ!


それよか、Gってこんな脆い生物だったっけ?

すばしっこく、タフネスで、中々倒せない厄介な敵。

それがGじゃなかったかな?


『ジギジギジーー!』


うへぇ!?

音がする方を見たら、今度はGが3匹も!

いやぁ! マジ無理だって!


そんなか弱き乙女たる私に、仲間が潰された怒りからか3匹同時に斬りかかってきたー!


せぇいっ!

転がるようにして逃げる、私!

またもや地面に剣を突き刺すGの皆さん!


……こいつら、馬鹿?

また地面に突き刺した剣をワチャワチャしながら頑張って抜いている。


うん。やりたくないけど……。

まぁ、夢だし。

相手は憎きGだし。


たあああ!

面! 胴! そして、面!!


両手持ちで、素早く剣を揮う私に対応しきれず、面白いくらい剣道攻撃を受けるG達。

やっぱ脆いらしく、一撃でドシャリと身体を地面に預けるんだよなー。


ふぅ、ちょっと余裕が出てきた。

警戒しつつ、周囲を見てみる。


まぁ、見事な混戦状態。

で、我らがガイコツ軍団だけど、G軍団とあまり変わらない。


剣を揮う、地面に刺さる、頑張って抜く。

相手に剣を大振りで揮う、防がれる、お互い弾かれ倒れこむ。

大振りの剣が避けられれば、剣の勢いで前のめりに倒れる。


……何、このギャグみたいな戦いは?


現代に生きる生粋の女子高生でも、これはないわーって思うよ?


何だろうな?

私も日本人の血が流れている所為か侍や武士をイメージ出来るんだけど、このガイコツ vs Gの戦いは、お子様のチャンバラごっこよりもクオリティが低いと思う。


原因は、持つ武器に振り回されているから?

“道具を使う” のではなく、“道具に使われている”

たぶん、この状態よりも酷い。


そもそも、この剣(盾もだけど)凄く軽いよ?

本当に包丁くらいの重量しかない。


それに振り回されているって、何?

って考えていたら別のGが私目掛けて剣を大振りに!


甘いっ!


サッと避けると、そのまま前のめりで剣を地面に……だけでなく、Gがゴロンと地面目掛けて豪快に倒れこんだ。


……。


…………。


御免っ!


『ギシャアッ!!』


可哀想だけど、剣を突き刺してやった。


あぁ、手に嫌な感触が響く。

ガイコツの身体だからか、感触というより振動だ。

うへぇ、響く。


で、Gは本当に脆い。

突き刺したらビクビク、ビックンって感じで動かなくなった。これはGが脆いのか、私が握るこの剣の殺傷能力が高いのか……。

どちらにしても、嫌だな。


って、考えていたら!

今度は5匹のGに囲まれた!


これって、私のこと危険人物認定ってこと?

そりゃあ、すでに5匹のGを撃墜しているからな。


ひょえええ、何か怒っている!?

そりゃあ、仲間を殺されたら怒るよね!


ぎゃああっ! 一斉に来たぁ!

助けてーー!!




……結果を申し上げますと、先ほど3匹同時に狙われた時と同じでした。

行動が単調。学習能力は皆無と見た!


てか、いつまでこの戦い続くの?

そろそろ本気でお腹ペコペコなんですけどー!?


『ドガンッ』


ぎゃああああっ!?

何、何っ!?


咄嗟に避けたっぽいけど、今、私が立っていた場所が……爆発したのか、ちっちゃいクレーターが出来て煙が出ている!

周りの草が、ちょこっと燃えている!?

何これ!


『ギジィ……。』


悔しそうな声を出したのは、一匹のG。

それも、剣を持つ奴等とは風貌が違っている。


まず、撫で肩(肩?)に無理矢理付けたマント。

手(手?)には剣じゃなく、絵本の仙人が持っているような木で出来た杖。


そのGが、杖の先を私に向ける。

すると、杖の先端が赤く光り、何か、ジワジワと空中に円形の模様が浮き出てきた。


あれ、もしかして魔法陣とか?

ってことは、今さっきの爆発っぽいのは……。


もしや、魔法っ!?


うおおお!

私の夢、本格的なファンタジーに染まってきたぞ!


私が知る魔法使いって、某ネズミの国の彼とかカボチャ馬車のおばあさんとか、ありのままの女王様とか箒に跨って配達する女の子とか。


……考えると、魔法使いって多いよね。


あと幼女や大きなお友達が大好きなプリティなガールズも魔法使いかな?

あ、でも彼女たちは拳で語る派だから違うのかも。


とりあえず、こいつは “魔法使いG” と呼ぼう。

うーわ。捻りが無い!


で、魔法使いGの先端の赤い円形の光だけど、見た目はスマホアプリのダウンロード中のような感じと言えば分かるかな?


先端から伸びている光の線が、中心を軸に扇形、半円と徐々に円を描くように模様や文字を映し出しながら形を成している。


アレが完全な円になったら魔法が発動する感じ?

私、それを指を咥えて眺めている感じ?


んな訳あるかいっ!

隙だらけだ! 魔法使いG!


胴っ!


『ギギャッ』


うん、予想通り。

Gが倒れる前に、スマホアプリのDL中表示(魔法陣のことね)がフワァと消えた。


魔法は怖いけど、発動する前に斬っちゃえばそれまでってことね。


でも、遠距離攻撃の手段があるのは怖いなー。

ちょっと気を付けよう。

うん、まぁ、当たっても夢だし、適当でいいか。


『ドゴンッ』


おひゃほうぇいっ!?


えー、失礼しました!

女子高生らしからぬ叫びを上げてしまいました。

だって、またも私の足元が爆発したのよ!


微妙にずれたため吹き飛ばされてもすぐ立ち上がれそうだったけど、今度は魔法使いGが2匹、剣持ちGが6匹、私をロックオン……。


ええええー、さすがにこれはヤバイ!

魔法使いG共は私と距離をとってスマホアプリDL中を展開しているしているし、剣持ちは完全に私を取り囲んでいるし!


加えて私の剣が、無い!?


あ、吹き飛ばされた勢いで手放しちゃったんだ。

やっちまったな、私!


そんな丸腰女子高生(見た目ガイコツだけど)に向かって、Gが一斉に襲い掛かってきたー!


死ぬー!?

夢だけどそれは何かイヤー!


『ドウッ!』


ひょえええっ!

今度は何!?


うわっ!

私に襲い掛かってきたGのうち、1匹の頭が突然炎上しました!


ゴウゴウ燃える炎に包まれてギギーギギーと苦しそうにのたうち回っております!

周囲のG達も仲間の惨状に度肝が抜かれているみたいです!


あ、剣落とした。

チャンス!


私はすかさず燃え盛るGが落とした剣を拾い、すぐ横のGを切り裂いて何とかその場を脱出。


ふぅ、危なかったぜ。

でも一体、あの炎は……?



『※*●▼*☆**!?』



頭に響く、聞き覚えのある声。

横を振り向くと……!


しゅ、しゅ、主任―!!


そこには、先端に丸い宝石が付いた棒を持った主任が、ふよふよと浮いていました!


宝石の先端から、魔法使いGがやったみたいな、スマホアプリDL中を展開!


やるじゃん、主任!

あんたもまさかの魔法使いとは!

何にせよ、助かりました!


いやー、良い上司に恵まれて幸せっすよ。

ちょっと人使いが荒い気もしますけど、部下のピンチには駆け付ける良い上司ってことで!


あ、でも状況はさらに悪化しているんじゃね?


主任がGを1匹倒したのが相当気に入らなかったらしく、剣持ちGが奥からわらわらと集まってくるし、魔法使いGも2匹から……5匹に増えて、完全に私と主任をロックオンしております!


やややや、やばい。

総勢10匹超えている!

しゅ、主任! 上司としてイケているところ見せてください!



『ガチャガチャガチャ』



おおっ!

私がアタフタしていたら、私と主任のピンチに駆けつけるようにガイコツさん達と、もう1人の主任さんが援護に駆け付けてくれました!


素敵―! って、ガイコツだから一切トキメキなんぞ1mmも感じないし、むしろ恐怖で多少ビビッている私ですけどねっ!?


『ズゴンッ』


へっ?

今、駆け付けたガイコツさんの1人が、一瞬でバラバラになりました。

彼(彼女?)が立っていた所には、例のクレーターが……。


や、やりやがったな、魔法使いG!

それよか、一発で全身がバラバラになってはじけ飛ぶような勢いなんかいっ! よくもそんな危険な魔法を私目掛けて2発もぶっ放してくれたもんだな!


『ガチャガチャガチャガチャ!』


『ギジジジジジッギジジジジ!』


その攻撃が合図だったのか、またも一斉に斬り合うガイコツ軍団とG軍団。

しかも今度は互いに魔法をぶっ放してくるという新たな攻撃も追加されて、もう、滅茶苦茶!


しかも何やらこの場が激戦区になったみたいに、あっちこっちからG軍団が押し寄せてくるし!

こっちはガイコツ軍団、10人程度なのに向こうは軽く見積もっても50匹はいるんじゃない?

何か、魔法も激しくなってきたし!


てか、魔法は卑怯くない?

距離取ってバンバン撃ってくるなんて、ズルイ!

むしろ、私の夢の世界なら、私にだって魔法撃たせてくれたっていいじゃないのよ、もー!



《ジジッ……ザー……ザー……》



へ、何なに?

何か、頭に妙なノイズ音が。



《ポン》



うひゃあっ!?


なによ、今の音は?

思わずあたりをキョロキョロしたけど、何も……。



《オーダー:魂・身体・精神補正完了》


《称号『異界勇者』発現》

《称号『渇望なる者』発現》


《称号『渇望なる者』『異界勇者』固有スキル結合》


《称号『異界勇者』矛盾化・抹消》



《称号『異界勇者』抹消拒絶》



《称号『異界勇者』強制抹消開始》



《称号『刃の達人』発現》

《称号『下級剣技』抹消》


《称号『刃の達人』スキル “微塵斬り” 使用可能》




はい? なんだって?

矢継ぎ早で色々言われたけど?



……みじん切り?



使用可能って、何それ。

みじん切りくらい普通に出来るわ!

馬鹿にしているのかー!?



《スキル “微塵斬り” 発動トリガー自動設定中です。発動しますか?》



はぁっ!?

本気で意味が分かんないんですけど?


何でこんな状況で、食材も包丁も無いのにみじん切りを発動するなんて聞いてくるの!?


何なの、この声。

もしかして主任!?


……では、無いか。


聞こえてくる言葉は日本語だし、さっきまで頭に響いていた主任の言葉はさっぱり理解不能だし。


その主任は溢れるG軍団に向かってバンバン魔法をぶっ放している……って、援軍に駆け付けてくれたガイコツ軍団、全滅してるー!


え、今、私と主任だけ?

私がボーッとしている間、主任が頑張っていたの!?


うわー、ヤベーッ!

そういやさっきから主任が何か叫んでいた気がしたわー。私に怒鳴っていたのか、援軍を寄越せと騒いでいたのか全く分かんなかったけど。


溢れるG軍団!

押し寄せる黒光り!


あああ、これ絶対夢に見るやつー!

って今も夢の中だけど、夢から覚めても絶対影響出るやつー!



《推奨:“微塵斬り” 発動を実行しますか?》



あー! もう、何よっ!?

食材も包丁無しに、そこまで私の鮮やかなみじん切りが見たいんかいっ!


いいわよ、やったるよ!

エアで!



《発動:微塵斬り》



――その声が脳裏に響いた瞬間、私は言葉を失った。


身体が勝手に、いや、自然に動いた。

両手で握っていた剣を右手一本に持ち、大きく振りかぶる。


目の前の、大量のG軍団向けて。



『ズバンッ』



一際大きい乾いた音と共に、私の右手に握られた剣から空気の層を歪ませるような何かが迸り、その瞬間、G軍団が、


『ギシャアアッ!』

『ギギギシシシ!』

『ギビギジィ!』


様々な雄叫びを上げて、粉砕された。



―――えっ??


あっけにとられる私。

あれだけ大量にいたGが全部粉々になり、さらに地面にはいくつもの斬り跡が残り、さらにさらに、私が握っていた剣の刃部分が、バラバラと砕け散った。



主任も、口をあんぐりと開けて呆然としている。


私も一緒になって、呆然としている。


たった今目の前に起きた、大量のGの死骸。

見るも無残な、スプラッタ劇場。



うええええっ! 気持ち悪っ!




こうして私は、一応の危機を回避した。


だけど、この出来事が後の私の運命をガラリと変えるきっかけになるとは、この時は思いもしなかった。

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