12 腹ペコガール、切れる
『ガチャッ、ガチャッ……』
ふよ、ふよ。
『ガチャッ、ガチャッ……』
ふよ、ふよ。
だーーー! もぉ!
飽きたわーー!
……飽きたけど、目の前に浮かんで先導する王様に銀ちゃん、そして私の後ろから着いてくる主任の手前、ドカーンと暴れるわけにもいかず! ただ、ただ、ひたすら歩き続けるアヤカさんですコンバンハ。
二日続けてのG軍団との合戦を終えてまた進化出来たぜヒャッホー、と思った矢先、女王サマことイリスさんに呼び出しを食らった私たち。
銀ちゃんと主任とまず、巨大お化けルームこと王様のお部屋へ顔を出して、そこから王様合流で再び登山道よろしくクソ長~~い道程を歩いているわけですよ。
二日連ちゃんの行脚。
なにこれ、新しい虐め?
やっぱりあのボンキュッボンは敵だな。
そしてこの道中、王様、銀ちゃん、主任とガイコツ勢揃いなのにずっと黙りっぱなしなの! 何かしゃべってよ! 私はまだ念話とやら使えないんだから聞き役オンリーなんだけど、この沈黙、耐えられんわ!
これって、やっぱり私が原因なのかなー?
・・・・
・・・
・・
・
『それは斬魔刀・崩天ではないか! しかもスカルメイジから、スカルウィザードに進化しただと!?』
王様ルームでの出来事。
銀ちゃん、主任、そして私の3人が訪れるや否や声を張り上げる王様でした。
超怖いっ!
デカイし迫力ある王様ドクロお化けが大声張り上げて私に迫って、ちょちょちょ、近い! そして怖い!
『あり得ん……。スカルメイジが剣を持つこと自体が異常だというのに、よりによってレヴァスの妖刀を持つのか。』
あ、そうそう。
ザンマ刀ホウテンだったね。
だからテン助!
で、テン助と私を交互に見る王様。黄金ドクロの中の黒い光が今日も一段と輝いていますね~。
で、レヴァスって誰?
テン助の元持ち主?
ああー、あのボンキュッボンがテン助を奪った相手ですかね?
あの美貌とボディで誘惑でもしたのかしら?
うーわ、これだから女を武器にする奴は……。
『ま、まぁ良い。ところで先刻のグリード軍の中に、ネームドが紛れ込んでいたようなのだ。』
あ、そうそう。
確かルコスなんちゃらっていうカマキリよね。
はーい! 私でーす!
アヤカさんが倒しましたー!
褒美よろっ!
美味しいゴハンを所望します。
『閣下、信じられぬかもしれませんが……この娘が、倒しました。』
甲斐甲斐しく報告する銀ちゃん。
そうよ、そう!
上司たる者、部下の功績を認めて更に上の人に伝えるべきよね。部下の功績を自分の手柄にしちゃあ、上司失格だよ! 知らんけど。
『ネームド、を、か?』
『……はい。それも、マンティスブレイブを。』
うーわ。
巨大黄金ドクロの口をこれでもか! ってくらいアングリ開ける王様。
その口のサイズ! 私のガイコツボディを丸呑み出来そうな勢いでっせ!?
ちょっと、王様、マジやめて!
私、美味しくないよ? 骨だし。
喉に刺さるよ? 知らんけど。
『マンディスブレイブのネームドを屠ったのか!?』
うわああああ!
叫ばないでよ、王様!
危うくガイコツボディがバラバラになるところだったじゃない!
ほら何となく! 気分的に。
えーっと、そんなに驚くこと?
確かに銀ちゃんですら手も足も出ず、護衛?だったガイコツ騎士さん達を紙切れみたいにバッサバサ切り倒していったからねー。
あ、そう考えるとルコスなんちゃらは結構ヤバめ?
良く勝てたな、私!
まぁ、私っていうか謎ボイスちゃんが殆ど片付けたみたいなんだけどねー。あっはっはー。
『……陛下からの呼び出しは、まさかこの事か?』
ん?
あれ、王様も聞いていないの? あのボンキュッボンが私たちを呼んだ理由、知らないのかーい!
『……閣下。我らも陛下に御報告せねばと考えております。一刻も早く女王陛下の許へ参りましょう。』
恭しく跪く銀ちゃんと、主任。
うーわ、やっぱりイリスさんのところ行くのねー!
『そうだな。急ごう。』
しかも急ぐのかいー!
嫌だよ、私は! またあの行程を歩くのは。
・
・・
・・・
・・・・
はい、そんなわけで嫌な行程を歩いています。
例の、おどろおどろしい螺旋階段ですよ。
あー、もう疲れた。
ガイコツボディだからか疲れ知らずなんだけど、精神的にかなり参っている。
この長い道程もだけど……。
お腹が空いた!!
もう、何なのよ一体!
何でこのガイコツボディでお腹が空くのよ!
いつも腹ペコなアヤカさんらしいっちゃらしいんだけど、それにしたって不条理すぎやしませんか!?
もう何度も思うんだけど、このガイコツボディってゴハン食べられるの?
消化器官はどこ?
味覚あるの?
あと嗅覚は?
内臓も脳みそも無いのに、何故に腹が減る!
あ、もしやこのガイコツボディを形成している骨がカルシウムを求めていて、それでお腹が空いた! と思わしているのかな?
カルシウムと言えば、牛乳。
そう、私の大好物の牛乳様だ!
牛乳と言えば、小学校の給食で出てきたんだよね。
私は物心ついた時から牛乳大好き娘だったから嬉しかったけど、何気に牛乳嫌いの子って多いんだよね。
むしろ牛乳大好きな私の方がマイノリティ?
まぁ、牛乳大好きのおかげかで、私は骨も歯も丈夫な健康ガールなんですよ。ゴハンもモリモリ食べるし良く眠るから、健康体そのもの。
でも、パパとママが身長低いからか、身長は余り伸びていない。
おかしいなー?
牛乳は毎日ガブガブ飲んでいたし、ビタミンD作るぞー! くらいな勢いでお日様の下で散々遊んだり日向ぼっこしたりしていたんだけどなー。
それでもチマッとしている可愛らしいハナちゃんよりは身長は高いよ!
あ、でもこれをハナちゃんに言うものなら、そりゃもう鬼の如く怒られる。
『身長も胸も私より大きいくせに贅沢言うな!』
って……別に贅沢言っているつもりは無いんだけど、ほら、牛乳パワーでモデル的身長が得られる予定だったのに、それが何故か牛乳嫌いのミサキと変わらない身長だから! おかしいでしょ?
うん、身長の話はここまでにしよう。
ちょっとイラッとすることを思い出した。
『牛乳の栄養が全部、胸に行ったんじゃない?』
あー、思い出しただけでイライラする!
そうだよ、市川。テメーだ!
何シレッと人をディスっているんだ。
ぶっちゃけそれはセクハラよ、セクハラ!
イケメンだ何だってチヤホヤされているからって調子に乗っているんじゃねー!
だいたい私は、あんたが好きなミサキのお姉ちゃんなのよ? いいの? 姉の心証を悪くして。
万が一、億が一、ミサキが『彼氏でーす』って市川の野郎を自宅に連れてきたら、ママとパパの前で『いよぉ、セクハラ野郎! どの面下げて家の敷居跨いでいるんだ!』って言って追い返してやる!
人見知りの飼い猫も “シャーッ!” って言って追い払ってくれるはずだ。
市川と言えばさー、頭も良くてスポーツも万能なくせに、学校一の美男子で性格までも良いってその評判は天井知らずなんだけど。
あいつ、性格良いか?
私、それが信じられないんだよねー。
私やハナちゃん・ヒナちゃんが教室でしゃべっている時は高確率で話しかけてくるんだけど、何ていうか、私の事を茶化してくるんだよねー。
『それだけ食べて良く太らないね。』
『将来病気とかにならないかな?』
『ああ! 栄養が全部胸に……ハナ、それだ!』
ムッキー!
ていうか、最後の、それ!
何をハナちゃんに同意しているんじゃ、市川!
頭の良い二人にそれ言われる私の立場は何よ?
ええ、オバカな腹ペコガールですけど、何かっ!?
あ、そうそう。
ハナちゃんと市川は、塾が同じということでそこそこ仲が良い。
聞けば、小学校高学年からの顔なじみだとか。
学校は別だったけど、お互い小学校と中学校では学年1位キーパーでライバルのような関係だったらしい。それでも市川曰く『試験や模試でハナに勝てたことは一度も無い』だそうだ。
改めて考えるとスゲェな、ハナちゃん。
まー、そんな訳であの二人は塾の友人ということもあり、お互い “ユイト”、“ハナ” と愛称で呼ぶほどだ。
結構良い感じにも見えたんだけど、それはお互いに全力で否定された。
うん、ハナちゃんは杉本君LOVEだしねー。
市川は、私の可愛い素敵な妹のミサキ狙いっぽいし。
あ、杉本君っていうのはうちのクラスメイトの男子。
そう! ハナちゃんが気になっているというか、むしろぶっちゃけLOVEな相手です。
杉本君は何ていうか、市川と違い目立たない子だ。
本人はきっと “自分は平凡” とか思っている節があるんだけど、私の中では市川や橘に比べて断然に彼の方が好印象だ。
顔はそこそこ良いし、身長も割とある。
スポーツも苦手ってわけじゃないし、勉強も私なんかよりもずっと出来る。
あとは……特にこれが! っていう目立つものは無いように見えるんだけど。
杉本君、凄く優しい人らしいんだ。
困っている人を見かけたら放って置けない人らしく、電車でお年寄りに席を譲るとか、荷物持ってあげるとか、そういう事が出来る人らしい。
あ、“らしい” っていうのは私が見たわけじゃない。
全て、ハナちゃんからの情報。
『杉本君は覚えていないんだろうけど……』
ハナちゃんがどうして彼を好きになったのかというドラマチックな話があって、しかもそんな彼が青渚学園に高校入学してきて同じC組になれたなんて、オカルトを信じないハナちゃんですら運命ってやつを感じたらしい。
この話がまた良くて……。
『娘。そっちじゃない。』
うおっと!
ボヘーッとハナちゃん達のことを考えていたら、どうやら私は道を間違えそうになっていたみたいだ。
すんません、銀ちゃん。
気付いたら、外の景色が見られる通路に出ました。
昨夜私が余りの感動で腰を抜かしたところです。
わーー。
今日もすっごく綺麗……。
星空も、お月様も、巨大なお城も。
すごくすごく、綺麗。
イリスさんに会いに行かず、ここで眺めていたい。
“心が奪われる”、“吸い込まれるような景色” ってこういう事を言うんだろうね。
この二つの言葉を生み出した先人は本当にセンスが良いと心から思うよ。
『何をしている。陛下がお待ちだ。』
『行くぞ。』
あー! もうっ!
これだから、ガイコツ野郎どもは!
君たちには風情を嗜む心は無いのかね?
……無いだろうなー。
こいつら、ガイコツにドクロお化けだからな。
はぁ。仕方ない。
もっと景色を見ていたいけど。
あの夜の向こうって、何があるのかなぁ。
はぁー。もっと見ていたい。
《オーダー:“千里眼” 発動》
ふぇっ!?
唐突に何、謎ボイス……ちゃ…ん!?
ひょえええええっ、何、なにこれ!
謎ボイスちゃんの声と共に、私の視界が変になった!
何言っているか自分でも良く分からないけど、何ていうか、普段見ている景色はそのままなんだけど、何か、別の視点があって、その視点が夜の遠い先を見ているの!
それも、くっきりと。
分かりやすく言えば、自分の視点と、望遠鏡か何かを覗いた視点が、両方とも見えている状態。
普通はそんなの頭が混乱するのだろうけど、全然違和感が無い。
何これ、楽しいっ!
何か、望遠の視点は見たい箇所のズームも行けるみたいで、精度がかなり良い。
あ、そういや現代は衛星写真もすっごく解像度が高くて、大気圏外から歩いている人の表情までバッチリ見えるそうだ。よく知らんけど。
私が今見ている望遠景色も、まさにそれ。
これ良いわー。超楽しい。
暗闇に覆われる夜だけど、視界は明かりに灯されたみたいに、はっきりと見ることが出来る。
多分だけど、あっちが……、おお! 間違いない、私たちがG軍団とやり合った合戦現場だ!
こうして見ると、広い草原だなー。
おや、ガイコツさん達が土や岩で何か作っているぞ?
……塀、かな?
あー、そっか。G軍団がまた襲い掛かってきても良いように陣地を構えているんだねー。ご苦労様です。
で、それから先。
うげつ! G軍団、いるじゃん!
しかもあいつ等も、土だか岩だかで作った立派な塀を構えてやがりますねー。
その先は何があるかな?
……ん? お城?
まさか、あれ、G軍団のお城なのかな?
うーわ。でかい。
イリスさんのこのお城も大きいけど、G軍団のお城も負けていない。
造りも何となく似ている。
向こうの方が、何となくセンスが良いかな? ドクロとか骨とか、そういう柱や柵が見えないからね。
センスで虫共に負けていますよー、イリスさーん。
『娘。何をしている!』
『さっさと行くぞ!』
ひょえええええっ!
王様&銀ちゃんオコです!
ごめんなさい!
でもでも、聞いて!
敵のお城を覗いていたんですよ?
これってガイコツ軍団に有利な情報にならないかな。
ねぇねぇ。
……うーん、念話とやらが出来ないのはキツイな。
私にこの望遠覗き能力があるって知ったらもっと丁重に扱ってくれるんじゃないかな?
あ、でも。
他のガイコツさんでも普通なのかも。
デフォでガイコツ視点、望遠能力有りとか?
わー、あり得そうー。
だって私に出来るくらいだもん。
こちとら頭の弱い腹ペコガールですぜ?
取り得は食い気と料理くらいだし。
言っていて悲しくなるけど、それが現実なのよ!
◇
王様部屋から歩き出して何時間か。
やっと、イリスさんの部屋の前まで到着。
あー、本当にきつかった。
道中も長いくせに、王様、銀ちゃん、主任、全員口数が少ないんだもん! これ、念話が出来たら私が一人でひたすらしゃべっていたんだろうな。
会話を盛り上げられない男子はモテないよー?
見た目ドクロ&ガイコツだから性別とか知らんけど。
『さて。』
あ、王様の持っているスティックから魔法陣が。
例の、アレか!
私と主任に、王様がホワワーと魔法を掛けてくれました。確か、“マフーホゴ” とか言う魔法だったね。
いいよね、これ。
温かな毛布に包まれるような感触!
それをあのボンキュッボンめ!
指パッチンで解いた事は忘れねーぞ。
って、アレ?
『閣下、心より感謝申し上げます。』
恭しく頭を下げる主任、なんだけど……。
ちょっと、待って?
『ぬ?』
あ、王様も気付きましたね?
マフーホゴ、私に掛かっていませんよ?
『そんな馬鹿な。』
王様は再度、私に向かってマフーホゴの魔法を掛けようとスマホアプリDL中マークのような魔法陣を展開する。
ポワワー。
そんな音がしそうな、柔らかい光が私に……。
だけど。
アレ、アレレ?
掛かっていませんよ、王様?
『何故だ?』
首を傾げる王様。
そんな顔で私を見られましても……。
『閣下。この者は確か陛下の前に立っても無事であった身。もしや何か変化があったのかもしれません。』
たどたどしく告げる主任。
変化、変化ねぇ。
あるとすれば、進化かな?
あとは……あの指パッチンだ!
おのれ、ボンキュッボンめ!
色んな仕業が全部あいつの所為って思えてきた。
『ぬう……。だが余の魔法を弾くなど、陛下にしか出来ぬ芸当と思えぬが。』
巨大ドクロの顎に骨の手を当てて首を傾げている。
いや、知らんがな。
「ちょっと? 邪魔よ。」
ふぇっ!?
突如後ろから聞こえる、綺麗な女の人の声。
振り向くと、そこに居たのは……。
メ、メ、メ、メイドさん!?
台車を押す、メイドさん!
うーわ、ガチメイドさんだー!
初めてみたよ、ガチなメイドさん。
ていうか、イリスさん以外に人間が居たんだ!
や、イリスさんは魔王サマだし頭に立派な山羊角を生やしているから人間じゃないけど!?
『こ、これはっ!?』
『失礼いたしました!』
え、え、ええっ!?
何でメイドさんに跪くの、王様に銀ちゃん!
主任は……うわー! 土下座よね、あれ?
唖然とする私に、メイドさんはギッと睨んで、
『邪魔よ。』
わ、わわわ!
はい、はい! どきますよ!
慌てて横にずれる私だが。
『頭を下げぬか!!』
ぎゃー! 王様ガチオコです!
慌てて私も王様たちと同じように跪きます!
そんな私を一瞥し、メイドさんは深い溜息。
『……もしかして、これが陛下がおっしゃっていた “珍妙な娘” か?』
『左様でございます、死骸吸血鬼様!』
王様が恭しく答える。
って、このメイドさんは王様より立場上なの!?
メイドのくせに?
グールヴァンパイア?
『そうか。ならばこんなところでボヘッとしていないでさっさと入室したらどう? 陛下も気が長い方ではないわよ。』
そう言い、メイドさんはイリスさんのお部屋の前で一礼して、入っていってしまいました。
何、あの人?
超偉そうなんだけど!
てか、誰が珍妙だ!
やっぱあのボンキュッボンは敵だな!?
『陛下は……お食事の時間か。』
『閣下。ですがグールヴァンパイア様がおっしゃった通り、呼びたてられた我らがこの場に留まるのも不味いと愚考いたします。』
そんな事よりも、そう、それよ!
アヤカさんは見ましたよ!?
メイドさんが押していた豪華な台車の上!
銀色に輝くクロッシュを!
あ、クロッシュっていうのは銀のボールを逆さまにしたような蓋のことね。
ドームカバーとかディッシュカバーとも言うアレのことです。
アレを押していた!
そして、王様が言った言葉!
お食事です!
こいつらドクロ&ガイコツは絶対食事を必要としないだろうけど、見た目が人間のお姉様であるイリスさんはどうやらお食事が必要なお身体と見た!
わーわーわー、気になる!
イリスさんのお食事、超気になる!
出来れば一口分けてくれないかしら?
ルコスなんちゃらの撃退のご褒美は、女王サマの豪華なお食事で良いですよ!?
今なら安いですよ、アヤカさんは!
『そうだな。では。』
王様は銀ちゃんの言葉に頷き、恭しく頭を垂れた。
『女王陛下。畏れ多くも馳せ参じました。御食事の折に御尊顔を拝見することを、どうか御容赦くださいませ。』
うーわ。
相変わらずの畏まり。
この言葉があのボンキュッボンに投げかけられていると思うと余計に腹立たしいね。
『許す。』
響くイリスさんの声。
って、許す、じゃねーよ!
呼びつけたのあんたでしょうが!
『ガガ、ガガガガ……』
鈍い音と共に赤い扉が開く。
あー、また王様、『御寛容、謹んで御礼申し上げます』とか言っているし。
呼びつけられたんだよ、こっちは。
「遠路遥々お疲れ様!」くらい言って欲しいわ。
で、イリスさんの部屋。
跪く王様、銀ちゃん、主任に合わせて私も膝を着く。
「突然呼びつけてすまなかった。」
豪奢な椅子に足を組んで座るイリスさん。
昨日は無かったけど、椅子の前にこれまた黄金やら宝石やらが埋め来られたテーブルが置かれている。
そこでゴハンを食べると見た!
うわー、いいなー!
「報告を聞いた時は耳を疑ったけど、本当にレヴァスの斬魔刀を握れるとはね。それに、もうスカルウィザードに進化を果たすとは。本当に面白い娘ね。」
へーへーへー。
お褒め頂きありがたき幸せでーす。
ところで褒美の一つや二つは無いのですか、ボンキュッボンよ。
「……相変わらず失礼な事を考えているわね?」
うげええええっ!
ていうか、何で分かるの?
念話とやらはまだ使えていないのに!
読心術とかいうやつ?
ガイコツボディに有効なの、それ?
「消しますか、陛下?」
隣で食事の用意を進めるメイドさん、オコですー!
ちょちょちょ、消すって、物騒な!?
「必要無いわ。」
「御意。」
はあああ~、良かった。
何か、メイドさん、美人さんなのに何とも言えない迫力があるなぁ。
王様や銀ちゃんが跪くのも何となく分かる気がする。
イリスさんは、テーブルの上のグラスを手に取り、こくりと飲んだ。
何か、エロイ!
グラスをくるりと回し、私を見つめ笑みを浮かべる。
うん、イラつくくらい美人さんねー。
「むしろ、この娘は我らにとって重要な存在になると考える。そもそも面白いと思わないか? ただのスカルウィザードが、レヴァスのコレクションの斬魔刀・崩天を持って何ともなっていないのだぞ? あの刀は私ですら握る事が出来ぬというのに。」
「おっしゃる通り。」
「さて、ワイトキングにスカルジェネラル、そしてレイスと娘よ。私はこれより食事の時間となるが許して欲しい。その間に、先の戦闘の報告と合わせ、その娘の顛末を聞こうではないか。」
シュルリ、とナプキンを首元に巻くイリスさん。
正確には、メイドさんに巻いてもらっている。
あんた赤ちゃんかい。自分で巻け。
あ、でも!
ついに女王サマのお食事なのね!
いいな、いいな、いいなー!
イリスさんは一段だけ高い雛壇の上の椅子に座っているだけから、膝を着く私でもテーブルの上がばっちりと見れる。
ガイコツボディだから涎もお腹の虫も出ないけど、お腹はすっごく減っているの!
マジで褒美、食事でいいからゴハンプリーズ!
「陛下。本日のお夕食はこちらです。」
テーブルの上に置かれたクロッシュに手に掛け、開くメイドさん。
どんな豪華な料理が出てくるのか!?
期待に満ちた私の目に飛び込んできたものは、
『な、何っ!?』
『娘、どうした!!』
叫ぶ、王様と銀ちゃん。
正面のイリスさんもメイドさんも、怪訝な表情だ。
何故なら、私は思わず立ち上がってしまったからだ。
本当に、無意識に。
勢いで。
こういうのって不敬とか言われるのかな?
ううん、そんなの関係ない!
だって、だって!
思わず立ち上がり、口をパックリと開いた私は震えるガイコツ手の人差し指を、イリスさんの本日の献立、
もとい、真っ黒焦げのナニカを、
指さしてしまっているからだ!
これが、料理!?
何考えているんじゃーーーー!!
アヤカさん、16歳。
ガイコツボディに転生して2日目の深夜。
あり得ない料理を目の前に、ついに切れました。




