11 腹ペコガール、凱旋する
『女王陛下! 我ら誇り高きエンヴィ軍、ただいま帰還しました! どうか開門の御許可を!』
超巨大な壁の跳ね橋の雨。
傷がすっかり癒えた銀ちゃんが、若干声を上擦らせて叫ぶ。
うーわ。嬉しそう!
そりゃそうだよねー。
昨日は敗北しちゃったG軍団を今日は退けたんだから。早くイリスさんや王様に報告したいんだろうな。
もちろん、その立役者も紹介しないとね!
え、誰かって?
えっへっへー。分かっているでしょー?
私ですよ、わ・た・し♩
このスカルメイジのアヤカさんですよ!
G軍団のボスっぽい巨大カマキリ、マンティスなんちゃらのルコスなんちゃらを、このアヤカさんが倒したんですから!
あ、ちゃんと名前聞いたのにもう忘れちゃった!
あっはっはー。ごめんよ、ルコス。
それにしても、見ましたか!?
私の鮮やかな包丁さばきを!
ガイコツ軍団を率いる銀ちゃんが吹き飛ばされるくらい手も足も出なかった巨大カマキリ野郎を、アヤカさんが鮮やかな包丁さばきで剣を打ち砕き、プリティなガールたちの決め技のように轟々と燃え盛る魔法を格好良く打ち放ち、颯爽と倒したんですから!
プリティな魔法ガールとなったアヤカさんの手で、浄化されたルコスなんちゃらも今頃感極まって草葉の陰でむせび泣いていることでしょうね!
色々と表現が間違っている?
あっはっはー、わざとだよ、わざと!
え? あと脚色はやめろ?
あっはっはー。
何のことか、アヤカちゃん分かんなーい♩
はい。ごめんなさい。
調子に乗って本当にごめんなさい!
だから私の後ろでドス黒い不信感モリモリなオーラを放つのをやめてくれませんか、主任!
ぶっちゃけ、超ビビッていました。
一歩も動けませんでした!
だけど……。
私の身体が自然に動いて、ルコスの剣を粉々に砕いちゃった。
“半月切り”
確か、謎ボイスちゃんがそう言った直後だ。
本当にゆっくりと、私の身体が自然に動いてルコスの剣を粉々にしちゃって……。
ビックリして戸惑う私に、謎ボイスちゃんが “シャクネツケン” ? ……たぶん語呂から “灼熱剣” だよなぁ? これを実行するかどうかって聞いてきて、YES! って答えたら巨大筋引き包丁ことテン助がボウボウと燃え盛ったんだよね。
これが、私の魔法?
何か、思っていたのと違うんだけど!
主任とか魔法使いガイコツさんとか、あと魔法使いG、今思い出したけど王様もだけど、皆して魔法使う時は、手に持った杖やスティックやらの先端にスマホアプリダウンロード中みたいなジワジワと浮き出る魔法陣を作って発動させていたように見えた。
だけど、私のは全くの別物。
魔法陣って何それ? みたいな感じでいきなりテン助の刃が燃え出した!
倒れる銀ちゃんに言われるがまま、燃え盛るテン助をルコス目掛けて斬りつけたら、あっさりとルコスは燃え尽きてしまった。
うーん。
確かに私がルコスをやっつけたからG軍団が撤収して、それがそのままガイコツ軍団の勝利に結びついたのかもしれないけど……正直、実感が薄い。
私というより、謎ボイスちゃんがやったから?
謎ボイスちゃん。
脳内に声を響かせてくる主任や銀ちゃん、王様たちとは別種の感じ。
謎ボイスちゃんの声ははっきりと聞き取れるのに、掴みどころがない。
主任たちの声との違いをあえて言うなら……。
私の内側から響いてくる感じ?
主任たちの脳内ボイスはちゃんと “会話をしている” という感覚がある。念話? とか言っていたっけな。
イリスさんが私を銀ちゃん達に保護するよう命じたのも、私が進化していずれ “念話を使えるようになったら会話をしてみたいから” という理由からだ。
いや、もう私は会いたく無いししゃべりたく無いんだよね。
なーんか、イリスさんの事を考えるとムカムカイライラしてくるし。
一応は、私の生みの親っぽいんだけど……。
恐らくというか、ほぼ確定事項なんだけど、きっと私をこのガイコツボディにした張本人&犯人はあのボンキュッボンの女王サマだ!
それを思うと余計に腹立たしい。
あー、本当。
殺したくなるくらいイライラする。
って!?
今、私、何を考えていた!?
いやいやいやいや、いくら何でもダメでしょ!
人として、人としてNGだって!
今の無し! 無し無し無ぁぁぁしっ!
だってガイコツさんやG共とは違うんだよ!?
額に角生えている魔王サマで明らかに人外だろうと、見た目が人間のお姉様なんだからそれを手に掛けるとかあり得んって!
むしろ無理! だって魔王サマよ!?
あのおっそろしい王様がガクブルして震える存在よ!
勝てるかい!!
えーっと、また脱線した。
念話ね、念話。
何となくだけど、口から発する言葉と同じで、相手と “会話しよう!” と思った事を相手に言葉として送る、テレパシーのようなもんなんだろうね。
現に主任は、私の一部始終を見たり、さっきの態度(太々しかったかなぁ?)を見て、何か言いかけたり深く考え込んだり、ドス黒オーラを放ったりと忙しい感じだった。
うん、全部、私が原因なんだけどね!
何が言いたいかって、思った事がそのまま相手に伝わる事は無い、という事だ。
言葉と同じで、心の中や頭の中で何を思っていたとしても、口にしなければ誰にも真意が分からないのと同じ。
念話、つまり相手の脳内にメッセージを送ることが出来る言葉は、選べるということだ。
そりゃそうだよね?
幼気な乙女たる女子高生の複雑怪奇な脳内を、好き勝手に覗かせるわけにはいかない!
私だってほら、底辺な陰キャとは言え分類学上は女子高生なのですから! 簡単に何を思っているかなんて、知られるわけにも教えるわけにもいかない!
え? お前は食べる事ばかり考えているだって?
ソソソ、ソンナ事ナイデスヨー?
はい、嘘です。ごめんなさい。
食べることしか考えていません。
ていうか、ずーっとずーっと空腹なんですけど!
お腹ぺこぺこ! このガイコツボディってどうやってゴハン食べるの!? どうやってこの空腹感を満たす事が出来るのよ!
教えて、謎ボイスちゃん!
……多少、話が脱線したけど、主任たちが駆使する念話とは違う、私の内側から聞こえてくるような声……いや、“声” でも無い気がする。
そんな掴みどころも無い、謎ボイスちゃん。
うーん、考えても分からない。
謎の魔法とファンタジーの世界。
そんな世界にどういう訳か、ガイコツ姿になってしまった可哀想な私。
そこに突如聞こえる、謎ボイスちゃん。
あれ?
……私が知らなくちゃいけないのって、謎ボイスちゃんの事じゃなくて、謎ボイスちゃんが私にちょいちょいと語ってくる “称号” やら “スキル” のことじゃないかな!
だってそうでしょ!?
ルコスを倒したのって、スキルって言っていたし。
スキル、日本語で技術?
私に備わった技術とか?
うん、確かに半月切りは技術っちゃ技術よね。
たかが半月切りと言ってナメてはダメですよ奥さん!
料理や食材によって切り分ける大きさ、刃を入れる位置が大事。
簡単~、だから適当に切ると、その後の味付けや火を通す時間によっては台無しになる事もあるのです。
道具にこだわるなら、切り方や食材についてもこだわりましょう。
以上、料理人見習いのアヤカさんでした!
って、わー、また脱線した!
私って考え事すると、すぐ違う方向へ考えが行っちゃうんだよね。
主にゴハンの事とか。ゴハンの事とか。
い、いや、そんな事ないって!
他にも、ゴハンの事とか考えるよ!?
……ゴハンの事ばかりですね。
えっと、スキルと称号。
まず、スキルは……昨日、G軍団をスプラッタな光景に変えてしまった “みじん切り”、ルコスの剣を壊しちゃった “半月切り” に燃え盛る魔法? の “灼熱剣” ?
謎ボイスちゃんが言うには、この他に “短冊切り” があるみたいだ。
もう薄々気づいているけど、たぶんこのスキルって奴は、食材の切り方の名称と同じだけど似て非なるもの、いや、全くの別物なんだろう。
特に、みじん切り!
握っていた剣すらぶっ壊す威力ってどういう事よ!
今思うと……主任、巻き込まなくてよかった。
だけど気を付けなくちゃいけない。
一応味方っぽいガイコツ軍団を巻き込まないこともだけど、使ったら最後、この手に握るテン助が壊れる事になったら目も当てられない。
せっかく自分で見つけて気に入った特大筋切り包丁。
その名もテン助!
えっと、本当の名前はザンマ刀・なんとかテンなんだけど、呼び難いからテン助って呼ぶことにした。
名前を付けた道具を壊すなんて、あり得ない!
ちなみに昨日の帰りに木の根元に埋めて供養した壊しちゃった剣だけど、実は今日の行き帰りに手を合わせてお祈りをした。
成仏してくれよ、Gから頂いた(奪った)剣。
道具は大切に、をモットーにする料理人見習いのアヤカさんですからね。テン助を犠牲にするようなスキル発動なんて以ての外ですよ。
でもピンチの時はどうしよう。
呻き声なんて出ないけど、腕を組んでうーんうーんと唸る私。
その間に、銀ちゃんが建物内に入ったガイコツ軍団を整列させて、主任たちに数を数えさせて、それをリッチと呼ばれていた(蔑まされていた?)派手なマントを纏う銀ちゃん程の大きさのあるお化けドクロさんこと現場監督が聞いて、ふよよ~、と何か嬉しそうに飛んでいきました。
で、またもや怪我をしたガイコツさん達の治療だか何だかで、主任たちの案内で奥の部屋へとゾロゾロと着いて行くガイコツさん達でした。
私?
今回も、無傷!
しかも敵ボス撃破の大活躍ですよ?
さぁさぁ銀ちゃん、何か褒美をヨロシク。
『貴様には驚かされてばかりだ。まさか、ネームドのマンティスブレイブを打ち破るなど、とてもスカルメイジとは思えぬ。』
感心する銀ちゃん。
そんなー、改めなくても。
そういうの良いから、褒美をはよ。
美味しいゴハンを所望します!
《ポン》
おわっ!
こ、この音は!
《熟練値最大。個体 “骸骨術士”、固有名称 “アヤカ・シンセイ” 、進化可能。以下、進化先より選択》
わわわっ!
ま、ま、まさか!
《骸骨司祭》
《骸骨魔師》
《低級死霊》
き、きたーー!
きましたよ、進化!!
『どうした、娘よ?』
首を傾げる銀ちゃん。
もー、気付いてよ!
あんた達が望んだ進化が出来るみたいなのよ!
『ジェネラル様。もしやと思いますが……。マンティスブレイブを屠ったことで称号に新たな進化先を告げられたのでは。』
おっ! さすが主任。
銀ちゃんよりも伊達に付き合いが長いだけありますね。出会ったの昨日だけど。
『そうなのか、娘よ?』
尋ねる銀ちゃんに、私はコクコクと頷く。
それに『むむう』と唸り声をあげる銀ちゃん。
『本来なら我か、リッチが軍備状況に合わせ貴様らレイスに進化方針を伝え、進化をさせるのであるが……。』
『左様でございます。ちなみに今お受けしております指示であるならば、歩兵重視でございます。』
『だがこの娘はスカルメイジ。ならば。』
『私が愚考するならば、スカルプリストでございます。』
『うむ。』
なーんか、銀ちゃんと主任がアレコレ勝手に言っていますね。
えーっと、確か貴方たちのボスである女王イリスさんは『好きにさせよ』って言っていたよね? 誘導にゃ乗りませんよ?
えっと、まずプリスト。
……どこかで聞いたな。
何だったかな?
あっ! 思い出した!
確か銀ちゃんや傷付いた騎士さんたちを治していた、白装束のガイコツさん達のことだ。
つまり、治療職?
うーん、有りか?
あれも魔法だよね。
仲間を治療できるなんて、モテ女子ポジじゃね!?
これ、ミサキがだったら更にモテるんだろうなー。
あ、でもミサキが回復魔法を使うイメージが湧かない。あの子、確かお肉焼けるあのモンスターを倒すゲームでも、私が今握っているテン助をさらに巨大化させた大剣をドゴーンと振り回していたし、他のゲームでも何かでっかい武器を掲げて喜んでいたからなー。
そうすると、私の身の周りで回復キャラって……。
うん、ハナちゃんだね!
あ、ハナちゃんというのは私やミサキの幼馴染で、私が一番仲良しの子の池田花笑ちゃんです。
……何度か名前を出していた割には、今更? っていう紹介よね。
私と同じやや地味めな女子なんだけど、特筆すべきはその頭脳! ハナちゃん、めっちゃ頭が良い。
私たちが通う青渚学園の中学入試で、堂々の主席入学。もちろん新入生代表挨拶もハナちゃんでした。
中学時代はずっと1位。
高校になってからも、3位より順位を落としたことが無い秀才。
そして美人さんだから、本当に羨ましい!
うちの学校ではミサキが一番だって騒がれるけど、ハナちゃんも負けてはいない。余り目立ちたくは無いみたいだけど、ハナちゃんだってきっとモテモテなはずだ。むしろ私が嫁に嫁ぎたいくらい可愛い。
だけど、特に男子から言い寄られた事が無いそうだ。
勿体ない。何を考えているのか、男子共は。
頭が良過ぎるから遠慮しているのかなー?
そんなことは無いぞ、男子共!
意外や、ハナちゃんの好みは地味系男子なのだ!
あ、でもハナちゃん好きな人居るからなー。
本人は『き、気になっているだけだから!』って恋愛感情的には否定していたけど、あれ、絶対に恋しているよねー。
いくら底辺地味めの陰キャラ腹ペコガールのアヤカさんでも、そのくらい分かりますよ? どれだけの付き合いだと思っているのよ、ハナエさんよ。
ただ、その彼は同じクラスなんだけど、私たちとあまり接点が無いんだよねー。高校から入った子だし、仕方ない面もあるけど……。
市川や橘は遠慮なく私たちに話しかけてくるけど、正直、“お前らじゃない” って言いたくなる時もある。
ハナちゃんのためにもどうにかして彼や彼のグループとお近づきしたい。
そこで仲良しグループメンバーでクラスの学級委員長やっているヒナちゃんと、ある作戦を立てているのですよー。
狙うは学園祭!
そこでハナちゃんと彼を二人で行動させようという作戦なのだ!
そのためにも何とかして、学園祭までには戻りたい。
学園祭は高2の時が一番楽しいのだから!
それから修学旅行に、受験対策合宿!
まだまだイベント盛りだくさんだから私は帰るぞ!
……まー、そんなわけでプリストは治療職、と。
で、続いてウィザード。
これは……、というかこれも、魔法使いだよね。
進化ってことは、メイジの上なのかな?
同じ “魔法使い” にも、格付けがあるのかな?
最後のは、ゴースト。
……お化け?
ガイコツから、主任たちみたいなお化けドクロに進化するって事?
『なんだ?』
思わず主任を見ちゃった。
これに、なるのか?
……最終的に、王様ドクロお化けに進化する、とか?
うん、これは無いな。
魔法が使えるっぽいし浮いているから行動が楽そうだけど、これは無い。
何て言うか、こうやって一緒に居たり相手にするのはギリ耐えられるけど、自分のボディがこうなるのは生理的に受け付けない。
足が、無い。
そりゃダメだよ!
ほら、料理する時って足腰ってかなり重要よ?
姿勢を真っすぐ正して包丁を握らないと、食材が上手く切れない。さっきも言ったけど、切り方一つで味に影響が出ることもあるから。
分かりやすいのは、刺身!
板前さんみたいにスラッと切った綺麗な刺身と、ミサキやパパが切ったみたいなギザギザボロボロの刺身と、どっちが美味しそうで実際に美味しいのはどちらか? って聞くまでも無いでしょ?
切り方一つで、味が変わるのよ!
ちなみにミサキやパパ作の残念刺身は、その惨状に絶叫をあげた私がお刺身サラダや漬け丼にリメイクした。ミサキは要修行、パパは二度と包丁を握るなとママにきつく叱られていたなぁ。
そういう訳で、足が無くなる事はNGだ!
まぁ、謎パワーで浮いていても空中でピタッと制止することは出来るのかもしれないけど……ガイコツ身でさらにお化け化するなんて、耐えられるかー!
以上、私の進化先の候補は2つ。
治療役プリストか、魔法使いウィザードか。
まぁ、もう答えは出ているんだけどね。
初志貫徹!
魔法ガールになるって言ったんだから、魔法使い一択でしょ!
そんなわけで、次の進化先。
《オーダー:骸骨魔師へ進化実行?》
YES!
……って、しまった!
確か進化って……。
《骸骨魔師へ進化実行》
意識が飛ぶ、ん、だっ……た。
―――――
《骸骨魔師進化実行中》
《称号『骸魔師』発現》
《称号『渇望なる者』『骸魔師』スキル結合》
《称号『骸魔師』抹消》
《称号『中級魔導』派生》
《称号『魔導剣』『中級魔導』スキル結合》
《称号『中級魔導』抹消》
《称号『魔導剣』スキル “烈風剣” 使用解除》
《ジジッ……ザーッ……》
《称号『半身の相関』より干渉》
《レジストしますか?》
《反応なし》
《推奨:レジスト》
《反応なし》
《称号『渇望なる者』緊急措置:レジスト実行》
《レジスト実行》
《レジスト不可》
《緊急:レジスト強制実行》
《レジスト不可》
《不可》
《不可》
《不可》
《不可》
・
・
・
《ジジッ……ザーッ……ザーッ》
《ポン》
《魂の称号より受託》
《受託措置開始》
《称号『半身の相関』受理》
《称号『渇望なる者』スキル、“千里眼” 発現》
《称号『魔導剣』スキル、“魔導無効” 発現》
―――――
……ふぁっ!?
『ぬっ!? 娘よ!』
うひょうわひえぃっ!
ちょちょちょ、ちょっと!
銀ちゃん近い! そしてデカイ!
私のボディの半分近い頭蓋骨をそんな接近されちゃ、さすがのアヤカさんでも肝が冷えまっせ!
《骸骨魔師への進化完了》
おおっ!
進化、終わったんだ。
相変わらず何の変化もわかんねー。
『まさか、スカルウィザードに進化するとは。』
って、ええええっ!?
何で分かるの、主任!
ていうか、進化中は私、意識吹っ飛んでいたけどどうなっていたの?
ちょっとー、幼気な女子高生が意識飛ばしていた間、何か変な事していないでしょうねー?
見た目は完全なガイコツちゃんだからそりゃ無いだろうけど、ほら、気分的に!
思わず両手で胸を隠すように抑えた私は悪くない!
『何をしておるのだ、娘?』
オメーの所為だよ、銀ちゃん!
襲われたかと思ったわ!
こんなガイコツボディの底辺女子を襲おうだなんて、あんた、良い趣味してんな! 女子高生なら誰でも良いんかいなっ!
冗談はさておき。
私は身体をきょろきょろと見回す。
うん、全く持って変化が分かりません!
紫色の三角帽子とローブは相変わらず。
そりゃそうだよね。
あとテン助もしっかりとあります。
なんか、変わったのかな?
『うむ……。本当に自ら進化を果たすとはな。』
『だが、何故ウィザード? 何か意図があるのでしょうか。』
うーわ。
私をそんなにジロジロ見ないでくださる?
女の子の身体を厭らしい顔で見るなんてけしからん!
お互いガイコツだけどね!
まぁいい。
主任よ、答えてあげよう。
それは私が魔法ガールだからさ!
異論は認めない。
そんなわけで主任。
魔法の使い方をお教えください。
あんな剣が燃えるようなおっかない魔法じゃなくて、こう、あなた達がスタンダードで使っている奴を! 教えてー!
『ジェネラル。そしてレイス、娘よ。余の声が聞こえるか?』
おや?
これは、王様?
『閣下! 如何なさいましたか?』
うーわ。
この場に王様居ないのに、銀ちゃんも主任も跪いちゃったよ。
って言っても、足の無い主任は地面にペタッと座っている感じだけどね。
あ、何か主任に睨まれている。
わー、これ、私も跪けって意味だよね?
わかりました! わかりましたから睨まないで!
『女王陛下より勅命だ。陛下の間へ行くぞ。』
ふぇっ!?
王様、あんた、何を言っているの!?
『『御意。』』
ぎょい、じゃねーよ!
銀ちゃんも主任も、断れよ!
『どうした、娘よ?』
『陛下の命なら致し方ないだろう。行くぞ。』
嘘でしょー!
何が嫌かって、あの長い道程を歩くのが嫌なんだよ!
くっそー!
やっぱりあのボンキュッボンは敵だー!




