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1 穏やかな朝に

 魔女狩り・D7(ディーセブン)との戦いと、レジスタンス・ワルプルギスとの邂逅から一夜が明けて、今日は土曜日。

 市立高校である加賀見市立加賀見高校は、本日めでたく休日でした。


 放課後にどんなに壮絶な戦いを繰り広げようと、どんなにショッキングな出来事があろうと、翌日に学校があるのなら通わなければならないのが学生。

 今まで通りの日常を続けようとしている私は、自分から日常に反するわけにはいかないので、今日が土曜日であることに心から感謝をする次第でした。


 手を取り合って、助け合って学校を後にした私たち。

 戦いで校庭が悲惨な状況になっていたから、ボロボロでヘトヘトにも関わらず、私たちはその修繕をしないといけなかった。


 でも私の力はもう途切れてしまっていて、ほとんどは氷室さんと善子さんがやってくれた。

 私は手作業でやることのできることをちまちまとすることしかできなかった。

 これだから落ちこぼれは辛い。


 正くんを担いで帰る善子さんと別れて、氷室さんは一旦私の家に寄った。

 レイくんにも指摘された、私の家に結界を張るためにわざわざ来てくれたんだ。

 自分で魔法が使えない私は、そういう所も人に頼らざるを得ない。


 魔力と気配を遮断して、他の魔女や魔法使いに察知されないようにする結界を氷室さんに張ってもらった。

 結構遅くなったので泊まることをそれとなく促してみたけれど、結局断られてしまった。

 逆に気を使わせてしまったかもしれない。


 その代わりと言ってはちょっと違うけれど、翌日のお出掛けに誘ってみると、そちらは案外すんなりと快諾してくれた。

 今日生まれた沢山のモヤモヤの中で何とか楽しみを見出した私は、それを胸にベッドに潜り込んだのでした。


 お風呂もご飯もどうでもよくて、もうとにかく寝てしまいたかった。

 考えるのはまた後で。とりあえず今は心と身体を休めたかったんだ。


 そして目が覚めたのは、お昼ちょっと前のこと。

 氷室さんと約束したのはお昼過ぎだから、まだしばらく時間があった。


 気怠い体はまだ睡眠を欲していたけれど、今二度寝したら絶対に待ち合わせには間に合わない。

 一人寂しくポツリと私を待つ氷室さんの姿を想像したら何だかとても切なくなって、私は自分に鞭を打ってベッドから這い出した。


 冬の朝は、例え家の中だってとてつもなく寒い。

 私は熱々のシャワーを浴びて、眠気と寒気を一気に吹き飛ばすことにした。


 一晩ぐっすり眠ったことで、体はもちろん心の方もだいぶスッキリしていた。

 もちろん眠ったところで問題が解決するわけじゃないけれど、何となく整理はついた気がした。


 そもそも私は既に戦う覚悟をしていたわけで。

 戦いでの心の衝突に一喜一憂していてもキリがないなと思う節もあった。

 我ながらそんな所で案外サバサバしていることに驚いた。


 もちろん思うことは沢山あって、考えなきゃいけないことも沢山。悩み事だっていっぱいある。

 けれど思い悩むばかりに気を取られてもいられないし、それに私は一人じゃないから。

 難しいことは友達と一緒に考えよう、なんて若干他力本願だったり。


 ドライヤーで頭を乾かしながら、そんなことを漠然と考えた。

 でも今は、今日はどんな服を着て行こうなんて思考がぐいぐいと押し寄せている。

 日常を守っていきたいと思っている私は、大事と同じくらい何気ない日々のことも大切なのです。

 何より一応女の子なので、友達とお出掛けするのに身だしなみを気にしないなんてあり得ない。と、自分に言い訳してみる。


 朝ご飯と呼ぶには遅すぎるご飯もそこそこに、服選びにだいぶ時間をとってしまった。

 晴香とのお出掛けだったらもう手の内を完全に知られているし、何より赤ちゃんからの付き合いだからもうそこまで気は張らないんだけど、今日は氷室さんとのお出掛け。

 初めて氷室さんと遊ぶことを考えると、ついつい気合と迷いが交差して時間がかかってしまった。


 そんなこんなして、家を出たのは割とギリギリの時間。

 起きた時に余裕あるなと構えていた割には大分差し迫っていた。

 それでも普通にいけば集合時間には余裕で間に合うけれど、だからといってあんまり気が抜けないくらいの時間だった。


 氷室さんと待ち合わせしているのは加賀見市駅前。

 駅前には大きめのショッピングモールだったり、少し小洒落たお店があったりで、花の女子高生である私たちは大変重宝している。

 大抵の買い物やお出掛けは駅前に行けば事足りる。何というか、地方都市にありがちなやつ。


 駅まではそんなに遠くないので、徒歩で向かう。

 天気はとてもいいけれど、冬の冷たい空気が肌を刺すようだった。

 氷室さんと合流したら、まずは何か温かいものを飲もうなんて心に決めて私は足を早めた。


「ありゃ、アリスちゃんだ。おっはよー」


 そしてしばらく歩いた時、善子とばったりと会った。

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