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11 魔女の森5

 三人で始まったお茶会だけれど、気がつけば森の動物さんたちが集まってきてにぎやかになっていた。

 小鳥やフクロウ、リスやタヌキにうさぎ、そして鹿や熊なんかも。

 みんなテーブの周りに集まったり乗っかったりしてお茶会に参加していた。


 こんないろんな動物なんて、お母さんに連れて行ってもらった動物園くらいでしか見たことがなかったから、はじめはとにかくびっくりした。

 けれどみんな大人しくて人懐っこくて、なによりレイくんもクロアさんも何にも気にしていなくって。

 だからそのうちわたしも驚かなくなって、たくさん集まるみんなと楽しくお菓子を食べた。


 森の動物さんたちと仲良くできるなんて、本当に絵本の世界に入っちゃったみたいで、わたしはとっても楽しかった。

 これでみんなとお話ができたらもっと楽しかったんだろうけれど、動物さんたちはミス・フラワーみたいにおしゃべりはしなかった。

 でもなんとなーく言いたいことだったり気持ちは伝わってきて、一緒にいることがとにかく楽しかった。


「さて、じゃあそろそろ移動しようか」


 甘いお菓子でお腹いっぱいになった頃、レイくんがふと言った。

 わたしにとっても優しく笑いかけてからゆっくりと立ち上がる。


「今度はどこへ行くの?」

「森のもう少し奥にね、今僕が拠点にしてる神殿があるんだ。是非アリスちゃんに来て欲しくてね」

「『しんでん』? なんだかよくわかんないけど、でもすごそうだね。行ってみたい!」


 甘くて美味しいものでお腹いっぱいになったわたしは少し眠たくなってきたけれど、新しいわくわくにそれはすぐ吹き飛んだ。

 その勢いに任せてイスから飛び降りるわたしの背中を、クロアさんがそっと支えてくれた。


「きっと気に入っていただけると思いますよ。とっても素敵なところでございますので」

「クロアさんも知ってるの?」

「ええ、存じております。わたくしたちにとって、とても大切な場所ですので」

「そうなんだ! たのしみ、はやく行こ!」


 クロアさんが目を輝かせて言うから、わたしのわくわくはさらに強くなった。

 今すぐにでも行きたくなって、わたしは二人の手をぎゅっとにぎって引っ張った。

 するとレイくんとクロアさんは、少し驚いたみたいに目を丸くして顔を見合わせた。


「どうしたの?」

「────いや、なんでもないよ。みんなで仲良く行こうか」


 わたしが聞くとレイくんはすぐにニッコリと笑って、何事もなかったかのように答えた。

 クロアさんも「そうですねぇ」とうなずいてニコニコしている。

 よくわからないけれど、でも二人とも楽しそだからまぁいいのかな。


 クロアさんがパチンと指を鳴らすと、今まであったテーブルやイスはパッと消えてしまった。

 そのいかにも魔法ですといった『げんしょう』にぽかーんと驚いているわたしの手を引いて、レイくんとクロアさんは歩き出す。

 わたしは何にもなくなった場所をしばらく見つめながら、二人に連れられるままに足を動かした。

 ここにきて色々不思議なものを見たけれど、でもやっぱり魔法ですという魔法を見ちゃうと声も出なかった。


 レイくんとクロアさんはわたしを両サイドではさんで、手を繋いで一緒に歩いてくれる。

 カッコいいお兄さんのレイくんと、きれいで優しいお姉さんのクロアさんと並んで歩いてると、なんだか家族で歩いてる気分になった。

 わたしがそれを言うと、二人はまた少しびっくりした顔をしてから嬉しそうに笑うから、わたしもなんだか嬉しい気分になった。


「さぁ着いた。ここが僕らの神殿だよ」


 さらに奥へと歩いて、木の葉っぱが増えてきて太陽の明かりが薄く感じてきた頃。

 森の木々に隠れるように石造りの『ごうせい』な建物が見えた。

 白い石でできた柱がいくつも並んでいる、なんだかとっても『しんぴてき』な建物。


 これがなんていう建物なのかはわからないけれど、でもこんな風な古そうな建物をテレビとかで見た覚えがある。

 前に学校の図書室で読んだ、世界の神話や昔話をイラスト付きでわかりやすく書いてある本にも、こんなような建物がかいてあった気がする。


 今目の前にあるこの建物は、白い石がキラキラしてて新品みたいにとってもきれいだった。


「きれいな建物だろう? 中はもっとすごいよ。さ、入ろう」

「うん!」


 目を輝かせているわたしにレイくんは優しく笑いかけて手を引いた。

 わたしはちょっぴり二人を追い越しそうな勢いで足を早めて、わくわくと入口への階段を昇る。

 入口は大きな木の扉があったけれど、それはレイくんがさわらなくてもまるで自動ドアみたいに勝手に奥へと開いた。


 一瞬中が真っ暗でまったく見えなかったけれど、レイくんが一歩足を踏み入れた瞬間、壁の松明に手前からポンポンと火がついて、あっという間に明るくなった。

 床はピッカピカでツルツルな白い石でできていて、松明の火がチラチラ反射してキラキラしてる。

 壁にはなんだかすごい飾りの柱がいっぱい並んでるし、上を見上げてみるとドーム状の天井にはなんだか細かい絵がたくさん描いてあった。


 森でのヘンテコで不思議なものたちとはまた違う、なんというか違う世界に来てしまったような感覚に、わたしはぽかーんとしてしまった。

 ただ二人につれられるままに中へと進んでいくと、三人分の足音がカンカンと静かに響いた。

 それをぼーっと聞きながら、わたしは色んなところに目を向ける。


 レイくんもクロアさんもなんだかうれしそうに、でもちょっとそわそわしながらわたしの様子を見てくる。

 でもわたしはこの『げんじつばなれ』した光景を見渡すのに精一杯で、二人のことを気にしている余裕はなかった。


 今まで見たこともないくらいステキな場所。とっても『しんぴてき』でロマンチック。

 こんなすごい場所、初めて来た。でもどうしてだかなんとなーく、わたしはこの場所に『しんきんかん』を覚えた。


 なんでかなぁなんて思ってると、気がつけば祭壇のようなところの前まで来ていた。

 レイくんとクロアさんが数段の段差の手前で立ち止まったから、わたしも一緒に立ち止まる。

 そして二人とも祭壇の上をじーっと見つめているから、わたしもその上をよーく見てみた。


 するとそこには、大きなの女の人の石像が飾られていた。

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