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6.再会・別れ

また完結できなかった。・・少し終わらせかたを思案中です。もう少しだけおつきあいください。

 重い扉をやっとの事で開いたその先には何の明かりもともされていないただの闇が広がっているだけだった。いや、あるのは闇だけではない。よく目をこらすと、その隅の一角からは僅かではあるが光が漏れ出ていた。そして人の声もする。その声に引き寄せられ、俺はそれを暗がりから様子をうかがった。

 二人はそこにいた。手錠で手を縛られているわけでもなく、腰掛ける椅子に身体を固定させられているわけでもなく、口に何らかのくつわをかまされている様子でもなかった。

「あの人は私たちを見捨ててしまったの。」

 エリアルはそう呟く。エドはそんな彼女から目を背け、白い床を見ながら首を横に振った。

「いや、あいつは何か考えがあってこうしたはずだよ。」

 あいつが自分たちを裏切るはずがない。エドは何故俺をそこまで信じるのだろうか。見捨てた見捨てないの話を抜きにしたところで、俺は二人になんの相談もせずに二人を利用した。ただ、俺がこの件を仕組んだ黒幕の顔とその理由を知りたいだけのために。ここで二人が生きていることはおそらく軌跡に違いない。真っ当に考えればとっくの昔に殺されていてもおかしくはないのだから。

 俺は盗み聞きを止め、二人の目の前に姿を現すこととした。二人が座らされていた部屋は狭い、鉄格子がないだけでこれは独房のような雰囲気を持っている。天上から吊されているのは一房の裸電球のみで、それがどこからか進入した空気の流れに逆らわずゆらゆらと揺れている。

 鉄格子のない牢獄に姿を見せた俺を二人は始め自分たちを閉じこめた者達かと思ったらしく、エドはエリアルを背中にかばいながら身を構え、エリアルは今まで自分が座っていた椅子に手を置きいつでもそれを振りかぶれるように準備した。

 無事のようだな。良かった。と俺が投げかけた声に二人は一瞬面食らったかのように目を見開くと、腰が抜けたようにその場にうずくまってしまった。

 大丈夫か?と、俺は二人の二の腕を持って立ち上がらせとりあえず椅子に座らせた。

「ああ、何か気が抜けてしまってね。」

 情けないとエドは苦笑いを浮かべ、エリアルは俺の表情をまじまじと覗き込んでいた。

 何か珍しいものでも?と聞くと、彼女は表情を変えることなく、

「どうやってここまで来れたのかしら?」

 と聞いてきた。俺がお前達が載せられていた車のトランクに潜んでだと答えると、二人は呆れながらも驚いていた。

「全く気がつかなかった。良くそんなことが出来たね。」

 エドの言うことももっともだが、気がつかれていないと確信していたからこそ、そうしたのだと答えた。そして、エドの手を改めてみると彼は手のひらを包帯で巻き付けているようだった。おそらく、俺が小銃で拳銃を撃ち落とした時についた傷だろう。それほど重傷には見えないが、俺は謝った。

 あのときはそうするより他方法が見つからなかった。下手に銃を持って多勢に無勢の中やり合うより、いっそうのこと武器を持たずにいた方が命の安全は保証される。

 エドはそのことに関しては後から考え納得していたようだが、彼の不機嫌はそれが原因ではなかったらしい。彼は声を荒げて、俺に詰め寄った。

「何故僕達に相談してくれなかったんだ?君は全て自分の思惑と目的でやれたかもしれないが、僕達はそうではなかった。君に頼るしかなかったことは認めるし、君の決定には逆らわない方が良いことも理解している。だけど、こんなやり方をされては納得がいかないよ。彼女がどれだけ怖い思いをしたか君が分からないわけがないだろう?」

 背負わせるわけには行かなかった。何をどう正当化しても俺はあの三人を殺す以外の方法を見いだすことが出来なかった。俺は殺人者だ、だかお前達にその片棒を担がせるわけには行かなかった。相談しなかったことは悪かったと思っている、だが相談するわけには行かなかったということも分かって欲しい。

「殺したことに後悔しているの?」

 エリアルが言った言葉に俺は閉口した。彼女はとても答えにくい質問をする。同じ質問を俺と同じ立場の人間に聞いたとしたら、はたしてどんな答えが返ってくるのかと俺は想像した。おそらく彼らの多くは、「考えないことにしている。」と答えるだろう。しかし、俺ははっきりとエリアルの目を見てこう答えた。

 後悔はしていない。

 と。

 それには多分に嘘が含まれていることは二人も理解しているだろう。人を殺して後悔しないのは殺人鬼の所行だ。俺は殺人者ではあるが、殺人鬼になった覚えはない。それだけが唯一俺が依り部としている所なのだから。

 エリアルはただ一言、「そう…。」と答え、言葉を切った。エドはうつむく彼女の肩を抱き、頭を胸に抱え込むように抱きかかえるとその手であやすように彼女の背中を二、三度叩く。

「それじゃ、脱出しよう。こんな所からは早くおさらばするのがいい。」

 エドの提案に俺は首を振ることしかできなかった。

「なぜ!?」

 俺はまだ目的を果たしていない。この件の黒幕の顔を拝んでもいないし、奴の思惑を知ることも出来ていない。それが果たせない限り、俺はこの場を去ることは出来ない。

 だが…。と更に言いつのるエドを制して、俺は二人を車の所まで送る。その後は二人で逃げてくれ。俺は目的が果たせれば何とかして戻る。と、有無を言わさぬ表情でそれを告げた。

 二人は口を噤むしかなかった。それに、自分たちが居ては俺が目的を果たす枷にしかならないことを理解しているのだろう。エドは苦辛に口をかみしめながら首を縦に振った。

 既に退路は確保してある。俺はエドに鍵がなくても車を動かす方法を伝えると、奴らの注意が俺の方に向くまで車を動かさないようにと念を押した。そういえば、鍵無しで車を動かすのはサムが得意だったな。そのおかげで俺たちは何度か戦場への足を得ることが出来たと俺は懐かしく思った。

 俺は二人を引き連れ牢獄から逃れ、来た時より3倍の時間をかけて地下の駐車場へと続く階段へ案内した。館内は夕食時になるのだろうか。時折廊下には複雑に調理された豪勢な料理の香りが漂い、警備体制が更に緩くなっていた。

 だが、そうなると二人が脱獄したことはすぐに知れ渡るだろう。抜け出すのは夕食が終わり、牢獄に食事が運び込まれた後まで待った方が良かったかもしれないと俺は後悔するが、ここまで来てしまった以上引き返すのは危険すぎる。

 二人が階段を下り、その先にある扉を抜けた音を確認すると、二人の無事を心の内に願い、俺は再び行動を開始した。

 黒幕がいる場所は目星が付いている。砂の混じった足跡は途中で二手に分かれ、一つはエドとエリアルの居た牢獄へ、もう一つはそのそばの大きな扉の向こうへと消えていった。

 おそらく帰還の報告をしに行った者達と、二人を牢獄へと監禁しに行った者達で別れたのだろう。先に牢獄へ足を運んだのはまず、二人の身柄を確かめておきたかったからだ。いざというときに人質にされないためということでもあるし、万が一の場合は俺だけの命で済むようにという配慮だ。おそらくそれを聞いたらエドは怒るだろう。だが、こればかりは巻き込むわけには行かない。

 だが、黒幕の元へ殴り込む前に一つだけやっておかなければならないことがある。

 俺は、廊下の所々に設えられている最新型のテレフォンを抱えると、とりあえず人が来そうにない場所を探し作業を始めた。このテレフォンは最近開発された録音機能を持つものだ。俺の通う大学の事務にも一つだけこれと同じものがおいてあるのを俺は知っている。その内部構造は比較的簡単で、少し機械をいじったことのある人間なら容易に改造することが出来る。

 おそらくこれが切り札になるはずだ。俺は慎重に作業を進める。焦って部品を取り落としてはいけないが、あまりゆっくりも出来ない。

 閉め切ったカーテンの向こう側からはいつの間にか日没を知らせる強い光が差し込んできていた。

 日の入りまで後3時間強。間に合わせなければならない。


 館が慌ただしくなり始めたのは日没後暫くしてのことだった。ドアの向こうから響いてくる男達の野太い声によると、二人がどうやって抜け出し、そして何処に行ったかはまだ知られていないようだ。

 つまり、俺が二人の脱出の手引きをしたこと。二人は既に車の中で脱出のタイミングを待っており、そして俺はまだこの館に残っていることを連中は知らない。

 そろそろ、行動を開始するとしようか。

 俺は、即席の録音機をポケットの中で確かめ、スリング越しで右肩にライフルを背負いこんだ。

 そして、車のトランクに無造作に放り出されてあった軍用の自動装填式オートマチック拳銃ハンドガンのスライドを引くとマガジン内に残されていたたまを薬室へと送り込んだ。後退したスライドの前方からライフリングの刻まれた銃身がニョキッと一本だけ顔をのぞかせる。典型的なショートリコイルのテイルト・バレル方式であるためか、引き出された銃身はまるで首をかしげるように上を向いた。俺にはなにやらその仕草が滑稽に映り、少しだけ口元をゆるめる。

 初段を装填し、俺はグリップの後方、撃鉄の下方に取り付けられた安全装置セイフティーを上に押し上げ、スライドを固定すると共に引き金トリガーを固定した。新開発の拳銃とは違い、幾らか旧式であるこれは撃鉄戻しデコッキングレバーが搭載されていない。作動方式も単操作シングルアクションであるので再度撃発には時間がかかってしまう。しかも、弾倉も単配列シングルカアラムのため装弾数自体が少なめだ。素早く操作し、確実にねらいをつけるためなら多少危険であっても撃鉄を起こしたまま携帯するしかない。俺は撃鉄が起きたままである拳銃を慎重に腰のベルトの間に差し込む。

 念のため先ほど分解整備を行ってみたが、特に目立った損傷はなく撃鉄を操作するバネの強さも良好だった。軍用であるためか、その照準サイトは固定式だったため調整のしようはなかったが、至近距離で撃つのであれば問題はないだろう。

 カビ臭い匂いの漂う書庫には人が隠れられるスペースがいくらでもある。しかし、彼らがこの部屋を捜索する様子はない。ひょっとすれば、この部屋が潜伏にはもってこいの場所だと言うことを知らないのではないだろうか。なんとも、呆れた連中だ。これなら、俺の手引き無しで二人は十分脱出できたかもしれない。

 連中の数は少なくとも5人。多く見積もっても10人もいないだろう。この広い敷地を僅か10人で二人を捜索するにはあまりにも人手が足りない。全員が散開してくれるならよりいっそう俺が動きやすくなる。

 俺は人の声が響きつつも人の気配の薄い廊下をゆっくりと歩みながら目的の部屋へと向かった。


 ちなみに、彼の持つ拳銃のイメージはコルトM1911A1です。一般的にはコルト・ガバメントの名称として有名で、彼のアニメ、ル○ン三世に登場する銭○警部も一時期使用していました。(個人的にはあまり好きではありません)

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