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ピンボール / 鉄球の如く…  作者: 音澤 煙管
4/4

鉄球の如く… 編 (終話)




ガチャッガチャッ

カンカンッピコンッ

チンチンッピコンッ…


古いピンボールゲーム機だから、

とりわけこいつのビギナーズクリアスコアは20,000点…

あと800点で到達しようとしていた。


「久々の割には余裕だね、

次は、中級クラスだっ!」


勢いが良いゲーム運びで、暖房が効いてる店内で熱くなる、額が少し汗ばんできた。

最初の1プレー目は、思い出に浸ってゲームに集中出来なかった自身とでは別人に思える。


ボール運びもパターン化したルートだと余裕をかます…ここで集中が欠けてまた悪い癖が出て来た、ふと思う…。


あちこちにぶつかって転げ回るこの鉄球。色々なイベントやティルト(罠)やギミックによる穴、突然飛び出す妨害の棒、パターン化するルート、ゲーム開始で勢い良く飛び出す鉄球。


ここは1つのゲーム上のルールの中で成り立っているフィールドだ。

ゲームとはいえ、オーソドックスでクラシックなゲーム機、条件を満たせば華やかに音と光が演出してくれる。


このフィールドには、初めから角度があって手前側に鉄球が転がるように設定してある、これは基本的なピンボールゲーム機の造りだけど、

鉄球を跳ばし、落とさない様に左右に施されたフリッパーで弾き飛ばす。


フリッパー両脇に鉄球が転がれば落ちるし、ど真ん中にも落ちるスペースがある。希に、条件によってはこのど真ん中につっかえ棒が飛び出して転げ落ちない様になったり、両脇のルートにも落ちない様になる。


バカなこのぼくでさえも、この限られたスペースの中で起こっている事には、自身に当てハマる思考はある。


たぶん、ココでバイト時代を過ごして居た時はこんな思考は無かっただろう。バイト側、店側の人間の立場として、遊具、ゲーム機を提供して居たワケだからだ… 、


今日、ココへ来た答えが出たな。


そう思い、力まずそのまま転がる鉄球の行く末を見守りながら、左右のフリッパーボタンから指を離した。


ガチャガチャンッ

ブーーーッ……


ここまで来るのに10年費やした。ここもある意味、若い頃お世話になった友人の職人さんが居た工場と同じだったな。


まだまだ、この先の人生があるぼくが思う事は… 、

人生とはピンボールの様で限られた当たり前の生活の場がフィールドであり、その上を転がって居る。

しかも、限られた時間の中でも転がり方は自由だ。


パターンとして転がって居る場所もある…これは、洞察力さえ備えていれば簡単に見極められるし慣れもある。


希なティルトや妨害の棒もあるし壁だってクッションだってある。

ティルト(罠)は、騙されたり裏切られたりって事だな、クッションや壁は我が通らない時、我慢する時…そして 、考える時だ。

クッションに当たるだけでも得点が少し稼げる、これは悩まず考えろという暗示だ。


ハイスコアや条件クリアの演出は、

何かを成し遂げれば必ず華やかな演出で、自身が報われる…たとえそれが目に見えるモノでは無いにしても、きっと、必ず。


そのために、成功する、目標に達するために己を見つめ直せ、磨き続けろという事だろう。


フィールド内で生きる事、

人生の中で、転がり跳ね返されティルトにハマるもハイスコアを目指し転がり回る鉄球の如く… 。


「フーーッ… ありがとう… 、

今日は … もういいや、

またな … 老いぼれ師匠。」


ピンボールゲーム機から離れ、自販機が並んで居る場所で、サービスで置いてある籠からおしぼりを手に取って、少し汗ばんだ額と顔を拭った後、自販機の温かい缶コーヒーを片手にゲームセンターを出た。


少しだけだけど、心の中の靄や迷って居たモノから解放された気がして体が軽くなった錯覚をして居た。


入れ代わりに入って来たお客とすれ違い、来た時よりも呼吸が落ち着き美味しいと思える空気と久しぶりに感じながらバイクにキーを挿しヘルメットをシート下から出した。


また、この日もシートにガムが着けられていたが落ちていた紙屑で軽く取り除いて気にしない様な素ぶりで、

バイクにまたがる…

低速で走らせ、店の入り口のゴミ箱に捨て、ウィンカーの左を点滅させてバイクを走らせた。


「あ、そうだ…

実家の母さん家へ寄って行こう」


直ぐに左のウィンカーを出し、

ゲームセンターを外周して帰路とは逆の母親の実家を目指しアクセルを強めに握った… 。




( おわり )


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