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ピンボール / 鉄球の如く…  作者: 音澤 煙管
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記憶と入店 編

人生半ばにして疲れている時、昔を思い出しながらバイトしていたゲームセンターへ向かう…。バイト時代に修理とメンテしていたピンボールを見つける…。




自身に疲れて居る時だろうか?

ここ最近、長らく人と話した事が無い…元々のワガママな人間嫌いが再燃したのか?


今、生きているこの自分を客観視しようと努力しても、過去のモノは捨てきれず、積み上がった片付かない気持ちを引きずって今が在る。

一歩先へ進もうか、十歩後戻りして昔の余韻に溺れようか…

そんな下らない選択肢を、週一度の貴重な休日を使い無駄な時間を過ごしてしまった…窓の外では、そろそろ陽が暮れようとしている。


十歩先を生きたくって、模索して進退の思考が続くこの一歩は、子どもが地団駄を踏む見苦しい姿をして居る様だ…その反面、それしか見えない意味になるのか。

恥ずかしい事だがこれが今の自分だ。


浮き沈みの心情も重なって、

この部屋のむさ苦しさに気が付いて

気晴らしに娯楽施設と言う名のゲームセンターへ出掛けてみようか…。


休日の明るいうちに出掛ける事は、

臆病な今の自分にとっては、ストリーキングをするのに等しい格好で歩き回るくらいの勇気が要ると思い、人目を避ける様に、夜行性のコウモリの様な行動に似ている。

まだ現実に目覚めない身体を鞭打つ様に叩き起こし重い腰を上げ、軽装に着替え、原付バイクのカギとタバコを手にし、財布を右側の尻のポケットへ入れサンダル履きで家を出る。


この田舎町の娯楽施設というモノは、

何かと変化が大きい…通勤の通り道となっているので、利用しなくても外観だけは伺える。


半年前に新装開店と銘打ったお祭りの様な開店をしたと思ったら、一昨日には店名を変えてひっそりと、開店祝いの花輪だけが華やかに仕切り直している。時代の流れで、どこか木の枝に引っかかり店が潰れないようにやり過ごしたい気配を感じる光景だった。


10分ほどバイクを走らせ…到着する。


店舗を過ぎ、敷地内の少し奥へ進む、店員が野良猫へ与えているのか、缶コーヒーを自販機へ補充した後のダンボールを潰した上に、飲み水とカリカリの餌入りのトレーを見つけそれを避けながら、簡素な駐輪場の屋根の下へバイクを停める。

以前にシートにガムを付けられるイタズラをされてから、ココを撮影して居る防犯カメラに映る様、隅へ置く様に心がけて居る。


防犯カメラに詳しいのは学生時代に、

この店でバイトをしていたからだ。


週2日、半年くらいの短期間だったが、ケツの青い自分には充分な社会勉強とお金の流れや経営の在り方を学べた、言わば課外臨時学校の様な場所だ。


ココの経営者独自の経済学も学んだ…


一般的な考え方で、公務員だと25日が給料日。それから数日は、この店の様な細かいお金で商売して居る場所へは落ちない。

給料日以降は、返済や貯金貯蓄のためのお金が動く。その後は、それまでに切り詰めていた家計での、食の方の贅沢、物品への贅沢へ消費して、

それから5日〜1週間後でココの店舗などへお金は流れてくるらしい、しかも毎月が同じ流れだそうだ。


学生生活が終わって社会人になってから、この事を思い出しながら毎月過ごしていた。

逆算すれば、給料日前の1週間くらいの間はこの店も閑古鳥が鳴いていた。

よっぽどの事、災害や他国間での経済摩擦や争い事での波等がない限り、あとはこの店の口コミや評判、事件など起こさない限り、学んだサイクルは永遠に続く…、

時代の流れを見ながら、経営者は大変だな…と、この店の事を思い出す度にそう思う。


経営ウンチクを回想しながら入店。


バイト時代とあまり変わっていないと思う、店の天井には何時も蜘蛛の巣が張られている。週に一度、店主から長めのホウキと使い古しのストッキングを渡され、

「ホウキの先にコレ巻きつけて蜘蛛の巣取って!」

と言われ、生涯でまだ触ったこともないストッキングを緊張してホウキに着けて取らされた事を思い出す…

今とは違うとてもウブだった頃の話。


店員が常駐する受付を通り過ぎる、

今では当時より顔ぶれがだいぶ変わって店主くらいしか顔見知りはいない。

それと、ぼくがココを辞めたあと、同期でバイトをしていた年上のトラックの運ちゃん出身の人が店長になったくらいだ。

新店長は、見かけはパンチパーマ角刈りだけど、面倒見が良くとても優しい人柄だから、店長には相応しい。


店長…今夜はお休みかな?

バイト連中しか居ないらしい…。


カウンターを過ぎると、少しスペースが設けてある休憩場がある。

その前には自販機の列がズラズラと並んでいる。バイト時代からココで夕飯代わりにお世話になっているそばとラーメンの自販機はまだ健在だ、嬉しい!

夕飯が未だだったから少しお腹を満たそうと200円を投入する。

ちゃんとしっかりした生麺だから、この値段で申し分は無い…今日はラーメンにした、出来上がるまで4分待つ。


"チーーンッ!"


電子レンジ並みの完成音で、暫し腹ごしらえする…ドリンクは無料のミネラルウォーターで充分だ。

チャーシューとメンマ、ナルトにワカメまで入って適量なのに200円!

大満足です。

赤くまあるい座面の破れたパイプ椅子に腰を下ろして、いただきます…

食事タイムとする。


「フーッ…食った食ったー」


ココはパチンコ屋より居座れる、

食事は、生きる事には欠かせない…

それが好みの物を置いてある場所なら尚更だ。

暫くお腹を休めようとタバコを取り出し一服をする。

大人がパチンコ屋なら、未だケツの青いぼくみたいな小僧はゲームセンターで充分だな。


一服をしながら、今日の手始めのゲームを何にするか考える。


バイト時代に、

よくお客さんに言われた事を思い出す…


".ゲーム機のボタンが動かない!"

"クレーンゲームの景品が引っかかる"

"ピンボールの球が出てこない!"

"お金を入れたのに動かないし、

お金が返ってこない!"


…なんて茶飯事だった事を回想する。

直ぐに対処できるモノとできないモノがあって、クレーンゲーム機とピンボールの筐体は厄介だったな。

バラすのに時間がかかるし、原因が解るまではよく"調整中"の手書きの張り紙をしてその場を乗り切った。


まだ機械に詳しい人間が、ぼくより他には居なかったから仕方なく修理と部品交換を引き受けたけど、あれでメーカーへ依頼するよりだいぶ出費が助かったはずだ、別手当を頂きたかったな。


修理ゲーム機筐体を思い出しながら、ピンボールゲーム機が在る場所へ向かう事にした…。



( つづく )




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