合奏
ここはギルドの一室
ギルドマスター部屋。
「こちらへどうぞ。」
クレミアはそういうと壁のスイッチを押す。
するとギルドマスター部屋の壁の一部が大きく歪み、別の扉が開かれた。
俺とティフはクレミアに誘導される形で中に入っていく。中は長い廊下になっていて、奥に扉が見えている。
「ここは遮蔽魔法をかけてありますので、ギルドの職員でも知るものはほとんど居ません。」
「そんなところに来ても大丈夫だったんでしょうか?」
ティフが不安そうにジンバに尋ねる。
「ティフ達も関係者だからな。巻き込んでしまってすまない。」
俺、エポック、セーブの三人はそれぞれ離されて回復に専念することになっていた。
それに加えて、この事件の関係者であるダニエル、コーク、ティフの三人もそれぞれ離れて過ごすことになっていた。
これは、ギルドマスターからの指示だとクレミアが教えてくれていた。理由は教えてくれなかったが。
ティフはジンバの言葉に首を横にふり
「いえ、巻き込まれたなんて思ってないんです。
それよりも体調は大丈夫ですか?」
あの時の傷・・・俺はもうふらつくこともない。食事で大分血も取り戻せたようだ。
「ああ、もう大丈夫。みんなにも心配をかけて・・・エポックは怒るかな?セーブは怒るだろうけど。」
「お話はここまでですね。こちらの扉です。」
ジンバの言葉を遮るように、クレミアが扉を示す。
俺は一度深呼吸をして、覚悟を決めて扉を開いた。
*********
「ッ!!!」
扉を開いた瞬間、中にいた二つの影が俺に向かって飛んでくるのが見えた、かと思えばそのまま押し倒されてしまった。
見覚えのある顔。ずっと一緒だった顔。
セーブは泣きながら俺の肩を何度も叩いてくる。
何かを言っているが、泣きながら話しているので聞き取ることが出来ない。
泣き叫びながら、何度も俺の肩を叩く。
エポックは、言葉にならないのか、セーブとは対照的に黙って涙を流すだけで何も言わない。静かに嗚咽し続けている。
押し倒した俺の胸で大泣きをしている彼女達。
二人とも、何かを言っているが、泣き声で言葉にならない。
「心配かけて、ごめん。」
そう二人に言う俺の声もまた、自分の嗚咽にかき消されていた。
俺の目からも、止めどなく涙が溢れていた。
心配をかけてごめん。
でもそれよりも、二人が生きていてくれて、本当に、本当に良かった。
嬉しかった。
俺が覚えている最後の瞬間、あの場で二人を失っていたら・・・。
考えるだけで怖かった。嫌だった。
あの「夢」のように二人の骸に囲まれていたら・・・・・・それは、自分が死ぬことよりも、辛い。
エポックも、セーブも、生きている。
それを二人の身体の、涙の暖かさで感じるたびに、俺の涙は止まらなかった。
きっとそれは二人も同じだったのかもしれない。
三人の泣き声の合奏は、それから10分ほど部屋にこだましたのであった。




