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100の資格を持つ勇者  作者: 小鳥遊カンナ
ファーイストの英雄
91/119

合奏

ここはギルドの一室

ギルドマスター部屋。


「こちらへどうぞ。」

クレミアはそういうと壁のスイッチを押す。

するとギルドマスター部屋の壁の一部が大きく歪み、別の扉が開かれた。


俺とティフはクレミアに誘導される形で中に入っていく。中は長い廊下になっていて、奥に扉が見えている。



「ここは遮蔽魔法をかけてありますので、ギルドの職員でも知るものはほとんど居ません。」

「そんなところに来ても大丈夫だったんでしょうか?」

ティフが不安そうにジンバに尋ねる。

「ティフ達も関係者だからな。巻き込んでしまってすまない。」


俺、エポック、セーブの三人はそれぞれ離されて回復に専念することになっていた。

それに加えて、この事件の関係者であるダニエル、コーク、ティフの三人もそれぞれ離れて過ごすことになっていた。

これは、ギルドマスターからの指示だとクレミアが教えてくれていた。理由は教えてくれなかったが。


ティフはジンバの言葉に首を横にふり

「いえ、巻き込まれたなんて思ってないんです。

それよりも体調は大丈夫ですか?」


あの時の傷・・・俺はもうふらつくこともない。食事で大分血も取り戻せたようだ。


「ああ、もう大丈夫。みんなにも心配をかけて・・・エポックは怒るかな?セーブは怒るだろうけど。」

「お話はここまでですね。こちらの扉です。」

ジンバの言葉を遮るように、クレミアが扉を示す。


俺は一度深呼吸をして、覚悟を決めて扉を開いた。




*********

「ッ!!!」

扉を開いた瞬間、中にいた二つの影が俺に向かって飛んでくるのが見えた、かと思えばそのまま押し倒されてしまった。

見覚えのある顔。ずっと一緒だった顔。


セーブは泣きながら俺の肩を何度も叩いてくる。

何かを言っているが、泣きながら話しているので聞き取ることが出来ない。

泣き叫びながら、何度も俺の肩を叩く。


エポックは、言葉にならないのか、セーブとは対照的に黙って涙を流すだけで何も言わない。静かに嗚咽し続けている。


押し倒した俺の胸で大泣きをしている彼女達。

二人とも、何かを言っているが、泣き声で言葉にならない。


「心配かけて、ごめん。」

そう二人に言う俺の声もまた、自分の嗚咽にかき消されていた。

俺の目からも、止めどなく涙が溢れていた。

心配をかけてごめん。

でもそれよりも、二人が生きていてくれて、本当に、本当に良かった。

嬉しかった。


俺が覚えている最後の瞬間、あの場で二人を失っていたら・・・。

考えるだけで怖かった。嫌だった。

あの「夢」のように二人の骸に囲まれていたら・・・・・・それは、自分が死ぬことよりも、辛い。


エポックも、セーブも、生きている。

それを二人の身体の、涙の暖かさで感じるたびに、俺の涙は止まらなかった。


きっとそれは二人も同じだったのかもしれない。


三人の泣き声の合奏は、それから10分ほど部屋にこだましたのであった。


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