最悪の目覚め
ー君じゃ、僕には勝てないよー
血塗れの中、俺は佇んでいた。
でも、俺の血じゃない。この血は誰の血だ?
周りには、いくつかの肉塊が転がっていた。
見覚えのある、あの妖精の羽。
見覚えのある、あの猫の尻尾。
二人とも動くことがない。そうか、二人とも死んでいるんだ。バラバラにされた二人の死体が俺の目に映る。
アイツは二人の生首を掲げた
見覚えのある、顔だった。
よく笑った顔を、知っている。
あんな絶望の表情をした二人の顔を俺は知らない。でも、二人であることに間違いはない。
俺は飛び掛かる。
だけど、アイツは一瞬でどこかに消え去ってしまう。
ー君じゃ僕に勝てないよー
アイツの声が頭の中で何度も何度もこだました。
*********
「・・・・・・ッッッ!」
俺は飛び起きた。
ここは?
確かあの時俺は二人を庇おうと致命傷を負って・・・、それで・・・。
「ッ!目覚めたんですね!よかった。・・・・・・調子はどうですか?」
そう言って声をかけてきたのは、ティフだ。
驚きの表情をして、俺に駆け寄ってくる。俺は立ち上がろうとして・・・・・・そのままふらついてそのままベッドに倒れてしまう。
そうだ、この部屋は、虹色のリンゴ亭の俺たちの借りていたあの部屋だ。
「まだ血が足りてないんです。そのまま寝ていた方が良いですよ。」
そう言って奥からやって来たのはクレミアだ。いつも表情を変えることなく慇懃無礼なところもあったクレミアだが、今日は申し訳なさそうに横になった俺の身体に布団をかけてきた。
いや、そんな事はどうでもいい。それよりも気にしなきゃいけないことがある。
「エポックとセーブは?無事なのか?どこにいるんだ?」
彼女達の姿が見当たらない。
俺はクレミアに、尋ねた。
「大丈夫です。お二人とも休んでいるだけですよ。・・・・・・順を追って、お話しいたしますね。」
クレミアは静かに俺にそう伝えてきたのだった。
*********
「ジンバさんは、お二人を庇って致命傷を負ったんですね。
私たちがついた時にはもう、血を流しすぎていてヒールでは回復できないところだったんです。」
ティフは俺の目を見据えてそう言う。
思い出すのも辛そうな様子だ。
「正直、私も諦めていました。あれだけの血を流していたら間違いなく死んでいると、そう思いました。」
続けて言うティフの言葉に俺は頷く。俺自身もそう思っていた。
「ところが二人は諦めなかった。
もう精神力も尽きていたのに、ヒールを唱え続けたんです。・・・・・・それで、貴方はそれで助かったんですよ。
ただ精神力を使い果たしましたので、二人は休んでいます。・・・・・・貴方と違って命に別状はありませんよ。」
ティフに続くようにクレミアがどこか歯切れが悪そうに話す。
「ともかく、お二人が回復したらすぐに連絡します。
貴方は出血多量でショック状態だったんですから、とりあえず安静にしていてください。
・・・・・・気になる事はたくさんあるでしょうが、回復したらギルドマスターが全て話してくださるそうです。」
クレミアの言葉に俺は、反論しようとする。
「今すぐ彼女達に合わせてくれ!それにあの子どもは何なんだ!」と。
その言葉を飲み込んで、俺は黙って頷いた。
こんな立つこともままならないようじゃ、ダメだ。
ともかく、身体を回復させなきゃいけないよな。
俺はそのまま、目を瞑って心を落ち着けていった。




