夜明け
「ジンバさん!しっかりしてください!」
そう言ってティフが繰り返しヒールをかける。ダニエルやコークもヒールをかけているようだが、すでに大半の血が流れてしまったのか、ジンバは青白い顔をしたまま動かない。
「しっかりするんだ!フォースヒール!!」
ベルナルドは更に強力なヒールをかけている。
胸の傷も背中の傷も塞がったが、薄く目を開いたまま動くことはない。
血溜まりの中でジンバは動くことなく、身体を横たえていた。
*********
生臭い臭いがする。
血の臭いは鉄錆の臭いって聞いたことがあったけど、実際はこんなにも生臭い臭いがするんだ。
そうだ、ジンバを・・・・・・。
ジンバを助けなきゃ!
僕は彼に駆け寄ると、また何度も「ヒール」と唱えた。
彼の傷は、周りの皆がすっかり治してくれている。
だけど彼の周りにはおびただしい血が、まるで水たまりのように流れていた。
でも、大丈夫。
そう、大丈夫だよ。
だって、チームの名前も決まって、これからが本番だもん。
こんなところでジンバが死ぬ訳ない。
「ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!」
僕の掌から、発動した時に出る淡い光が出なくなった。
精神力が切れた時に体感する、あの疲労と眠気が襲ってくる。
でも駄目だよ。まだジンバは目を覚まさないんだから。
僕はひたすらに唱え続けた。
*********
ーエポックが泣いているー
それが私にはわかった。
なんで泣いているのかも、私にはわかった。
私はエポックのそばに駆け寄る。
彼女は泣きながら何度も何度も、ヒールをかけている。
でも、彼女の精神力も尽きている。ヒールと言っても、光が出るわけでもなく、横たわっている彼が意識を取り戻すわけでもない。
私は彼女の肩に手を乗せて、そして歌った。
私に出来る事は、この妖精の歌声で精神力を回復させること。そうすれば、エポックもヒールをかけられるでしょう。
そう思って歌う私の歌声も、涙声だった。
*********
「エポックさん、セーブさん・・・・・・もう、これ以上は・・・・・・。」
ティフがそう言って首を振った。
二人はそれを聞かずに、ジンバに回復を続けている。
セーブの声は枯れ果て、エポックは身体をフラフラさせながらヒールを唱え続けている。
もうかなりの時間、回復し続けているが、ジンバは動くことがない。
傷が治っても、多量の出血がある時、ヒトの身体はショック状態になる。体重70キロ程度の人間なら、1.5リットルの血を流すと昏睡し、そして死ぬことも少なくない。
これが出血性ショック症状だ。今のジンバがそうであった。
「ジンバ!言ったじゃん。困ってる人、助けるって。」
「そうよまだ始まったばかりよ!」
エポックとセーブが最後の力を振り絞って、手に力を込める。
「そうですよ、ジンバさん。まだ治療院は途中なんですよ、お店だって広げていくのに・・・助けてくれるって約束したじゃないですか!」
「まだ私たち、恩返しできてないです!」
「スラムの子供達だって、まだ完全に自立した訳じゃないんですよ!最後まで面倒を見てもらわないと!」
ダニエル、コーク、ティフもそう言って、手に全身全霊の力を込めていく。
彼女達の力なのか、それともジンバの資格なのか、ジンバの周りを虹色の光が包んでいく。
「これは・・・もしかすると。」
ベルナルドはそう言って、エポック達に同調するように手に力を込める。
クレミアとアルフォート達も無言で頷くと、手のひらをジンバの方に向けて力を込めていく。
虹色の光が、大きく膨れ上がった。
そして、夜明けと共に、その光はまるで花火のように弾けたのだった。




