長い夜②
ジンバは、鉄の手裏剣を投げる。
この手裏剣は、ダニエルのツテで手に入れたものだ。
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「ジンバさん!前お話ししていたもの、手に入りましたよ。」
「ん?前に話していたやつって?」
「ほら、これですよ。」
そう言ってダニエルはジンバに10枚程度の鉄の手裏剣を手渡した。
「薬草を取引している旅の行商人さんが持っていたんですよ。」
「へぇぇ!これはいいなぁ。そう、これなんだよ。手裏剣って奴。」
ジンバは喜んで、手裏剣を眺める。
多少刃こぼれしているものもあり、中古だということはわかるが、紛うこと無き手裏剣だ。
「これ、お譲りしますよ。この店を再開する時に出してくださった商品代・・・というのは虫が良すぎますか?」
「いや、これは俺にとっては金に変え難い武器だ。ありがとう、ダニエル!」
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角度をつけて投げられた手裏剣は、勢いよく飛んでいく。
首筋に刺さろうとした直前に、「すばしっこいやつ」であるゴブリンキメラは身体をよじって避ける。
「そう簡単には、いかないよな。
だけどこれはどうかな!」
ジンバは長剣に精神力を纏わせると、切っ先を向けて突進した。
剣先はゴブリンキメラの右脚に深々と刺さった。だが、
「ギョフギョフ!!」
ゴブリンキメラは俺ごと脚に刺さった俺の剣を振り回そうとした。
「危ない、ジンバ!」
エポックは藍鉄の短剣をゴブリンキメラの瞳めがけて投げた。
「ギョーーーーーーー!」
短剣が深々と右眼に突き刺さり、意識をエポックに向けるゴブリンキメラ。
ジンバはその隙に、剣を引き抜き、距離を取った。
「お次は、これでどうかしら?」
セーブは腰袋から魔法石を取り出す。
クレミア戦では、中身が何かわからなかったが、今の彼女には、
「鑑定」持ちの彼女には、何か分かる。
セーブが魔法石を投げて、叩き割ると中から氷の粒が、ゴブリンキメラ目掛けて飛んできた。
氷の魔法のようだ。氷はダメージを与えるよりも、ゴブリンキメラの足元と地面を凍てつかせて動けなくさせている。
「二人とも、今よ!
あのフォーメーションで!」
セーブははちきれんばかりの声で叫ぶ。
「おう!」
ジンバは長剣をわざと隙だらけに構えて突っ込んでいく。
もちろん、それを見逃すゴブリンキメラではない。氷付いた脚ではなく、尾で俺を振り払おうとしている。
ところがジンバとゴブリンキメラとの間に割って入る者がいる。
そう、ナマハゲだ。
彼は自慢のナタで、ゴブリンキメラの尾の一撃を受け止めている。
そして、四つの脚も、尾も使えなくなったゴブリンキメラの首筋に飛び込むのは、
そう、エポックだ。
これは以前のクレミア戦の、フォーメーションだ。
二人が隙を作り、一人が本命の一撃を与える。
(前よりは、だいぶスマートにできたな。)
(私たちなかなかのチームワークじゃない?)
(この連携、カッコよく決めたいよね!!)
三人の想いがそれぞれ交互に重なり合い、エポックのククリナイフが深々とゴブリンキメラの首に突き刺さる。
そしてそのままエポックは、瞳に刺さった藍鉄の短剣を引き抜くと、二本の剣で喉元から首を切り裂いた。
キメラと言えども首を切り落とされては、生きてはいれない。多量の血を流し、すぐに倒れて動かなくなってしまった。
「まだ、他にも魔物が来る!油断せずにこのままいくぞ。」
「はいな!まっかせてよ!」
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「あー、倒されちゃいましたね。やっぱりゴブリン素材のキメラじゃ、しょーがないかなー。」
「他にも魔物を仕込んでいるんでしょ?」
「んー、こっちはてっきり市民の撤退路だと思ってたから、雑魚しか回してないんだよ。
ほら、他の方面は強い人が揃ってるからねー。そちらをびっくりさせようと思ってさー。
強いの、たっぷり送っちゃったんだよー。
聞いてないよー、そこそこ腕の立つ冒険者がいるなんてさ。」
「このままじゃ、計画に破綻が出るわ。なんとかしなさい。」
「はいはい、しょーがないなー。」
そう言って影は、近くの魔物に、鈍色に光る石を押し込んだ。
押し込まれた魔物、といってもゴブリンやオオネズミ、ウォーウルフと言った低級の魔物は、身体を悶えさせて苦しむ。
そして、動かなくなったかと思うと、今度は虚な目をして立ち上がり、他の魔物を襲って食い始めた。
食われた魔物も、同じように虚な目をして、他の魔物を齧る。
「これが一番だよね。不死の魔物。それじゃあ頑張ってきてねー。」
無邪気な子供の声が、そう響くのであった。




