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100の資格を持つ勇者  作者: 小鳥遊カンナ
序章 ものがたりのはじまり
8/119

食卓を囲んで

「・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・!」


ここは、どこだ?

俺はあの草原で、疲れて、倒れてしまって、それから俺はどうしたんだっけ?


「よかった、目が覚めたんだね。」

少女の声が聞こえた。

俺は上体を起こし、声のほうに顔を向けた。

そこには黒髪の少女、いや、少女といっても異世界らしく、耳が動物だ。耳の感じはモフモフして黒いので黒猫のような感じだけど、形は長くておとぎ話のエルフみたい。


「俺は・・・」

「精神力を使い果たして倒れたとこを、そこのおじょーさんに助けてもらったの!」

いつの間にかセーブが隣にいる。

少し怒っているようだ、口をへの字にしている。


「ほんとに危ないとこだったのよ!

私がもう少し役に立てれば、よかったんだけど。ともかく、精神力は心の力だから、切らさないようにしないとダメ!というのが・・・この世界の常識なんだけど、でも伝えるのが遅くなってごめんなさい・・・。」

セーブの言葉には、「大丈夫じゃないなら大丈夫って言わないでよ。」という俺に向けられた怒りと、「精神力のことちゃんと伝えなかった。」自分への怒りの二つが混じっているように感じた。


申し訳ないことをしてしまったな。


「ともかくも、倒れたジンバを背負って、彼女がこの小屋まで運んでくれたんです!お礼を言わないと!!」

「俺を背負って?本当にありがとう!あのままじゃゴブリンの晩飯になるところでした。

えっと、いま手持ちはお金がなくて、このゴブリンの角くらいしかないのだけど・・・。」

と俺がポケットから角を差し出そうとすると


「だいじょーぶ、僕は困っている人は見過ごせないよ!」

と笑顔で答えてくれた。ただ、お礼を言われたのがうれしかったのか、耳がピクピク、そして彼女の後ろで黒い尻尾がフルフル震えていた。


「えっと、改めまして。僕はジンバ。で、こっちの彼女が・・・。」

「セーブよ。」

「ジンバにセーブだね。覚えた!

僕はエポック、黒猫族とエルフのハーフのエポック!」


エポックと名乗った少女、顔は割と幼く、まだ中学生くらいにも見える。

黒い猫の尻尾と耳がなければ人間に見える。

エルフとのハーフというのも、耳を見れば頷ける。確かに耳はモフモフしているが、少しだけ長い。


「とりあえず、腹が減っては何とやら、だよね。

ビンボーでお口に合わないかもだけど、一緒にご飯を食べよ!」


ありがたい。確かにこの世界に来てまだ俺は何も食べることができていない。

甘えすぎていては申し訳ないけど、それでもここは厚意に甘えよう。セーブも同じ気持ちのようだ。


「こんなものしかなくて、ごめんね。」

そう言って出されたものは、粥だった。

雑穀に近いのだろうか、いろいろな種類の実が入っている。


「このお礼は必ずするからね。」

「必ずしないといけないよな。」

「まぁそんなことはさておき、食べようよ!僕も久しぶりに人と一緒に食べることができてうれしい!」


というと、エポックは粥を食べ始めた。

そうか、ここは「いただきます」の習慣ってないよな。セーブも小さい器で食べ始めている。

俺は心の中で手を合わせると、粥を食べ始めた。


粥というよりも、重湯に近いこの料理は青臭く、何の味付けもされていなかった。

腹を満たすだけの料理なのだろうか、それでも、弱った俺の身体にはしみ込んでくるようだった。

疲れたこの身体には「温かい」というだけでごちそうだった。


食事をしながら、エポックからいろいろ質問を受けた。

どこから来たのか?どこへ向かうのか?


まさか別の世界から来たとは言えず、とりあえず少し遠い村からやってきた、村は名前もないような小さな村で、村から村へ旅をしていると答えた。


俺、というよりもおしゃべりなセーブが、エポックにもいろいろ質問していた。

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