ウルスラの秘密
「ロア同盟国って知ってるかい?
このファーイストの国境隣りにある国なんだけどね。」
夕食のとき、ニコニコ顔で料理を運んできたウルスラが、俺にそう言った。
「私知っているわ。「ロマノフ小国」、「アクロレイシア山脈血族」、「アーバン開拓キャラバン」の三つの国からなる同盟国のことね。」
「へぇ~、変わった国の名前だよね。小国はまだしも山脈血族とか、開拓キャラバンとか。」
エポックはそういって自分のコップに注がれたミードを飲む。
「規模としてはそれぞれそんなに大きくないんだって。だけどロマノフ小国は魔法技術にすごく優れていて、アクロレイシア山脈血族は魔獣を操るスキルを持つ人が多いみたい。」
セーブはそういいながら運ばれてきた、麺類を口に運ぶ。今日は平たいきしめんのような麺料理だ。
「アーバン開拓キャラバンは?」
「謎に包まれているらしいけど、とにかく強い戦士がいるらしいわよ。
それぞれロマノフの「R」、アクロレイシアの「A」、アーバンの「A」をとってロア同盟国って名前にしたみたい。」
「へぇ、さすがセーブ、詳しいんだな。」
「なんといっても。ギルドの仕事をしているとね・・・覚えちゃうのよ、身体が勝手にね。」
とセーブはため息をついて答える。いつも激務なのだろう。
「にしても、僕らもちょっと強くなったよね、前はさ。ご飯も食べられそうになかったのに。」
今のエポックは元気に麺を啜って食べている。この調子だとお代わりをしそうだ。
「あ、そうそう。
私もそろそろチュートリアルジョブからクラスチェンジできるかもしれないわ。」
「自分でわかるもんなのか?」
「ええ、なんていうのかしらね。身体の芯のところに熱いエネルギーの塊があるような、そんな感じなのよ。」
「なるほど、わからない。」
俺がそう言うとセーブは噴き出していた。
「・・・談笑のところ、すまないんだけどね。」
ウルスラは申し訳なさそうに話に入り込んでくる。
「こっちこそ申し訳ない!えっと、それでロア同盟国がどうかしたのか?」
「いや、なんでも新兵器を開発したとかでね、戦の準備を始めているんじゃないかって噂が立っているのよ。
それで、ギルドでも依頼が出るかもしれないからさ、いいお金になるかもだから受けるといいかもしれないよ。」
と大きな声で俺たちに伝えるウルスラ、そして伝え終わると鼻歌を歌いながらどこかに行ってしまった。
「明日で、僕たちの使命依頼も終わりだもんね。」
そう、明日でちょうど三か月。
ということは俺の職業訓練も、エポックとセーブの使命依頼も、ベルナルドとの訓練も一回ここで終わることになる。
「少しは強くなったはずよね、私たち。
もう少しこの街で腕試しをしたいわ。それにクラスチェンジもしておきたいし・・・。」
「それがいいな、俺も試してみたいことが山積みだしな。」
俺たち三人は、これからの予定のことを大まかに話し、そして明日のために床に就くことにした。
明日は最後の日だからな、いつも以上に頑張りたい。俺は、今度こそあの骸骨将軍を倒したい。
俺はそう思うとゆっくり瞼を閉じて、眠りの世界に入り込んだのだった。
※※※※※※
「あれでよかったんだね?」
「・・・ああ、これで明後日、ギルドのクエストボードを確認した奴らは、受注してくれるはずさ。」
「被害を減らすためとはいえ、なんだか悪い気がするねぇ。」
「なに・・・奴らはそこそこ強くなった。大丈夫さ、それよりもウルスラ、お前は大丈夫か?久しぶりの戦い、狩りだすことになってしまったから。」
「フフフ、大丈夫よ。」
そういうと、熊のような大きな体格をしていた、ウルスラの影が、痩せた細い影に代わっていく。そしてその背中の影には悪魔のような羽が生えていた。
「久しぶりにこの姿になるなんて、ちょっと興奮しちゃうかしら。」
「・・・、ほどほどに頼むぞ。ウルスラ。」
ロア同盟国が攻めてくるまで、あと4日。




