盾のお味はいかが?
ベルナルドとの訓練はいつもこの午後の時間帯だった。
ギルドマスターが暇というわけではないそうだが、毎日毎日俺の相手をしてくれるというのも、驚きだ。
「やー、私はお飾りみたいなものだからね。うんうん。」
そう言うといつもの練習室で、骸骨戦士を召喚してきた。
俺は剣を引き抜くことなく、両手を前に突き出して「エクスプロージョン!」と唱えた。
この魔法は爆発を起こすことができる魔法だ。
ところがこの部屋は精神力に負荷がかかる仕組みになっている。大規模な爆発は起こさない。
だから俺は規模の小さい、小規模の爆発をイメージした。
危険物取扱の資格の対象となるのはガソリンだけではない。軽油、灯油、サラダ油も対象に含まれる。
ガソリンが気化する温度はマイナス40度と低く、そのため事故になれば大規模な爆発につながる。
サラダ油は400度ほど加熱すると、爆発はしないが火の気がなくても燃え始め、やがては火柱になる。
なるべく、精神力の負担の少ないやり方で・・・。
小さな火柱が、骸骨戦士の身体を包む。
そして、なすすべ物なくそのまま倒れて、動かなくなってしまった。
予想通り、魔法への耐性はあまりなさそうだ。
「ほぅ、魔法ですか?うんうん、成長しましたね。では、これならどうでしょうか?」
今度は骸骨重騎士を繰り出してくる。
鎧で身を固めた骸骨だ。簡単に燃えてくれそうにない。
「その鎧を溶かせばいいだけだ!アシッド!」
俺は右手を骸骨重騎士に向けると、呪文を唱えた。
これは、俺が呪文に使えるんじゃないかと考えていた資格の一つ「毒劇物取扱責任者」の呪文だ。
驚いたことに、この資格は一つの資格で三つの呪文に対応していた。そのうちの一つが「アシッド」、つまり酸の攻撃だ。
いくら強固な鎧を身を纏っていても、酸で腐食させてしまえばボロボロになる。
そこを、剣で滅多打ちにすればいい。
魔法剣でなくても、ボロボロになった鎧ごとダメージを与えられる。これで倒すことができた。
「この数週間で大分できるようになったじゃないか。うんうん。
じゃあ最後はこいつで行こうかな。出でよ!骸骨将軍」
最後に繰り出してきたのは、体格も先程の二倍はありそうな大きな骸骨だ。立派な盾と鎧、そして大きな斧を装備している。
俺はアシッドで牽制しようとするが、盾によって難無く弾かれてしまう。
「この調子だと、アシッドだけじゃなく、ポイズンもアルカリニティも塞がれてしまうな。」
骸骨将軍は大きな斧で、重装備とは思えないスピードで繰り返し振り下ろす。当たれば致命傷になりそうだ。
「やっぱここは、これで行こう!『ショック』」
俺はジリジリと後ろに下がり、距離を取ると骸骨に人差し指を突き刺しそう言った。
俺の指先からは、低圧の、といっても感電する程の威力の電気が迸り、骸骨将軍の身体を包んで、電気ショックを与えた。
「低圧電気取扱作業特別教育」
これは特定の低圧電気での作業中に感電の事故が発生しないようにするために行われている特別教育である。
感電を防止するために仕組みを理解すると言うことは、感電させるイメージがわかれば、その資格を魔法にできるはず。
そう思ってやってみたところ、うまくいったのだ。
「絶縁体のゴムの鎧でも着てない限りは、金属はよく電気を通すからな!」
俺はそういって、痺れて倒れ込んでいる骸骨将軍に向かって長剣を刺そうとした。
ところが、確かに俺のショックを受けたはずの相手が起き上がって、盾を構えて突進してきた。
もちろん、俺はそれを避けることも出来ずに
「あぐ・・・。」
顔面から盾に突っ込んで、そのまま気絶してしまったのだった。




