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100の資格を持つ勇者  作者: 小鳥遊カンナ
ファーイストの英雄
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ギルドのお・し・ご・と

「セーブさん!こっちの訓練班の伝票の処理!」

「はいはい!」

「クエストの分類!手の空いている人やってちょうだい!」

「それなら、さっきやって貼り出してあります!」

「午後一でミノタウロスの解体が入ります!」

「さっき納品されたダブルホーンフォックスがまだ、解体室に居るから、先に解体しちゃうわね。」


この現場に入ってわかったことだが、このギルドの職員という仕事はなかなかブラックだ。

自分で解体できない獲物は、ギルドに持ち込まれて解体する。その解体もギルド職員の仕事。

ギルドでは定期的に初心者向けの訓練を行っているのだが、訓練で使用する武器の手入れ、これもギルド職員の仕事。

納品されたアイテムの鑑定、これも資料を片手にギルド職員がやらなくてはいけない。

それに加えて、窓口で冒険者の相手をしたり、報酬を払ったり・・・。これがすごく面倒くさい。

ジンバやセーブみたいな冒険者って結構レアな存在で。

この街にいる冒険者の多くは、盗賊や山賊崩れみたいなごろつきが多い。もちろん、ちゃんと冒険者をしているから魔物を狩ってくるんだけど、威圧的にいろいろ注文つけてくるから、うるさいのよね。


「今日、俺が狩ってきたガーゴイルの素材が、なんで銅貨3枚にしかならないんだよ!」

いかにもガラの悪そうな、無精ひげを生やした大男がそう言ってカウンターを叩いた。

私は動じることなく

「ですから、ガーゴイルの素材で価値が最も高いのは翼なんですよね。あなたの狩ったガーゴイルは両方の翼がひしゃげて使えなくなっていました。

それに引きずって持ってこられたので、皮も傷んでおりましたのでこの価値となっております。」

と答えた。無精ひげの男は不満そうな表情で

「おうおう、この俺は『鋼のバーサーカー』のディークン様だぞ。

そんなふざけた態度をとると、もう金輪際仕事を受けないぜ。」

と私に食って掛かる。

昔の私なら怖くて、面倒ごとが嫌で、引き下がっていたかもしれない。でも今はここで引き下がった後の「クレミアのほうが」圧倒的に怖い。


「では、今後は受注いただかないということでしょうか?

ギルドカードの返却のお手続きでしたら、このまま受けさせていただきますが?」

私は淡々と、いかにも業務をこなすように自称「バーサーカー」の彼に伝える。にっこりと営業スマイルをすることも忘れずに。


「・・・ケっ、嫌な奴だ。わかったよ。今日のところはその価値で結構だ。

だがな、忘れんじゃねぇぞ。お前たちみたいにな、受付でニコニコ笑ってるだけの事務仕事なんかよりも、命を懸けて戦う俺たちのほうが『偉い」んだからな。」

と捨て台詞をはいて、ディークンは行ってしまった。

「どうせそのあたりの酒場でクダをまいて、奴の一日は終わりだろう。さ、受付業務を変わろう。君はこの後、クリミアとの訓練だ。僕らの仕事は『まだまだこれから』だからな。」

同僚のデュッセルが私の肩をたたいてそういった。

馬の獣人である彼は、非常に高い事務スキルを持っている。

このギルドの会計処理の大半は彼が一手に引き受けているといっても過言ではないだろう。

眼鏡を蹄でクイっと持ち上げると、彼は私と交代して窓口業務をする。


このギルドで事務仕事をしているのは、基本彼とギルドマスターのベルナルドだ。

副ギルドマスターのクリミアは事務的なことはせず、対外的な仕事を中心にしている。

もう一人、副ギルドマスターがいるそうだが、私は顔も見たことがない。デュッセルも知らないそうだ。




クレミアとの訓練、最初は攻撃を避けるところがスタートだった。

次は瞑想の訓練、聞けば簡単そうに思うが、少しでも動いたり、姿勢を崩すと容赦なく攻撃が飛んできた。

瞑想の訓練がしばらく続いた後は、つま先立ちのまま一定時間立つ訓練。

その訓練の次は、高いところに設置された、細い木の板でできた橋の上で瞑想をさせられた。

そして今の訓練は・・・。

無心で滝に打たれる訓練だ。

水は冷たい、高いところから落ちてくる水は肌に当たれば痛い、でもそれを嫌がって滝から出ようとすると、クリミアの杖が容赦なく飛んでくる。

この訓練は、ギルドが主催の初心者講習の訓練のおためし・・・というか実験台としてやらされている。

ギルド主催の初心者講習は、主にFランクスタートの人間が受講するものだ。

本格的に魔物と対峙するのはEランクからだ。Fランクは雑用が中心だ。なので講習を設けることで能力の底上げを狙う。といったものらしい。


この訓練で、どう能力が底上げされるのか、疑問なところなんだけどね。


「・・・水は冷たいし、痛いけど、これが終わってもまだ仕事があるし、というか、まだミノタウロスの解体も終わってないし、クロイロツバキの鑑定もしなきゃいけないわ・・・。ここは心を無心にして・・・。」私はそう思うと、静かに目を閉じて、心を集中させた。


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