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100の資格を持つ勇者  作者: 小鳥遊カンナ
ファーイストの英雄
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生業の影で

それからしばらく、俺たちは1日の半分をクエストに参加し、半分は治療院を手伝いつつも子ども達に職業訓練を行った。


治療院の方は順調だった。怪我をした冒険者が斡旋されてくる。まだ軌道になったとは言えないが、ふんわり形になってきた。

特に鬼人のティフは、精神力が育ったのか俺よりもヒールを唱えられるようになっていた。

真面目な彼女は子ども達にもうまく教えてくれている。


職業訓練も順調だ。

「いいですか?植物の栽培で大切なことは栄養素を知ることです。窒素、リン酸、カリウム。コレがそれぞれ葉、実、根のそれぞれの成長につながります。これらを覚えやすくするために『ちりかはみね』の言う語呂合わせがあります・・・。」

ユニークスキル 職業訓練(園芸)を使っている時の俺は、知らず知らずのうちに先生のような口調になっている。

子ども達も、一緒になって聞いているコークやダニエルも真剣そうだ。


俺の授業中はエポックとセーブはそれぞれ、クエストボードから一人や二人でできる仕事を試している。

ただ、俺たちが個々に受けられるクエストのレベルは最低ランクのものだけだ。

そうすると、稼ぎは鉄貨数枚程度だ。俺たちはギリギリいっぱい、貯蓄を切り崩しながら生活をしていた。



そんなある日の夕方、宿の食堂でいつものヤキメシを食べていると

「・・・暇なら狩りを手伝ってほしい。」

と、アルさんが声をかけてきた。

「狩りというと、具体的にはどんな感じですか?」

「・・・この近くにトースカンの林という場所がある。・・・そこに行き食材を狩ってくる。

狩りだから、少人数で行きたい。・・・スカウトのあんたに指名依頼したい。」

「え?僕?にゃ?にゃ?」

エポックは自分が指名されたことに驚いて、スプーンを思わず落としてしまう。


「大丈夫よ、この人はこう見えて上級職だからね。」

新しいスプーンを持ってきたウルスラが笑顔でそう言う。


「・・・何せ作る食数が増えたんでな。なるべく負担は抑えたい。」

アルさん曰く、虹色のリンゴ亭はギルドの食事も作って配達を始めたそうだ。一気に十人分の食事が増えたのでは確かに食材集めも大変だ。


「・・・期間は、そうだな。保存食も作るとして、三ヶ月ほど。

代金は、三ヶ月分の宿代と前金で銀貨2枚、期間終了後に出来高で払おう。悪くないと思うが・・・。」

アルさんがそうエポックに持ちかける。眉間にシワを寄せている姿は相変わらず迫力がある。



「今の僕たちは、はっきり言って貧乏です。貯金が底をつく前に、なんとかしないといけない!

そしてまさかの指名依頼!コレは受けるしかない!」

「・・・では、よろしく頼むとしよう。」

一瞬、アルさんが笑ったように感じた。

気のせいだろうか。


エポックはウキウキ気分でヤキメシを食べている。ともかく宿代も得られるならありがたい。





更にその夜、宿の部屋で武器の手入れをしていると

「コンコン」

ドアをノックする音が聞こえた。セーブは立ち上がると、ドアに向かっていった。

ドアを開いたその時、「ガキン!」と音がして、開いたドアの隙間に何かが挟み込まれた。

杖だ。ドアの隙間に杖が挟み込まれ、そして

「こんばんは、少しお時間よろしいですか?」

とクレミアが俺たちに尋ねてきた。


いいも悪いもあったもんじゃない。隙間に挟み込んだ杖で、扉をこじ開けると部屋の中に入ってきた。


「なかなか良いお部屋ですね。

さて、今日は時間もないのでまた本題に入りたいと思うんです。」

クレミアは俺たちの部屋を一回り見るとそう言って、セーブを指差し

「セーブさん、でしたね。

実はギルドの事務の仕事が増えておりまして、そこを手伝ってくださる方を探しております。

それでもし良ければ手伝ってくださらないかなーと思いまして伺った次第です。」

「ちょ、ちょっとなんで私なのよ!」

セーブは慌てた様子で答える。


「忙しくなったのは、治療院が増えてそちらに職員の人手をさかなきゃいけなくなったからです、ら

そうすると、原因の方にお手伝いいただくのが筋かと思いまして。」

「う・・・、そ、それになんで私一人なのよ!他にもジンバもエポックもいるじゃない!」

「ジンバさんは治療院の監督をして頂いておりますし、エポックさんは先ほどこの宿のアルフォートさんから指名依頼を受けていますから、無理ですよね。というわけでセーブさんにお願い致します。

もちろん、サーブさんも指名依頼ですので前金でこの宿の晩ご飯代と銀貨2枚お支払い致します。残りは出来高でお支払いするということで、よろしいですね?」

懇切丁寧に説明されたセーブには静かに頷くことしかできなかった。

こうして約束を取り付けると、クレミアはさっさと帰ってしまった。

セーブはしばらく壊れたドアを茫然と見つめていた。

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