お店再開ウルトラ大作戦③
部屋には俺とエポック、セーブの三人とクレミアの四人。クレミアはソファーに座ったまま、俺たち三人は立って身構えている。
「そんなに構えないでください。取って食おうってわけじゃ無いんですから。
ありがたいことです。この街のスラムの子供を救う手立てを考えてくださった訳ですからね。
あなた方のやろうとしていることは、意義のある素晴らしい活動です。」
クレミアはサッと立ち上がると、自身のアイテムボックスから短杖を引き抜いて俺に向ける。
「ただ、スラムの子供が『たまたま』ヒールがみんな使える。なんてことはあるんでしょうか?」
エポックはククリナイフを抜き、構えている。俺は右手を彼女の前に出して静止する。
「可能性は・・・低いけど、無いとも言えない・・・のでは?」
「そんな限りなくゼロに近いことが起こるものなのでしょうか?」
「ゼロじゃなければ、起こるかもしれない。
それに、これは神様の奇跡なのかもしれない!」
俺に静止されたままのエポックがそう答える。
セーブも「奇跡が起こったのよ!」と続く。
「では、それを信じろということですか?」
キャラメル色の髪をかき上げ、クレミアはそう聞き返す。
相変わらず眼は笑っていない。
「では、質問を変えましょう。貴方方は本当に子ども達と、先ほどの商人のために、今回の行動を起こした訳ですか?」
俺は無言で頷く。
「子ども達を救うために、貴方は『なんらかの方法』を使いましたか?」
この質問には、俺は首を振ることもうなずくこともできなかった。
嘘を言えば、死を覚悟するような一撃が来るような気がしていた。かと言って正しく答えることは避けたかった。
「なるほど、わかりました。
では、もう少し質問を変えましょう。貴方は・・・いや、ジンバは子ども達の救うために『何か』をしたが、その方法は言いたくないですか?』
・・・ギリギリアウトな質問だ。
この質問にYESということは、何かをしたことを認めることになる。ただ、NOと答えることはダメだ。この場での嘘吐きは死ぬ。それは避けなきゃいけない。かと言ってまた無言だと質問を続けられてしまうだけだ。
俺は意を決して
「・・・その質問にだけ、答える。答えはYESだ。」と伝える。
「・・・なるほど。」
長い沈黙の後、クレミアはそう言って杖をしまった。
「わかりました。いいでしょう。子ども達の為と言うのは間違いのないようですから。」
そう言うと、再びクレミアはソファーに座り直して。
「今の貴方達の反応で、全て確認が取れました。あの反応は嘘つきや詐欺師の様子ではありませんでしたから。
今すぐ、ここで契約を交わしましょう。そうすれば、今日この後から職員宿舎を子ども達に使ってもらっても構いませんよ。お風呂もありますしね。」
そう言うと、クレミアはアイテムボックスから書類を一枚取り出して
「ただし契約は、まず貴方達と私で行いたいと思います。」
と、机に契約書を広げた。
俺たち三人も目を見合わせると、同時にソファーに座った。契約書にはこのようなことが書いてあった。
・ジンバ、エポック、セーブは、ダニエルを監督し、子どもが何らかの被害を被ることのないように治療院を運営、補佐するものとする。
・ギルドは、治療院の運営を補助するとともに、子ども達の衣食住を確実に提供するものとする。
・この契約が破られた場合は魂を十年分捧げることとする。
「同意して頂けますね?」
俺はその質問に答えるように、ペンでサインした。二人も静かにサインをした。
その様子を見届けた後、クレミアもサインをする。
すると紙が紫色に発光し始めた。
「これで『契約』できました。
それではお疲れ様でした。子ども達はいつ連れてきて頂いてもいいですよ。」
そう俺たちに告げると、クレミアは契約書をアイテムボックスにしまったのだった。




