美味しいヤキメシと、新しい商売と
ギルドに討伐の報告を済ませる。今日の1日の稼ぎは鉄貨が35枚、銅貨にすると3.5枚分しか無い。
まだ、ロジャーからもらった銀貨があるとは言え、大切に使わなければいけない。
俺は虹色のリンゴ亭に着くと、三人分で銅貨1枚程度のメニューはないか聞いてみた。すると出てきたのが大皿に盛られたヤキメシだった。
更に一人一杯のスープと小さい瓶に入った蜂蜜酒もついていた。
スープは、ポタージュスープのようだ。なんの野菜かわからないが、ほんのりオレンジ色をしている。
匙で食べてみると、甘い。
サツマイモに近いのかもしれない、サツマイモよりはもっと野暮ったい、田舎っぽい味がする。でも、どことなく懐かしいような味だ。これはクズ芋のスープだそうだ。
橙カンショやワイルドポテト、ボンドヤムと言った芋の切れ端を、皮を剥いて煮込む。
こう言った芋に含まれる成分を甘くするには、弱火でコトコト煮込むのがいいらしく、食堂の薪ストーブの上でじっくりと煮込むとこの甘さになるとのことだ。
しかしそれ以上にヤキメシが美味しかった。特に特別な具材が入っているわけではない、卵とネギのようなものしか入っていない。米も普通の米を使っているだろう。
この料理の味付けは魚を塩漬けにした時に出る汁を使っているそうだ。
この汁はなかなかくさい臭いがするらしいが、炒めると一転して香ばしい香りになる。そこに、様々なペッパーのリカー漬けの汁を隠し味で入れる。
そうすると、ピリリと食欲を増進させてくれるそうだ。
コメがパラパラで、美味い。これも、調理法に工夫があるらしい。
よくこういった料理は鍋をあおって、材料を混ぜていく。しかしそれではあおるたびに材料が覚めてしまう。
材料を冷まさないためには、強火で鍋を火から離さないようにして炒めていくことがコツらしい。
全部、気のいい女将さん・・・ウルスラさんが教えてくれる。この数日でだいぶ仲良くなった気がする。
ちなみに旦那さんの名前はアルさんという。これもウルスラさんが教えてくれた事だが。
「で、晩ご飯が美味しいのはいいんだけど、あの二人のこと考えてるんでしょうね?」
バクバクと食べ進める俺に、セーブがそう聞いた。
「うーん、難しいよな。銀貨を貸して、これで頑張れってわけにいかないしなぁ。」
「そうだね、ダニエルさんの商人としての資質を育てていかないと、いけないわけだしね。」
その場しのぎができても、商人としての力が足りなければ別の問題にぶち当たってしまう。それじゃあなんの意味もない。
「へぇー、商売の話かい?この街ももっと景気が良くなるといいんだけどねぇ。ほら、うちはさ。市場通りに近いし、割合にお客さんが多くていいんだけどね、あのガラクタ市の方はなかなか大変みたいでねぇ。」
「そうなんですか?」
「ほら、あそこは市場通りと違って、売値も安いから儲けも出にくいんだって。
それにほら、基本的にああいうところはランクの上がった冒険者は行かないのよ。探すよりも、ちゃんとしたとこで買った方が早いし、確かでしょう。」
と、ウルスラさんが早口で喋ったところで奥からアルさんが出てきて。
「だから、ガラクタ市は孤児が多いんだ・・・。」と、机に皿を置きながら言った。
皿の中身はデザートだ。芋の切れ端を油であげて、蜂蜜をかけてある。大学芋のような料理だ。
これも予算内というのだから驚きだ。
「ああいう子でも、何か職業の適性があればね。働けるんだけど、ほら、転職には職業神の祝福が必要でしょ?
その祝福を受けるためのお金を貯めるのが大変なのよね。」
職業神の祝福なら、実は俺は使える。でも、それは今回の問題の解決には、多分ならない。
子どもを無理やり、剣士とかにしても、魔物に襲われて死んでしまう。
いや、待てよ。
冒険者になるような職じゃなければ、いいのか?
例えばみんな商人に転職をさせるとか・・・。
いや、でもそれには適性が必要だ。ダニエルのように商人の適性のようなものが。
「例えば生きていくのに必要なスキルをさ、教えられるといいんだけどね。」
デザートの大学芋をつまみながらエポックはそう呟いた。甘いものは大好物のはずだが、表情は暗い。
スキルを・・・教える?
教える!
!!!!!
「そうだ俺にはこの手があったじゃないか。
これならこの問題も解決できそうだ!」
俺はそう言うと、エポックと同じように大学芋をつまんで口に放り込んだ。




