馬車の運転
「ありがとうございます!ホント死ぬかと思いました!
えっと、私はコークと言ってフェンサーをしています。助けてもらった彼は商人をしているダニエルです。」
そう言ってコークは俺たちに頭を下げてきた。カークと名乗る少女は見た目には、俺たちよりも5歳ほど幼いだろう。水色の髪をボブにしている。
その傍らで、休んでいるダニエルもまだ年若く見える。彼は短く切った黒髪に、商人らしい仕立てのいい服を着ている。ヒールが効いたのか、呼吸は落ち着いている。
もう大丈夫そうだ。
「俺は、ジンバ。こっちはエポックで、そっちがセーブ。三人で冒険者をしている。」
俺はそう言って仲間を紹介する。エポックもセーブもニッコリと笑って頭を下げる。
「・・・実は私たちはファーイストの街の外れで雑貨屋をしているんですが、ちょっと探し物があって・・・、馬車でここまで来たんです。ところが山賊にいきなり襲われてしまって。」
先ほど戦っていた場所の付近に倒された馬車が見つかった。馬も逃げていないし、馬車の損傷もそれほど激しく無さそうだ。
「あの、もし可能でしたら・・・、お金はお支払いしますので護衛をしていただけませんか?
・・・その、実はダニー・・・ダニエルしか御者のスキルを持っていなくて・・・。」
確かにこの弱った状態のダニエルを連れて街まで戻るのは大変だろう。
そして俺は女神から授けられた御者のスキルを持っている。更にはエポックが、「助けよう!」と熱い視線を送ってくる。
「そうしたら、とりあえず馬車を起こそう。エポック、セーブ、手伝ってくれるか?」
俺たちは手早く馬車を起こす。御者台も無事だし、馬も礼儀正しく待っていてくれていた。
「これならなんとか走れそうだ。」
俺は御者台に座ると、手綱を握った。エポックはコークと一緒にダニエルを荷台に乗せる。
セーブは袋詰めにした山賊の死体を載せる。
セーブ曰く、こういった山賊は懸賞金がかけられていることもあり、衛兵に引き渡すとお金がもらえることもあるらしい。あんまりいい気持ちはしないが、金稼ぎができるに越したことは無い。
俺は馬車の操縦に集中する。
車の運転とはだいぶ感じが違うはずだが、俺にはなんとなく操作方法がわかる。
まず、サイドブレーキを上げる感覚で馬車についている足踏式のロックを外す。
そしてシフトチェンジするような感覚で、手綱を手に取る。そして、アクセルを踏み込むように、綱を引っ張ると、馬車が動き始める。
この馬車ならば、二十分ほどで街に着くだろう。
俺は運転免許教習所で、習ったことを思い出すように運転をするのだった。




