妖精の少女
飛ばされた先は確かに異世界、なのだろう。
見たこともない山、植物。
見渡す限りの草原。
俺はテンションが上がっていた。
異世界転生。何度も読んだあの小説のような、あの漫画のような異世界転生。
不安もあるが、ともかくテンションは高ぶっている。
「ええと、こういう時はアレだよな。自分の能力確認だよな。えっとこういう時は。」
「メニューオープン!」
すると、目の前にウィンドウが現れる。
ゲームの世界で見るやつと同じだ。
「ステータス」という項目を見る。
名前:ジンバ
職業:市民、種族:ヒューマン、レベル:1
体力:25、精神力:20、力:5、守備:4、魔法:4、魔守:5、速さ:5、器用:5、運:4
魔法:ヒール
※ヒール:体力を小回復することができる。
スキル:なし
であった。
ステータスの基準はわからないけど、レベル1の平均ってこのくらいな気がする。
市民っていうのは、きっとこの先別の職業に就くことができるはず。
「ん?名前ジンバって。あれ?俺の名前は???」
確かにジンバというのは、聞き覚えがある。
多分、苗字か名前かどっちかだった、と思う。
あれ?俺の本名は?????????だったよな?
?????????
自分の本名がわからない?
それだけじゃない、なんか色々記憶が抜け落ちてる気がする。
『思い出すことを忘れた』
そんな表現が正しいのかもしれない。
あらためて自分の姿を確認してみる。
自分の顔は自分では確認できないが、若返っている気がする。
身体も20代のころのように引き締まっている。少し気にしていたビール腹も無くなっている。
っと、ステータス表示に「ヘルプボタン」があるのを見つけた。
わからないことはヘルプだよな。とりあえず押してみると
「ボワン!」と音を立てて小さな光る丸い球が出てきた。
「コンニチハ マスター。ワタシガヘルプデス。マズサキニ、インストールヲオネガイシマス。」
まさかヘルプがこんな形で出てくると思わなかったので、少しびっくりしてから
「ああと、えっと?インストールって?」
「インストールトハ、マスターノオモイエガイテイル、スガタカタチニヘンカ、スルコトデス。タトエバ、セイベツ、シュゾク、シャベリカタ、セイカクを、マスターノカンガエル『ヘルプ』ノスガタニカワリマス。マスターハ、アタマノナカデオモイエガイテクレレバヨイデス。」
なるほど、便利な仕組みだ。えっと、どんなのがいいんだろうか。
こういう時は何かの物語に出てくるようなものを想像するとわかりやすいのかもしれない。
えっと、主人公を支えてくれるような存在っていうと・・・そうだ、昔絵本で読んだ大人にならないあの主人公には感情豊かな妖精がついていたよな、それにあのうそをつくと鼻の伸びる人形の絵本にはコオロギが出てきて良心として主人公を支えてたよな。
それを足して二で割ったような感じ。うーんこれで伝わるかなぁ?
「というと、こんな感じかしら?」
俺が姿を思い描いた瞬間に丸い光る玉がはじけたかと思うと妖精が現れた。
大きさは小柄で小学生低学年くらいだろうか。
「さ、あとは名前を付けてくれればいいわ。私に似合うような、素敵な名前。考えてくれるかしら。」
うーん、名前か。
そうだなぁ。ヘルプさんってのは味気ないし、ヘルさんだとHELLにつながってしまいそうで、うーん。
ヘルプ・・・助ける・・・救う・・・。
「助ける意味のヘルプじゃなく、これから俺を救ってほしいから『セーブ』ってのはどうだろう?saveのセーブさん」
「あなたを救うセーブね!いい名前じゃない。今日から私の名前はセーブ!ふふっセーブよ!気軽にセーブって呼んでね。」
セーブと名付けられた妖精はうれしいのかくるりと俺の周りを一回りし
「これでお仕事がバリバリできるようになるわ。とはいっても、私もまだ生まれたてだからあんまり期待しないでね。」
とステータスを見せてきた。
名前:セーブ
職業:ヘルパー、種族:フェアリー、レベル:1
体力:10、精神力:25、力:1、守備:1、魔法:5、魔守:5、速さ:10、器用:10、運:10
スキル:妖精の口笛
※妖精の口笛(対象1体を眠りに誘うことができる。)
「とりあえず、ながーい付き合いになると思うんだけど。これからもよろしくね!」