草原の野盗
「この辺りはな、魔物も弱いし、街からもアクセスしやすい。だからな、夕方くらいになるとほどよく疲れた初心者がフラフラしてるのさ。
今のお前らのような、な。」
ハゲ頭の山賊が私に向かって、そう言い放つ。
傍らには、一人の少年が肩からバッサリ斬られて倒れている。まだ息はあるが、このままだと時間の問題だろう。
倒れた小さい馬車は、私たちの持ち物だ。馬は礼儀正しくその場から動かないでいる。
「コ・・・コーク、早く逃げるんだ・・・。」
虫の息の少年が、少女に向かって語りかける。
「バカ!ダニーを置いていけるわけないでしょ。」
少女は腰からレイピアを抜くと、震える手で構えた。
「健気だなぁ、だが、その程度じゃな!」
山賊の斧の一撃、私のレイピアはいとも簡単に弾き飛ばされてしまう。
「運が悪いのさ。何せ俺はDランクのブール様だ。
Fランクのお前たちじゃ話にならねえさ。」
山賊は舌舐めずりをして、そう答える。
「しかし俺もついてるよなぁ、馬車持ちの新人商人を狩れるなんてな、ッッ!」
話をしているブールの頭目掛けて小石が飛んできた。ブールは手甲でそれを弾く。
「ケッ!俺の邪魔をするなんざ。ふざけやがって。」
ブールは小石の投げられた方に向き直る。
「間に合ったみたいね。」
「ッ!!ジンバ、けが人がいる!!」
「わかった。俺は先に回復させてくる。」
俺は倒れた少年に駆け寄る。
「助かるの?ダニーは助かるの!?」
少女は俺に聞いてくるが、答えている余裕はない。俺は手のひらに精神を集中させて「ヒール」と唱えた。
淡い光がダニーの身体を包む。
ほんの少しだが、斬られた傷が塞がった。俺は繰り返しヒールを唱える。
・・・、10回ほど唱えると、傷の大半は塞がり、ダニーの呼吸も落ち着いてきた。
失われた血液が戻るわけではないので、まだ安心はできないが、とりあえず応急処置はできた。
一方、山賊と戦うエポックとセーブは。
「・・・こいつ!
妖精の口笛が抵抗される!魔法石でアシストするわ、エポック!」
と、腰袋から魔法石を取り出すと、プールに投げるセーブ。魔法石は、地面に当たって砕けたかと思うと、中から煙幕が出てきた。
これは煙幕の魔法が封じ込められた石だったようだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!やぁー!!!」
エポックは煙幕の中のブールに飛び込んで斬りかかる。
だが、
「ッ舐めるんじゃねぇぞ!小娘!」
「っあ!ぐぅ!」
気配を感じ取って、エポックに斧を叩きつける。
エポックはとっさに藍鉄の剣で受け止めるが、そのまま弾き飛ばされてしまった。
「エポック!」
「次はお前か?妖精の姉ちゃんや!」
山賊は斧をセーブに向けて投げ放つ。
斧はセーブの右脚に命中し、そのままブールの手に戻っていく。
「エポック!!セーブ!!」
俺は二人の名前を呼ぶ、二人とも怪我をしているようだが、まだ戦う様子だ。エポックは口から血を吐き出すと、短剣を構え、セーブは脚の負担を減らすために、羽で羽ばたき、腰袋に手をかけている。
あの山賊、一人の割にめちゃ強い。いや、一人だから強いのかもしれない。
今の俺は、ヒールで大半の精神力を使った。
魔法剣もそれほど長く維持できないだろう。
こういう時、どうすればいい?
起死回生できるような方法がなければ、みんなで仲良くジエンドだ。
思い出せ、何かいい資格がなかったか?
仲間を助けられるような、そんな資格が、俺に!




