ギルドマスター ベルナルド
楽しい飲み会はあっという間に過ぎてしまった。
エール数杯に大皿の魚料理と、見たことのない野菜の炒め物、そしてキノコの入ったキッシュ。どれも美味しかった。
俺たちは腹一杯食べたが、これで銅貨4枚でいいと言うことだった。
慌てて俺が「もっと払います。」と言ったのだが、旦那は険しい顔で「いや、いい。」と言って奥に引っ込んでしまった。
「ああ見えて、嬉しいのよ。」
旦那さんと同じように熊のように体格の良い女将さんはそう言って俺の背中をバシバシ叩いた。
お客はまだ何人か残っている。俺たちは邪魔しないように、軽く会釈をして部屋に戻った。
それから程なく、俺たちは眠りについた。
程よく酒が回っていたこと、1日があまりにも「刺激的だった」こと。それは睡眠導入剤にはぴったりだったのかもしれない。
そして翌朝、相変わらず美味しい朝食を食べると俺たちはギルドに向かった。
ギルドでは、職員にそのまま別室に連れて行かれて・・・。
立派な装飾のある部屋に通された。
「やー、待ってたよ。ホント待ってた。うん。」
そこには相変わらず落ち着きのない男と、昨日の試験官のクレミアの姿があった。
クレミアは表情を崩すことなく、笑顔でいる。
昨日の姿を知っている俺としては、怖い、
「うん、それじゃあね。改めてギルドマスターのベルナルドです。うんうん。君たちのことは、もう知ってるよ。
えー、そうそう。昨日の試験なんだけどね。前に話した通り、ホントはこんなに難しくないんだよ。」
ギルドマスター ベルナルドは一人でどんどん話していく。それもコツコツと靴音を鳴らしながら、俺たちの周りを歩いている。
本当に落ち着きがない。
「私としては、難しいつもりは無かったんですけどね。」
クレミアは笑顔を崩さずに、首を傾げている。そして
「私を倒せ、だと難しいかなって思って、だから私に攻撃ってお題にしたんですよ。
ほら、この子たちクルセイダーの私にちゃんと攻撃できたでしょ?」
そう言ってクレミアは肩まで伸びているキャラメル色の髪をかき上げた。
首のところに火傷の跡がある。きっと昨日の魔法石の一撃なんだろう。治療してないのが不思議だけど。
いや、それよりも今なんて言った?クルセイダー?
クルセイダーって多分上級職だよな。そんなやつを相手にしてたのか、俺たち。
「それに、試験のガイドラインも『オオネズミなどを使って技の実力を測る。』としか書いてないのですから、私のやったことが100%間違ってるとは言えないと思いませんか?」
「・・・、一理あるような気も、する。うんうん。」
いや、納得しちゃうのかい!ベルナルドはしばらくその場で貧乏ゆすりをした後に。手をポンと叩いて。
「やー、まぁとりあえず君たち三人で上級職に武を示した。これは間違いない。うんうん。そうだ、ということで今回は優秀な君達に最下位のFランクではなく、Eランクのギルドカードを授けよう。うん。これで解決間違いなし。」
と言って、ローブの中から三枚のカードを取り出して、俺たちに押し付けてきた。
「よし、受け取ったね!受け取ったね!と言うことは今回の事はこれで解決したね?
うんうん、それが良い。ギルドカードにはランクがあるんだけどだね。それはまた受付で聞いてみてよね。」
ベルナルドはにこやかにそう言うと
「じゃ!僕はさ、ほら。会議があるから。これで失礼するね。
ほら、ギルドマスターは偉いからね。会議も待ったなしなんだよ。そしたらクレミア、行こう。うん、それじゃね!」
と、早足でそそくさと立ち去ってしまった。
クレミアは最後まで同じ笑顔のまま、こちらに会釈をすると先に行ったベルナルドを追いかけていった。
「アレは逃げたよね。」
エポックは走り去る姿を見てポツリと呟く。
とりあえず、これで俺たちも晴れて冒険者だ。
さっきまでのことは忘れて、下に行ってクエストを受注してみよう。




