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100の資格を持つ勇者  作者: 小鳥遊カンナ
序章 ものがたりのはじまり
23/119

背中の陽だまり

人を殺した。

血の匂い、腕にこびりついた血。

あの肉を切るときの感触、呻き声。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。ウグッ!ウゲェ、オェ・・・」

俺は思わずその場に嘔吐してしまった。

夜に食べた穀物粥を吐く、それでも嘔吐は止まらない。

苦しい、気持ち悪い。

吐くものが無くなった、だが嗚咽は止まらない。

身体が無理やり吐こうとしている。

血の混じった唾液を吐く。


さっきまで、俺は山賊を倒すことしか考えていなかった。無我夢中で倒していた。

だが、終わってみればどうだ。前世だったらこんなに殺してたら、死刑に間違いない。

この人達だって、家族がいたかもしれない。確かに俺たちを襲おうとした、だけど殺す必要はあったのか?


俺は涙が止まらなかった。悲しいからじゃない。

怖いからだ、殺されそうになった自分と、殺してしまった自分が怖くて泣いていた。

泣きながら吐いていた。





と、その時。

背中に暖かみを感じた。

誰かが俺の背中に手を添えてくれている。

「大丈夫、もう大丈夫。」


暖かさ、優しさを感じる。

そう、まるでおばあちゃんの家のコタツでごろごろ寝ているような暖かさ。

全てを赦してもらえるような、陽だまりのような暖かさ。

そんなことを感じる手だった。


「大丈夫、もう休んでも大丈夫。僕がいるから。一人じゃないよ。」


そっか、そうだ。俺は一人じゃないのか。そうだよな。みんな、いるもんな。

みんなのために、たたかったもんな。



俺はゆっくりと目を瞑る。

疲れた。もうヘトヘトだ・・・。

魔法剣は精神力を消費するんだ・・・。


俺はそのまま気絶するように寝てしまった。





ーーー

ーーーーーー

ーーーーーーーーー

「とりあえず、ジンバは大丈夫そう。」

ジンバを背負いながらエポックはそう言った。エポックも疲労の色が顔に出ている。多少、足がふらつきながら、礼拝堂に戻る。

「マスターにとってははじめてのことばかりで、ごめんなさい。貴女に迷惑をかけてしまって。」 

セーブも満身創痍だ。自分が飛ぶので精一杯なのだろう。


「うん、いいんだ。僕が背負いたくて背負ってるんだから。それよりも、迷惑なんて言わないで。

僕らもうチームなんだから。ね、セーブ」

「そう言ってくれると嬉しいわ。でも、なかなかハードの連続よね。」


「うん。

こんな日が来るなんて思わなかった。ううん、違う。こういう日を夢見てたのかな。

僕ね、ジンバって凄いなって、思ってた。

転職も出来るし、普通の人が使えないスキルも使える、回復魔法も使える、しかも別の世界から来た人だって。

そんな人のチームなんて、まるでお伽話の勇者様の仲間になったみたいに思ってた。」

朝日が少しずつ上がっていく。

陽の光が3人を照らす。


「でも、違った。

ジンバは勇者じゃなくて、僕らと同じ。

別の世界からやってきただけ、人よりもスキルの覚え方が違うだけ。

人を殺したって事で、吐いてしまう。

だからね、僕はー


僕は、ジンバにできないことを、やる。

ジンバに剣が無ければ、僕が剣になる。

盾がなければ、盾に。」



エポックは真剣な面持ちでそう言った。セーブは静かにそれに頷いた。


エポックの背中の俺は寝ていた。何も聞こえていなかった。

でも俺の瞳からは涙が流れて止まらなかった。

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