チーム結成!
「ッ!ギョフッ!」
痛みに耐え、起き上がったエポックが今度はホブゴブリンの首に、銅の短剣を刺していた。
さすがにこれは、致命傷だったのか。今度こそ倒れたまま起き上がることはなかった。
「ゴホッ、た・・・助かったよ、ジンバ。ありがとね。」
エポックはそういうと、その場にへたり込んだ。
少し吐血し、肩で呼吸をしているが、今すぐ死ぬというわけではないだろう。
本当は回復をしてあげたいが、その前に寝ているこいつにとどめを刺しておかなければいけない。
俺はもう一体のゴブリンに近づくと、その喉元に槍を突き刺した。
刺されたゴブリンは何度か身体を痙攣させてそのまま動かなくなった。
ゴブリンの討伐成功だ。
喜んでいる実感よりも先に、やらなきゃいけないことが頭をよぎる。
エポックの回復だ。
エポックは石のナイフで切られたように見えた。
石のナイフはそれほど切れ味がよくない。そのため、切られたというよりも叩かれて内臓にダメージを負っているようだった。
「ヒール!ヒール!ヒール!」
俺は何度も繰り返しヒールを唱えた。
あの時俺が、彼女ならいけるんじゃないかと楽観視しなければこんなことにはならなかったはず。
「ヒール!ヒール!ヒー・・・」
「もう大丈夫、僕は大丈夫。また精神力がなくなったら、倒れちゃうから、ジンバ・・・。」
先ほどよりは落ち着いた表情だ、顔色も悪くない。
「二人とも大丈夫?私と違って、二人は戦わなきゃいけなかったから、ごめんね。あんまり役に立てなくて。」
セーブが申し訳なさそうに言う。この作戦の立案者は彼女だ。その負い目もあるのだろう。
「そんなことない、セーブが一体眠らせてくれた。これがなかったら、私たち危なかったかも。逆に僕こそみんなの足手まといでごめんね。」
エポックも申し訳なさそうに言う。
「いや俺も、最後の最後で詰めが甘かった。ホブゴブリンが起き上がってくると思わなかった。それにエポック一人に任せようとしてた。みんな、すまない。」
俺も申し訳なさそうに頭を下げる。
「・・・ふふ、・・・ははは。」
三人、誰からともなく笑い声が漏れ始め
「あっはっはっははー!」と三人合わせて笑い始める。
「いやー、みんな自分が申し訳ないって謝ってて、でもみんなで力を合わせたから勝てた、僕らの勝利だよね。」
「フフ、そうよ。結果オーライ。私たちいいチームワークだったじゃない。」
「そうだな、初めてとは思えない、華麗な連係プレーだったよな。」
ひとしきり笑った後に、それぞれがそう呟く。
「エポックさ、俺実は言ってなかったんだけど、別の世界から来たんだよね。」
「え?別の世界?」
「そう、それで、俺はこの力で、まだ未熟だけど、この力で誰かの役に立っていきたいなって思ってたんだよ。
いま、初めてそれが叶った。エポックの役に立てた。エポックとセーブが俺の夢をかなえてくれた。
俺は決めた!この力で困っている人を助ける!これからずっと!」
俺は槍を右手で空に掲げると、そう決意した。それを見て「フフッ」と笑うエポックとセーブ。
すると意を決したようにエポックは立ち上がり
「決めた!僕は決めた。このままくすぶって生活するのは、やめた。今の生活をやめて、冒険者になる。
あのエルフのお姉さんのような立派な冒険者になる。」
銅の短剣を夜空に掲げてそう声高らかに言った。
二人の様子を見ていたセーブも続けて
「私はそんな二人の夢をかなえることができるような、そんなサポーターでありたいわ。このアルカディアで最高のサポーターになりたい!」
と、同じように右手を掲げて言う。
「これはもう」
「俺たち、僕たち、私たち」
「チームになるしかないね!」
夜明け前の空の下、ここに新しいチームが誕生したのだった。




