アプレイズ
「うぎゃああああ!」
試験も終盤、突然試験会場に男の叫び声が響いた。
そちらを見ると、最初に三人で話していた時に俺を睨みつけていたあの無精ひげの男が試験官の女性に右腕を刺されていた。
エポックも叫び声で跳び起きたようで目をぱちくりさせている。
「痛え!チクショウ、何しやがる!」
男は左手で刺さった剣を引き抜こうとする。だが、試験官の女性は顔色一つ変えずに「お伝えしましたよね、最初に。不正行為は処罰すると。その手に隠しているのはカンニングペーパーですよね。」
そういって突き刺した剣を「グリッ」っとひねる。
「ぎゃああああああああああ!」
再び男の叫び声が上がったかと思うと、握っていた右手を開く。そこには確かに、小さな紙切れがくしゃくしゃになっていた。
「残念ですが、筆記試験は0点となります。ですが、実技試験は受けていただいてもかまいませんよ。……受ける気があるのでしたらね。」
今度は剣を引き抜き、切っ先に付いた血を拭い、そして優雅に腰にしまう。
無精ひげの男はえぐられた右手を押さえながら、怯えて出ていった。
「さ、それでは試験再開ですね。皆様頑張ってください。」
彼女がそう言うと、騒動にあっけにとられていた俺たちはまた、試験問題に向きなおる。
彼女が試験終了の合図をするまで、今度は何事もなく、終わった。
*********
「それでは、回答を止めてください。試験用紙を回収します。」
そういって彼女は淡々と試験用紙を回収していった。先ほどの光景を見ていたからか、全員ぴしっとして待っている。
「全員分の回収が終わりました。それでは、今から実技試験会場へご案内します。
私についてきてください。」
*********
一度、受付のほうに向かったかと思うと、今度はそこを通り過ぎて緑色の扉を開く。するとその先は……。
「なんだ?ここは。えらく立派な部屋だな?」
受験者のドワーフの男がそう言った。
そこは大きな部屋であった、約30人の受験者が入ってもまだ広い、そして部屋には様々な調度品が置かれ、壁には立派な武器がかけられている。
本棚にも豪華な背表紙の本が並べられている。きらびやかな甲冑も飾られたその部屋はまるで貴賓室のようであった。
「この中で、皆さんが最も価値がある。そう思ったものを一つだけ選んでください。選べるのは一人一つ、奪い合いをしてはいけません。」
試験官の女性はそう俺たちに言う、さらに続けて
「この部屋には、鑑定遮断の魔法がかけられています。
皆様の経験で、この部屋にある価値のあるものを選んでください。ただ、本当に価値のあるものはここには数点しかありません。
……つまりこの試験で、100点が取れるのは29人中数人しかいないのです。制限時間は120分、それでは頑張ってくださいね。」
彼女はそうとだけ伝えると、扉を閉めて出て行ってしまった。
残されたのは、29人の受験者だけ。
彼女が出ていくと同時に、受験者たちは我先にと本棚に、壁にかけてある武器に、飛びついていった。




