主人公
「わぁ!さすが城壁都市って呼ばれるだけはあって立派な壁だよねぇ。」
エポックは立ち並ぶ大きな城壁を見上げながら、驚きの表情で言った。
―城壁都市アルテミス―
大きな壁に囲まれたこの街は、ファーイストと違って様々な軍事拠点が点在している。
そのため、帝都に並ぶ戦の要として重要な拠点街となっている。
「本当はいろいろな名産もあるんだけどね。でも今回はお急ぎの旅だから観光している余裕はないわね。」
門を抜けて、にぎやかな市場を通る。そこでは様々な商品が売買されていたが、それを眺めながらセーブは言う。
「試験は、筆記試験と実技試験だっけ?」
「ええ、そうよ。それぞれ100点、合計200点の内、100点が取れれば合格なんですって。」
エポックの質問に、セーブが答える。彼女は短期間でもギルドの職員をしていたので、そこについては知識があるのだ。
「半分で合格っていうと、簡単そうにも思えるけど。」
御者台からジンバがそう言うと
「点数だけ聞けばね。でも、筆記試験問題もランダム、何が出るかわからないのよ。
だから、あそこで、ほら過去問を売っている商人もいるけど、あれは無意味みたいよ。」
そう言って指さした先には、紙の束を冒険者風の男性に売りつけている商人の姿があった。この街ではおなじみの光景らしい。
「かといって、実技試験もランダム、チーム戦のこともあれば個人戦のこともあったし、面接なんて年もあったみたいよ。試験官によって変わるのかしらね。」
「やー、面接なんて苦手だなー。」
エポックがそう言うと、セーブは笑いながら
「今の「やー」は、ファーイストのギルドマスターみたいだったわよ。」とからかった。
その言葉に、俺が吹き出す。
セーブもつられて笑う。そんな姿を見て、エポックも笑い出した。
三人の楽しそうな笑い声が馬車の中に響いていた。
『あの、神託を受けた夜』
俺は二人と、もう一度向き合って話をした。
自分でもどう話したか、覚えていない。
でも、ともかく、このチームを続けたいこと。
二人と離れたくないこと。
それを自分の言葉で精いっぱい説明した。
二人は答えてくれた。だからこうして、今試験を受けることができる。
「絶対受かって、帰ろうな。」
「大丈夫よ、だって私たちはいわば物語の『主人公』なんだから。
主人公が、夢破れて終わる。なんて話、物語として成立しないわ。必ず成功して、戻るのが『主人公』で『英雄』ってものよね。」
セーブのその発言を聞いた二人は静かに頷き
「だいじょーぶ、三人ともCランクになって帰れるよ。まずは筆記試験を突破しなきゃ、だね!」
エポックは明るくそう言ったのであった。




