冒険者の心
俺たちは草原の中でもとくに草の多いところに身を潜めていた。
村の畑に行くには、この草原の中でも俺たちの前の道を通っていくのがいいらしい。
そしてあまり深く考えることができないゴブリンなら、ここを通るだろう。ということも予想していた。
襲来は思ったよりも早いタイミングでやってきた。ゴブリンは3体、しかし先頭を歩くゴブリンは少しだけ身体のサイズが大きく、角も大きい。
「ん!あれはホブゴブリンだ!」
「ゴブリンとは違うのか?」
「ゴブリンよりも、手強い。少しだけ賢い。ゴブリン。村を襲うこともある、ゴブリン。いつの間に進化したんだ・・・。何とかしないと」
エポックは焦っていた。倒すことができず、迎撃することしかできなかったために、進化する機会を与えてしまった。
自分がなんとかしなきゃ。その思いがエポックの中をよぎっていた。
「僕がホブゴブリンを相手にする。ジンバとセーブは、残りの二匹をお願い。」
「勝てるのか?」
俺は不安そうなエポックの顔を見て尋ねる。
「正直、不安だけど。ここで痛めつければ逃げ帰すくらいはできるかも。できなくても、ダメージを与えれば何とかできるくらいになるかも。」
表情には緊張が走っている。手も強張っているようだ。
それでも彼女は勇気を奮い立たせる。それには理由があった。
エポック 彼女は冒険者にあこがれていた。
母と各地を転々としているときに、見た冒険者たち。
その姿は自由で憧れの強いものだった。
大きな王宮のある街で出会ったエルフの冒険者。
彼女はハーフエルフのエポックを嫌な目で見ることなく、頭を撫でてくれた。
ある時は洞窟の主を倒したと大きな竜を運んできたことがあった。
ある時は沼地の財宝を発見したと、たくさんの金貨を持ってきて、貧しい村人に分け与えたこともあった。
エポックが会いに行けば、心優しく、冒険の話をしてくれたり、剣を触らせてくれたこともあった。
今のエポックは冒険者ではない、村人の雑用を受けて暮らしているだけにすぎない。それでも、今は冒険者でなくても。
ー心だけは冒険者でいよう。ーと固く誓っていた。
エポックには引くことができない理由があった。
「それじゃ、予定通り、行くよ」
エポックはそう言ったのだった。




