たった1つの大切な文字
通勤時間中にスマホで思いついたことを書いた小説です。
気が向いたら次を作ります。
尚、キミオレセカイ(君が見ていた世界と俺が見ていた世界)はPCのみでの投稿となりますのでご了承ください。
ある日、高校に通学してたときに、地面が真っ暗になったと思ったら、そのまま落下して気を失った。
次に気を取り直した時、目が開かず、体全体も動かなかった。
ただ、頭に響く声だけが聞こえた。
《好きな漢字を1文字だけ考えて下さい》
その言葉だけが頭に響いた。
よくわからないまま落下して気を失って、気を取り直したとおもったら目が開かなくて、体全体も動かなくて、ただただその声だけが心に響いてくる。
いったいなんなんだろうか。
もしここが死後の世界だとしたならば、もう母親や父親、友達に会えないのだろうか。
そして、何よりも相思相愛でこれから付き合おうとした幼馴染の彼女の幸とも会えないのだろうか。
幸・・・
俺は彼女の事を心の中で叫ぶ。
例え、この先転生なんかして、この世で紡いだ記憶を消されようとも、幸だけのことは忘れたくない。
だから必死に心の中で叫ぶ。
幸!幸!幸・・・
《あなたの真字は『幸』に決定されました。では次の生をお楽しみ下さい》
頭の中でまた声が響いた。
その後、頭の中が真っ白になって、何も考えられなくなる。
ただどんもん記憶が消去されているのがわかった。
父親や母親の名前さえ曖昧になって思い出せそうにない。
ああ、これが転生なのか。
でも、俺は・・
幸、幸、幸・・・
幸の事だけは絶対に失ってなるものか・・
だが、無情にも俺はそこで気を失った。
そして、俺と言う人格は無くなったのだった。
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とある世界のとある一般家庭に女の子の赤ちゃんが産まれた。
その子はカグヤと名前が付けられて、両親や親戚、周りの人達の愛情を受けて元気に育った。
この世界では、魔法が使える。
ただ使える魔法は基本的に1種類だ。
母親の中で生命が誕生したときに真字というのを神様から与えられて、その字に関する魔法が使えるようになる。
基本は自我をもち始める頃にその真字を思い出すが、偶に思い出せない子供もいた。その子達も、何かのキッカケで思い出したりする為に、結局は中学校くらいには全員が魔法を使えるようになる。
カグヤは小学生に入る前に、隣の家に住む同年代の子供とその子の家で遊ぶ事になった。そしてその子の名前を聞いて真字を思い出した。
その子は今後、幼馴染となっていくわけだが、名前はサチヤと言う。
そこで何故だが分からないが、心に響くというのだろうか、サチという言葉が何度も響いてくる。
サチ?サチ?幸?
そして、気付いた。
私の真字は幸なのだと。
でも、それだけでもない気がする。
真字だと分かっても、心の声は響き続ける。
私は近くにいたサチヤに「ごめんなさい!」と言って自分の家に戻り、「ただいま」と帰った事を伝えて、普段使っていない部屋に行って、誰もいない事を確認してから、心の中に向かって、実際に口に出して叫んだ。
「ねえ!わたしのまじが『幸』なら、このむねにきこえてくるものをおしえてよ!」
小学生にもなってないけれど、自分の真字だけはハッキリと漢字を想像して、意味が分かって言えた。
小学生前なので言葉が拙いが、もし真字が幸ならば、この心に響く理由を知ってより一層の幸せを得たいのだと叫んだのだ。
すると、カグヤは淡い光に包まれた。
淡い光は徐々に輝きが強くなって行き、最終的には目が開けられないほどになった。
何事かと見に来た母親は、それを見て私に近寄って来ようとするが、光が邪魔するのか近寄れないようだった。
母親が最終手段とばかりに魔法を使おうとするが、魔法が発動しないみたいだ。
そして私は光に包まれながら気絶した。
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私は夢を見た。
それは、男の人と女の人が出てくる夢だった。
長い間一緒にいた彼らは、何かと気が合った。
男の人の名前を勇輝、女の人の名前は幸だった。
時々喧嘩はすれど、仲直りして前以上に仲が良くなる。
二人で勉強して、遊んで、とても仲良しだった。
そして、あるとき勇輝から幸に告白した。
いつもいつまでも、君と共にこの世界で暮らしていきたい。
二人は、恋仲になった。
ますます、近くにいるようになったある日に、勇輝は消えた。
そんな夢を見ていた。
これは・・・、私の前世?なのかな。
これを見ても、私は私だった。けど、幸という名前に心が揺れた理由がわかった。
だから私なりに幸さんについて、心の中で向き合っていこう。
勇輝という存在には、なれないけど、でも幸という存在だけは忘れないから、だから前世の私さん、ゆっくりお休み下さい。
そして、私は目を覚ました。
そこでお母さんが近づいて来てこちらを心配してきた。
私が眠っている間、ずっと光に包まれたみたいだ。
最初はどうにかして、私を助けようとしたけど、光を見ているうちに大丈夫そうだと思い、ここで待っていたらしい。
念のため何かおかしい所がないかと聞かれた。
「私ね。真字を思い出したの!この真字を絶対に大切にするからね!」
母親にそう言った。
すると、母親はそれは良かったね。真字を大切にするのはいい事だねと褒めてくれた。
そうして、私は『サチ』と共にこの世界を生きていくのであった